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ミッドナイト・リィンカーネーション ~運命に選ばれた彼と恋をして世界が変わりました~  作者: 秋原かざや


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正午に現れた羅那と……もう一人の羅那

 ――旧校舎の二階にある、使われていない図書室。

 本棚の隙間から人の声のような囁きが聞こえるらしい。

 その囁きに耳を傾けた生徒が、本の中に吸い込まれるように消える。


 それが、第六の七不思議。



「え、今日はお昼に調査をするの?」

 サナの言葉に音紗は頷いて見せた。

「第六の七不思議は、昼でも現象が起きると聞いてるわ。幸い、今日は学園祭の準備で午後から部活動してもいいから、ピッタリよね」

 という音紗の言葉に、蒼士が指摘する。

「……音紗、もしかして、サボろうとしてる?」

「これはれっきとした、私達の『部活動』よ。いいでしょ? 調査が早くできるのだから」

「まあ、その方がやりやすいからね……」

 タブレットを操作しながら、玲玖は調査の準備を行っている。

「それにお昼の方が写真写りもいいしね!」

 舞華がちょっと嬉しそうだ。怖がりの舞華にとっては、昼の調査はいろいろな意味で好都合なようだ。

「それじゃあ、皆の同意も得られたし、さっそく行くわよ」

 音紗の掛け声の元、七不思議研究部の面々は、そのまま旧校舎へと向かったのだった。


 明るい旧校舎ではあるものの、どこか不気味に感じるのは気のせいだろうか?

 木の廊下を進んで、目的地である図書室へと入っていくと……。


「サナ!! こんなに早く来てくれたんだね!!」

 学生服の羅那が、サナに抱き付いてきた。

「羅那くん? え、もうお昼に出て来ても大丈夫なの?」

「うん、それに……見て! 身長も元通りだよ」

 とてもご機嫌な様子で羅那はもう一度、両手を開いた。

 出会った時と同じ……いや、今と同じ身長の羅那に、サナは嬉しそうに微笑んだ。

「本当だ、ようやく、元に戻れたんだね。よかった……」

 その様子にホッとしたように笑顔を見せて。

 そして、もう一度、サナが羅那の元に向かおうとするのを。

「行くな」

 最初に止めたのは、蒼士だった。

「え、蒼士くん?」

 その言葉に戸惑いを隠せないサナに、蒼士は続ける。

「どうして?」

 改めて、羅那が蒼士に尋ねる。その優しく穏やかな声色で。

 だが、蒼士だけは気づいていた。その羅那の一言で背筋に冷たいものが走ったのを。

「僕は、ただ……サナを迎えに来ただけだよ」

「迎えに来た、だって? それ違うだろ?」

 その蒼士の言葉に羅那は、首を傾げる。

 その間にも蒼士は羅那との距離を詰めて、睨みつけながら言葉を続けた。

「サナを奪って、変なことするつもりだろ! サナは騙せても、俺は騙されない!! そんなことは、させねぇ!!」

 そういって、サナの前に立ちはだかる。

 そんな蒼士を見て、初めて羅那は、その表情を止めた。

 笑みが、消える。

 感情のない瞳が、蒼士を見た。


「そう……僕の邪魔をするんだね。なら、僕は容赦しない」

 その声は、先程までと同じはずなのに。

 まるで、別の何かが重なっているように聞こえた。

 それでも蒼士が退かないのを見て。

「だめ、羅那くんっ!!」

 サナの言葉が羅那には届かなかった。

「がはっ!?」

 ぶわりと黒い影が羅那を包む。と同時に、その影が蒼士を襲った。

 影は蒼士を持ち上げ、そのまま地面へと叩きつけたのだ。

「そ、蒼士くんっ!? ど、どうして……羅那くん……!?」

「僕らの邪魔をするから、仕方なかったんだ。だから、少しだけ眠ってもらうことにしたんだ」

 淡々と羅那はそう、サナに告げる。

(くそ……体がいうことを聞かない……声も……出せない……)

 激しい痛みが蒼士の体を駆け巡る。動けない。このままでは本当に殺されてしまうかもしれないという事実に蒼士は震えることしかできなかった。

「でも、これって……」

「ねえ、サナ。約束覚えているかな?」

 羅那はそういって、サナに近づいていく。

「そのペンダント、僕にくれるって、約束したよね? さあ、僕にそれを渡してくれないか?」

 羅那は慣れた手つきで、その手を差し出す。その手にペンダントを置くようにと指示しながら。


 一方、他の研究部の面々は。

「!!!」

 舞華と玲玖は、そのまま地面に押し付けられていた。恐らく、目の前の羅那がそうしているのだろう。

 いや、そうしたのだ。黒い靄のような影に覆われ、地べたに這いつくばるように苦しんでいた。

 そして、音紗は、なんとかポーチからクッキーを取り出し、それを口に含んだ。

 さくりと、口の中に広がる甘いクッキーの味。それと同時に、抑え込まれていた力が急に途切れ、活力が湧いて来る。

 時間があれば、舞華と玲玖にもクッキーを食べさせたいところではあるが、今はそんなことをしている時間はない。

 音紗は、サナの前に飛び出した。


「……何のつもり?」

「音紗ちゃん!?」

 羅那とサナの声を無視して。

「サナ、それを渡しては駄目。あいつの目的は、サナからそれを奪う事よ。それは大事な『お守り』なんでしょう?」

 そう音紗が指摘して、サナはあっと思い出した。

 このペンダントには、羅那がサナの為に込めた加護がかけられている。サナを守るための力が込められているのだ。

「で、でも……羅那くんが……」

 サナは迷っていた。何故なら、目の前にいる羅那は、サナのよく知る羅那だったから。

 たとえ、友達を抑えつけようとも、それに大事な意味があるのなら、やりかねない彼だから。

「騙されては駄目よ、サナ。あなたの知っている『羅那』は、本当に目の前にいる『羅那』なの?」

「!!!!」

「やめろっ!! それ以上、サナを惑わすなっ!!」

 音紗の言葉に、初めて羅那が声を荒げた。穏やかな声ではなく、冷えた声色。

 けれど、サナの知る羅那もまた、冷えた声色を使っていた。

 だから、否定しきれない。今も。

 ならばと、羅那は動いた。

 鞭のような影が、音紗の体を打ち付け、背後にあった本棚に激しくぶつかった。

「あがっ!!」

「音紗ちゃんっ!?」

「大丈夫だよ。彼女も……少し休んでもらうだけだから」

「で、でも……」

 サナは否定できない。

 押しのけられない。

 何故なら、彼は、確かに『羅那』だったから。それに……『羅那』がいなかったら、私は……。

「羅那くん、ダメだよ……もうやめて……」

 そう苦しむサナに寄り添うように、羅那が近づく。

「もうしないよ……でも、時間がないんだ」

 じじっと、羅那の顔にノイズが走った。いや、顔だけではない、腕も足も――じじっと、ノイズが走る。

 まるで、羅那の姿が維持できないかのように。

「ら、羅那くん……!?」

「少しだけ……この姿を保つのが、難しくなってきただけ。でも……サナが来てくれたら、それは解消される」

「羅那くん……」

「そのペンダントを僕に渡して……そして、僕と一緒に来て?」

 羅那が苦しんでいる。それを聞いて、サナはいてもたってもいられなくなってしまった。

 だって、羅那がこんなにも、私を欲してくれている。

 なら、応えないと。

 私が彼を支えないと……。

 差し出す彼の手に、サナはその手を重ねようとして。


「そうはさせない」

 その声が凛と響いた。どこかの神が現れたような、そんな神々しい声色。

 そして、ぱしんと、何かによって、弾かれた。

 いや、守られたのだ。

 ひし形のクリスタルランサーが生み出す、見えない結界によって。

「えっ……」

 そこに降り立つように、ふわりと現れたのは。

「……サナ。目の前のコレ、なに? ……俺の真似して目障りなんだが」

 グレーのスーツを着た、もう一人の羅那。その胸元には、浅樹家の者だと象徴する鳳凰のブローチが輝いていたのだった。




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