後回しにしていた魔力感知と時計台の地下
時間はかなり遡る。
「な、なんで……サナがいない!?」
急いでピアスの魔力を辿って探そうとしたら……マンスリーマンションのテーブルの上に置かれてて、羅那はがっくり来たのは言うまでもなく。そのお陰で、サナを見失ってしまっていた。
学校に来ていた……ところまでは、確認している。
何故なら、警備員がサナの姿を見て、中へと迎え入れたというのを聞いたからだ。
しかし……その後の足取りが一向に追えない。
一応、学校での調査は、軽く済ませている。
何かが潜んでいることは分かっているが……なにせ、相手は隠れている。
気配を感じているのに、それが見つからない。
苛立ちを抑えられないのは、仕方ないかもしれない。
「なるほど、それでうちに来たと……」
「そういうこと。これじゃあ、調査になんないし、サナが見つからないなんて、異常事態だろ?」
「それは認めよう……」
ふうっとため息をつきつつ、翔は一つの魔道具を机の上に乗せた。
「……ナニコレ?」
「ただの探知機だ。だが、この中にはサナの魔力が入っている」
「!!」
その翔の言葉に羅那は思わず、息を呑む。
「お前、魔力感知が苦手だったな。せっかくだ。今回ここで克服しろ。有り余る魔力があるなら、すぐに習得できるだろう?」
「……微弱な魔力まで感知しちゃうんだけど」
その言葉に翔は、んんっと首を傾げる。
「ちょっと待て、どれだけ感知するんだ?」
「……全部。だから、学校だけでも、かなり頭が割れそうになる……これでも、調べたんだ。もう、何が何だか……」
がつんと、思わず、近くの机に拳を叩きつける。流石に壊しはしないが、それでも、羅那の苛立ちは収まることを知らない。
「落ち着け、全く……感知できるのなら、後は絞ればいいだろ? 目的の魔力を探すだけだ」
「それができたら、苦労はっ……!!?」
ごつっと、翔は羅那の頭をぐりぐりと、いつものように折檻していく。
「うううう……」
「そこまで出来てるなら、後は吟味して、選ぶだけだ。それに、頭が痛いのは、お前が加減知らずにぶっ放しているだけだ。調節を覚えろ。ほら、地下に行くぞ」
ずるずると羅那を引きずって、そのまま地下に連れられて……。
「うわあ……ここ、好きじゃないんだけど」
悪戯して怒られて閉じ込められたことを、思い出した。
「だろうな。お前、いろんな悪さしてたからな。けど、ここがいい。他の魔力は入ってこないからな。まあ、2日くらいあれば、お前ならマスターできるだろ。さっさとマスターして、学校で調査しろ。隠したさっきの魔道具を見つけるまで、ここから出さないから、覚悟しとけ」
「んん!? ちょっとまっ……」
ばたんと閉められて、辺りは真っ暗になる。
「もう勝手なんだから! なら明かりを……んん、ちょ……父さん、これ……くっ……特定の魔法以外、打ち消すのかよ、くそっ!!」
だんと、思わず地団駄を踏んでしまう。
「分かったよ、やればいいんだろ、やればっ!!!」
そして、翔の宣言通り、二日目に羅那は、その地下から出てきた。
「……父さん、ガチでぶん殴って良い?」
「その前に、お前の好きなフルコースあるが、いらんか?」
「だから、嫌いだよ!! 風呂に入って来る!!」
くくっと笑う翔を睨みつける。
「だが、わかっただろう? どうやって、『感知』するか。お前なら、サナの魔力なんて、手に取るようにわかるだろ?」
「……苦労したけどね。もう、分かるよ」
その言葉に翔は満足そうに笑って続けた。
「なら、次は迷うな。そして、さっさと終わらせて来い」
「言われなくてもそうするよ!」
三日目。四日目。
学校内でサナの魔力を追っていた。
すぐにわかったが、かなり微弱ですぐに消え去ってしまった。
「あああ、もう、イラつく!! 後もう少しだったのにっ!!」
午前中は先生として潜入し、調査をしていた。たまに本性が出てしまい、生徒達を怖がらせてしまったが、仕方ない。
サナがいないことが、こんなに堪えるとは思わなかった。
「はぁ……サナ、君は何処に……いや、こうなったら、先回りしてみるか」
それが功を奏して……サナの本体を、いや、それだけではない。
他の行方不明になっていた学生達も見つけることが出来た。
時計台の地下。そこに全てが眠っていた。
「へぇ……ここに貯め込んでいたのか。けど、もう終わりだ。返してもらうぞ。『七不思議』」
すうすうと眠り続けるサナの側に近寄り、そして、彼女の夢の中に入った。
そこにサナがいた。
体全体が喜びに満ちるのがわかった。
思わず、笑みが零れる。が、それともう一つ。
そういえば、サナの魔力を隠すような、もう一つの『魔力』があった。力というべきか。
胸糞悪い。
出来損ないの自分の……偽の姿。
まるで、鏡を見せられているように感じてしまう。
けれど、決定的な違いがある。
そっとサナの前に、サナを守るように振り返り、学生服の、もう一人の羅那を見た。
「ふうん、中学のときの制服か。サナの深層を見たのか?」
最近、自分の中学に、母校に行ったことを思い出した。だから、ブレザーではなく、学生服になったのだろう。
それに自分に似た執着心を見せている。サナを欲しているのがすぐにわかった。
「五月蝿い、死ねっ!!!」
凄まじい魔力が羅那に放たれる。が、羅那は動じず、そのままもう二つのクリスタルランサーを展開し、無効化した。
それも完璧に。
「!!!?」
「俺にそれは効かない。サナ、あいつ、そんなに強くないよな?」
「え、あ……う、うん……あんまり、強くない……」
「ありがとう。じゃあ、このまま……ちっ」
羅那が本気を出して、消そうとしたのを見て、偽物は逃げていった。
「ら、羅那くん、なんかその……すっごく……怒ってない?」
「そりゃそうだよ。サナが行方不明になってたんだからね。だから……んん、その恰好も可愛いけど、やっぱり」
そのまま、サナの唇を奪って、ぱちんと指を鳴らした。
ぶわりと光がサナを覆い、そして。
「はわ、元に戻った!! お胸が復活したよ!!」
その言葉に羅那は、ちょっと驚きながらも、くくっと笑った。
「ホント、サナは変わらないね。可愛くて……ずっと捕まえてしまいたいくらいだ」
そのままぎゅっと抱きしめて、けれど、すぐに離れた。
「あ、羅那くん。えっと、さっきの偽物さん、逃げちゃったけど……」
「うん……どこに逃げたかは分かるよ。やっぱり、あそこにいる」
「えっ……もしかして、魔力感知?」
サナの言葉に、羅那は自慢げに告げる。
「やっとマスターしたよ。お陰で、サナにも会えたし……そこにいる子達も保護しないとね」
柔らかな笑みを見せて、羅那は後ろに控える七不思議研究部の四人に、ぱちんと回復の魔法をかけてみせたのだった。




