隠れ家バーとサナの秘密?
そのバーを見つけたのは、偶然だった。
美味しくて珍しいカクテルをたくさん出してくれる。しかも、出してくれる小鉢なども力を入れてるらしく、どれを頼んでも美味しい。
そんなバーのマスターとも仲良くなっていた。
だからこそ、サナはこのバーが、お気に入りで、仕事が辛くなったときは、ここを訪れていた。
「ふふふ……今日も、カクテルが美味しいですぅ……」
ただ、一つ問題があると言えば、サナが酔っぱらうと。
「あ、こんにちはーっ!!」
サナの社交的な性格が最大に発揮されて、いろんな者に絡みだすことだった。
「これさえなければ、いいお客さんなんだけどなぁ……」
とは、目の前のバーマスターの言葉。
その度にマスターは、サナをなんとかカウンター席に座らせている。
「んふふ……楽しい……」
ほんわーという感じで、またお酒を楽しんでいる。
と、そのときだった。
からんからんと、来客を告げるベルが鳴り。
「おや、久しぶりですね」
マスターが声をかけた。
「ええ。そろそろ美味しいお酒を飲もうと……んん??」
そこに偶然やってきたのは、なんと羅那だった。
「……えっ、なんでサナがここに?」
理解が追いついていない。かなり驚いている。
「あれ、浅樹さん。サナちゃんの事、知ってるんですか?」
マスターが尋ねると。
「知ってるも何も……まあ、恋人ってやつですね。サナ、ひさしぶ……」
と、サナに声をかけようとして。
「あ、お兄さん。一緒に飲みませんかー?」
羅那のことに気づいてないらしく、すぐ隣の見知らぬ男に声をかけていた。
「!!?」
更に理解が追いついていない羅那の頭に、大量のハテナマークが浮かぶ。そんな彼の為にマスターが説明し始めた。
「ああ、今、サナちゃん酔っぱらってるんです。酔っぱらうと、どんな相手でも絡んでしまって」
「え?」
「どんな相手でも絡んでしまうんですよ。酔うと」
もう一度、マスターがそういうと、羅那はようやく理解したらしく、サナをそっと引き寄せた。
「はわわ……???」
「サナ、ここで何をしているのかな?」
その声色は、いつもの優しい声ではなく、やや抑えめの低い声。
「あ、あれ……えっと? あれ……どうして、羅那くん??」
ようやく酔っているサナも気づいたようだ。
「うん、久しぶりだね、サナ……で、ここで何をしているのかな?」
カクテルグラスを持って、サナが混乱している。
「えっと……その……美味しいお酒を飲んでて、楽しくなって……ました……」
「みたいだね。で、隣の見知らぬ男に声をかけるんだ。……俺がいるのに?」
ちょっと嫉妬入っているようだ。それでも以前よりは、少し抑えめなようだ。まだ素面だからかもしれない。
「ご、ごめんなさい……」
「わかったのなら、もうそんなことしないで。ずっと僕の隣にいること。いいね?」
「は、はいっ!!」
と、羅那はマスターにウイスキーのロックを頼んで、お酒を楽しみ出した。
のが、数時間前。
「あ、こんにちはぁー!!」
トイレに立ったはずのサナが、別の男に声をかけていた。
「はあっ!?」
思わず、羅那が変な声を上げた。
ちゃんと叱ったはずだった。
けれど、サナは再び、絡んでいた。
「マスターもしかして……」
「弱いですよ、彼女。何度注意しても、ああなんですよ……さっき、浅樹さんが叱ってくれて、ちょっと大人しくなったから大丈夫かなって思ったんですけどね」
がたっと急いで立ち上がり、羅那は急いで、サナを回収した。
「あれれ……?」
「あれれじゃないっ!! まだわからないのか、君はっ!!」
「あ、羅那くんも来たんだーわーい……」
そのサナの言動を見て、ようやく、理解した。
サナはお酒を飲むのが好きだが、かなり弱いことに。酔いやすくて、しかも質が悪いことに。
「覚えてないし……絡み癖が……ひど過ぎる……」
ちょっと泣きそうになった。
「あー、こんなこと、あったかなぁ……?」
羅那はちょっと思い返すように記憶を確認したが……いや、それよりも、このまま過ごすのは危険すぎる。
「マスター、すみませんが、もう帰ります」
「えええ、まだ飲みたいよぅ……」
その腕にサナをしっかりと抱きとめながら。自分以外の男に話しかけるサナをこれ以上見たくない。
「ああ、浅樹さん。これを」
会計後に、そっと羅那にメモを手渡した。サナの住所のようだ。
「助かります。ちゃんと彼女を家に送り届けますから」
「よろしくお願いします。それと……大変ですね」
「そ、そうですね……今日、初めて知りました」
そう羅那は苦笑して、腕の中でぶーぶー言うサナを一緒のタクシーに乗せて、家まで送り届けたのだった。
「知らなかった、サナにこんな一面があるなんて……」
一人になったときに、羅那は、ぽつりとそう呟いた。




