……もう限界、です……?
連日の仕事に疲れ気味だったのもあったのだろう。
「ああ……これ、もうダメかも……」
ヤバそうだとマスクをつけてきたけれど、間に合わなかったかもとサナは感じる。
熱っぽいし、ふらふらしてきたし……ここまで頑張ったが、流石に限界だ。
「一人で帰れる? 大丈夫?」
美咲が心配してくれたが、美咲も忙しいことは分かっていたので、後は大丈夫と告げて、会社を出た。
会社を出て、ふらふらとした足取りで駅前へと向かう。
「ううう……駄目かも……たぶん、家まで持たない……」
近くにあるはずのベンチを探そうとして、ふっと気が遠くなった。
「……あっ」
倒れると思った瞬間。
「危ないっ!!」
誰かの叫ぶ声で、意識が戻った。
「大丈夫か? サナ」
倒れたサナを支え、助けてくれたのは。
「羅那、くん……? どうして……?」
「それはこっちのセリフだ。なんで、こんなになるまで働いていたんだよ……無理しちゃだめだ」
「分かってる……でも、風邪でなかなか休めなくて……」
そう告げるサナに羅那は、深くため息をついた。
「とにかく、君を家まで運ぶよ。車近くにあるから、安心して」
そのまま、羅那はサナをお姫様だっこして、あのランボルギーニへと運んでいく。
「サナ、家の住所はメゾン東條の205号室だったね」
「うん……そうだけど……あれ? 前に言ったっけ?」
「前に聞いたことがあった気がする。何もしなくていいから、寝てて」
「えっと……」
助手席に座っているサナが呟くようにそう教えてくれた。
「いいから。とにかく、急いで家に向かう。あっと、シートベルトつけておくね?」
「ん……」
そのまま、サナは眠りについたのだった。
暫くして、またサナは誰かに抱えられていた。
「えっと鍵はこれかな……うん、開いた」
がちゃりと玄関の扉が開く音が聞こえた。
「ごめんね、入るよ?」
サナを抱きかかえながら、羅那はサナの部屋へと入って行く。
「あ……可愛い……じゃなくて、サナ……ベッドに横になってて……」
ふわりと柔らかいベッドの上に置かれた。
「荷物はここでいい? テーブルの横に置いておいたからね……えっと後は、着替えと食事かな……かといって、僕が脱がすのもあれだよな……」
しばし、思案するような間が空いて。
「……まあ、緊急事態だし……いいか。やっても……」
ぱちん、ぱちんと指を鳴らす音が部屋に聞こえた。それだけで体がとても楽になった。
「うん、これでよし。おやすみ、サナ」
ふわりと暖かい布団がかけられる。ああ、暖かいとそのまま、深く深く眠りについた。
数時間後。冷蔵庫に温かいスープとリゾットを入れ終わった羅那は、寝ているサナの様子を見る。
「よく寝てる。よかった、熱も下がってるみたいだ。これなら大丈夫かな?」
ベッドサイドに座り、サナの額に触れて、熱が下がったのを確認する。
「本当によかった……血の気が引いたんだからな。あの夢と重なって」
少しだけ悲痛な顔をして。
けれど、あの時とは違う。目の前のサナは風邪を引いているが、暖かくて生きている。
「生きてる……救えて、よかった……」
思わず涙が溢れそうになって、はっと気づき、急いで首を横に振る。なんとか涙は出ていない。
「だからこそ、ここでも守るから。……サナ」
そして、ぐっすり寝ているサナの額に、羅那は優しくキスをしたのであった。
「ふわああ、ナニコレ!!!」
起きたら、羅那の残した置き手紙があり。
『冷蔵庫にスープとリゾット入れてあります。温めて食べてね。それと、絶対に無理しないこと。約束だよ。羅那』
と、綺麗な字で書かれており、本当に冷蔵庫のタッパーにそれらが入っていたのだった。




