近づきたいキモチ
いつもの週末。
久しぶりにサナと羅那はデートすることができた。今日は何も目的も決めずに、ウインドウショッピングを楽しむ予定だ。
と、賑やかな通りを歩いていると、一台のキッチンカーが停まっているのが見えた。
「あ、サナ。あそこにキッチンカーがあるよ。クレープ屋みたいだね」
「ホントだ! クレープ、美味しそう……買って食べちゃう?」
そうサナが楽しそうに言えば、羅那もつられて笑みを見せる。
「じゃあ、買ってくるよ。サナは……あの苺ショートチーズケーキ、かな?」
「はわっ!! バレちゃってる!! けど、羅那くんは何を食べるの?」
「うーん、そうだな……」
腕を組んで悩む様子を見せつつも。
「王道かもだけど、チョコバナナ……かな。じゃあ、買ってくるよ。そこのベンチで待ってて」
心躍るデートに羅那は、ちょっと張り切っていた。
(今日はもう少し、近づきたい……)
先ほど決めたメニューで注文し、両手で持って戻って来る。
「羅那くん、買って来てくれてありがとう!」
「零さないよう気を付けて」
もうすぐ、サナの手が触れる。そのときだった。
『ば、化け物ッ!!』
忘れかけていたのに、そんな声が聞こえて、思わず息を呑んだ。
「羅那くん?」
「ううん、何でもないよ。ちょっと……嫌な仕事を思い出しただけ」
嘘をつくことだけが上手くなる気がするのは、気のせいだろうか……。
触れたくても触れられない。
少しだけ、胸が苦しく感じた。
やっぱり……。
サナは感じていた。
はむっと美味しいクレープを齧って、その甘さを感じる。
さっき、手が触れそうになったとき、意識的に避けてた。
それは分かった。
けれど、一瞬だけ、少しだけ……。
辛そうに見えた。
どうして?
わからない。
嫌う訳でもないのに。
初めは、この距離感でもよかった。
でも、今は違う……。
クレープを食べ終えて、ゴミを小さくしていく。
「サナ、ゴミ箱、ここにあるから」
ほんの少し前までは……きっと羅那が率先して、ゴミを受け取り捨ててくれたように感じる。
今は、その距離が……なんだか切なくて。
ぽいっと、サナは持っていたゴミをゴミ箱に捨てた。
こんな風に、この胸のもやもやも捨てれたらいいのにとさえ、思ってしまう。
「サナ……」
「あ、ううん。なんでもない。ごめんね、待たせちゃった?」
「大丈夫。サナが気にしないのなら、それでいいよ」
にこっと微笑む。なんだか、ちょっとだけ……いつもと違うと感じたのは気のせいだろうか?
ぱたぱたと、羅那の側に近寄る。
けれど、それに気づいたのか、羅那は、ほんの少しだけ先に歩き出した。
いつもなら、並んでくれるのに。
手を伸ばしたら、手を握ってくれてた、のに……。
そっと手を伸ばして、やっぱりやめた。
ほんの少しだけ。
怖くなった。
嫌われたくないだなんて、初めて感じた。
けれど、サナは知らない。
羅那もまた、同じ気持ちでいることに……。




