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ミッドナイト・リィンカーネーション ~運命に選ばれた彼と恋をして世界が変わりました~  作者: 秋原かざや


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14/84

病み上がりなサナと並んだ洋食ディナー

 翌日。

 体のダルさはまだ完全には抜けていなかったけれど、サナはどうにか一日分の仕事は終えた。

「……はぁ……」

 椅子から立ち上がった瞬間、軽く眩暈がする。

 慌てて机に手をついて、深呼吸を一つ。

「やっぱり、まだ本調子じゃないな……」

 そう思いながら会社を出て、夜の駅前へ向かった、その時だった。


「……サナ」

 聞き覚えのある低い声。

 顔を上げると、少しだけ眉を寄せた羅那が立っていた。

「……また無理して……」

「えっと、なんでいるの? えっ……?」

 訳が分からない。

「あれだけ体調が悪かったのに。元気になったとたん、またすぐ出社するなんて、想定外だ」

 そういう羅那の後ろには、見慣れた白いランボルギーニが見える。

 どうやら、待ち伏せされていたらしい。

「ご飯、まだだよね?」

「……うん。まあ……」

「なら決まり。乗って」

 有無を言わせない口調なのに、ドアを開ける動作は、やけに丁寧で。

 気づいたら、サナは助手席に収まっていた。



 連れてこられたのは、駅から少し離れた場所にある洋食屋だった。

 派手さはないけれど、落ち着いた灯りと、どこか懐かしい雰囲気。

「ここ……」

「無理しなくていい店だよ。味も、胃に優しいし」

 それだけで、ほっとしてしまう。

 どうやら、羅那の行きつけの店なようだ。店員とも見知った関係らしく、軽く挨拶を交わしていたのを見ていた。

 席に案内され、羅那は慣れた手つきでメニューを開く。

「サナは……これかな」

 羅那が指差したのは、ホワイトソースの海老グラタン。

「重くないし、温かいからね。今日はこれくらいがいいと思うよ」

「……うん、それにする」


 一方で、羅那の注文は――

「ハンバーグ、ステーキ、ナポリタン。それとトンカツセット」

「……え?」

「デザートは後で考える」

 さらっと言ったけど、とんでもない量だ。それに……よく見たら、隣の写真に写っていたお子様ランチに、似ていた。

(えっ……もしかして、それを食べようとしてる……? いやそれよりも……)

「そんなに食べるの……? 全部、食べれる?」

「昨日ほとんど食べてないからね。本領発揮」

 にこりと笑うその顔が、やけに楽しそうで。

 なんだか、こっちまで元気を分けてもらえる気がした。


 先に運ばれてきたのは、サナのグラタンだった。


 ふわりと暖かい湯気が立ち上がって。

 上に乗った溶けたチーズが、こんがりと焼けた表面。

 スプーンを入れると、とろりと白いソースが広がり、そこからマカロニが顔を出していた。

 それを口に含もうとして……。

「……熱っ」

「ほら、言った」

 今度は慎重に、ふーふーしながら、ゆっくり一口。

「……美味しい……」

 優しい味。

 エビの甘さと、まろやかなホワイトソースが体に染みる。

「無理して全部食べなくていいからね? 半分くらいで止めてもいいから」

「うん……でも、食べられそう」

 そう言っている間にも、羅那の前には次々と料理が並び――

 ナイフとフォークが止まらない。しかも、上品にスマートにそれを一つずつ食べきっていく。

「わぁ……ホントに、全部食べちゃいそう……」

「見てると楽しいでしょ?」

「うん……ちょっと」

 その羅那の横顔を眺めながら、サナはまた一口、グラタンを口に運ぶ。

 気づけば、体の力が少し抜けていた。

「……連れてきてくれて、ありがとう。羅那くん」

「当然だよ。また倒れられたら困るし。僕も心配してるんだよ」

 そう言う羅那の蒼い瞳は、とても優しい光を帯びていた。

「今日は、ちゃんと回復する日だからね」

 その一言で、サナの胸の奥がじんわり温かくなった。


 ――ああ。

 無理しなくていい夜って、こんな感じなんだ。

 そう思いながら、サナは最後の一口を、ゆっくり味わったのだった。



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