まさか本屋のあのコーナーでバッタリと
その日、気になって気になって仕方なかった。
仕事中もそのことを考えすぎて、昼休憩のときにこっそり試してしまったり。
「ううう、あのゲーム、難しすぎるよ」
今、サナを夢中にさせているのは、スマートフォンで出来る乙女ゲームだった。
1章、2章と順調に行けたのだが……なんと3章でいきなり詰まった。
「厄介すぎる選択肢が多過ぎ……」
ちなみに今、攻略中のキャラは、どことなく羅那を思わせる眼鏡の王子様だったりする。
「レイファス様、格好いいんだよね……」
そして、彼のセリフも、どこか羅那に近い。だからこそ夢中になっていた。最近、羅那が忙しくて、SNSのメッセージで話をするだけしかできていない。それがちょっぴり寂しくて。
幸いにも今日は、早めに仕事が終わった。
なので、駅前にある大型書店に入っていった。
サナが向かったのは、ゲームの攻略本が大量に置かれているコーナーだ。
「確か、ここのコーナーに……あった!!」
最近人気のゲームだから、あると思っていたのだ。すぐに見つかった乙女ゲームの攻略本。ただ……。
「やっぱり、パッキングされてて、立ち読みは難しいか……」
買うとちょっぴり今月は厳しいかもだが、背に腹は代えられない。
しかも表紙にレイファスが大きく描かれているのも最高だ。
「はうう、レイファス様、素敵……買います!!」
「それ……結構、難しいゲームだよね?」
突然、隣から声をかけられた。
「……へっ?」
「こんばんは、サナ。まさか、こんなところで会えるなんて思わなかったよ」
「ももも、もしかして、羅那くんも……このゲーム、やってるの?」
「ううん。まだやってない。けど、途中で難しくなるってのは聞いてる。途中の選択肢が意地悪なのが多くて、なかなか進められなくなるってね」
いったい、どこからそんな情報を得て来るのだろうか?
いやそれよりも確かめなければならないことがある。
「……もしかして、羅那氏は、同士ですか?」
「えっ……急に羅那氏? では、サナ氏もゲーム愛好家ならぬヲタクだったりする?」
そう羅那が一歩踏み込んだことを言うと。
「はわーーー!!」
と、大きな声を上げてしまい、周りに見られてしまって、またはわわと身を縮めていた。
「えっと、その……改めて、羅那くんは、ゲーム好きなの? 私は乙女ゲームとかアドベンチャーゲームとか、RPGが好き」
「僕はこのアクションゲームとか、シミュレーションRPGに、サナも好きな普通のRPGも嗜んでるよ。僕はどちらかというと、こういうやり込み系かな」
と、最近入荷したばかりの分厚い攻略本を手に取った。
「な、なんと……データヲタクでしたか?」
「どちらかというと、コレクターかな。ほら、ゲームに付いてるトロフィーとか全て取りたくなるんだよね」
「それに、そのゲームって……かなり難しいロボットアクションのやつ……」
じっと羅那の持っている攻略本を眺めてて。
「そのロボットさんは、格好いい……」
「ふふ、僕もこの表紙にあるロボットが気に入っているよ。サナは、その表紙のどの彼が好みなのかな?」
サナが手にしている攻略本を指さして尋ねてきた。
「私はこのレイファス様っ!! この蒼い瞳に憂いを帯びた表情がたまらなくってね、しかも、レイファス様のボイスも凄くってね! 優しくて守ってくれて、もうもう、ときめきが止まらなくって、ついつい徹夜までしそうになっちゃって……最初のデートのときも、ちょっと難しかったんだけどなんとか成功して、砂吐きそうなすっごい口説き文句を言ってくれてね……はあ、とってもとっても素敵なんだよね……」
と、ここまで言って、サナはあっと呟いた。
「いや、まさかこんなにサナが饒舌になるとは……恐るべしレイファス様の魔力……」
と言いつつ、ちょっぴり嫉妬を滲ませていた。
「あ、相手は二次元だし、ただの推しだからね? 今は、目の前の羅那くんが一番ですっ!!」
あたふたと、身振り手振りでそう訴えると、羅那も機嫌よくなった。
「それじゃあ、目当ての本も見つかったし、買って来ようか」
「う、うんっ!!」
「それとサナ……この後、時間ある?」
「えっ……?」
「せっかくだから、どこかで食べない? 場所はサナの好きなところで構わないから。それにゲームの話、もう少ししたいな」
と言ってくれたので、サナは。
「ぜひぜひ、お願いしますっ!!」
思いがけない偶然の出会いから、一気にディナーデートに繋がって。
サナと羅那は、また一歩、その距離を縮めていったのだった。




