表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミッドナイト・リィンカーネーション ~運命に選ばれた彼と恋をして世界が変わりました~  作者: 秋原かざや


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/120

理科室の鏡の噂とサナのクッキーの効果

 既に契約していたマンスリーマンションに戻って来た。

「えっと、確かここだよね?」

 知らぬ間にサナの鞄の中にマンスリーマンションの住所と鍵が入っていた。

「きっと、狛犬部隊の人達が、こっそり入れてくれたんだね。でも……羅那くんが教えてくれたっていいのに……羅那くんはどこにいっちゃったんだろう?」

 少しの不安。けれど――その感情は、すぐに霧のように薄れていった。そのまま、気にせずに部屋に入っていく。既にベッドなどの生活に必要なものは全て揃っていた。

「そうだ、クッキーを作ろう! みんなと仲良くなりたいから……きっと喜んでくれるはず!!」

 慣れた手つきで、キッチンにあった材料を使って、クッキーを作っていく。作り方はレシピを見なくてもわかる。何度も親と自分だけで、焼いてきていたから。

「でも、どうして作ろうと思ったんだっけ……?」

 サナは小さく首を傾げた。けれど、不思議とそれでいい気がした。

「うん、美味しい!! 綺麗に焼けたから……自信作だよ!!」

 透明な可愛い袋に袋詰めして、サナは満足げに……眠った。

 翌朝、危ない所で遅刻しそうになったが、まあ、ギリギリセーフだったことを記しておく。



 そして、放課後。

「まずは皆に……プレゼントっ!!」

 サナはさっそく、焼いてきたクッキーを、七不思議研究部の面々に配っていく。

「え、えっと……俺に? うわあ、すっげーー嬉しいっ!!」

 クッキーを貰って、蒼士は目をまん丸にしながら……サナをぎゅっと抱きしめた。

「はわっ!!?」

「はい、蒼ちゃん近すぎ!!」

「サナもさー、嫌なら嫌って言わないとダメだよ?」

 舞華と玲玖が引き離してくれた。

「え、あ……で、でも……嫌じゃなかった……」

 ふわりとした暖かい温もり。思ったような温もりとは違ったけれど、でも、どきんとしたし、嬉しかった。

「はいはい。けど、このクッキー美味しそうね。一つ貰うわ」

 さっそく、音紗が袋から取り出し、ぱくんと食べる。

「……んん?」

「お、美味しい?」

 不安そうに見上げて来るサナに驚きながらも。

「…………悪くはない。美味しいわ」

「珍しい! 音紗ちゃんが褒めるってことは美味しいんだ。どれどれ。うん、美味しいね」

「まあまあ……?」

 舞華と玲玖の反応が少々薄い気がするが、それでも喜んでもらえたからいっか。

「ふふ、作ってよかった……」


 そう微笑むサナを見ながら、音紗は驚いていた。

(……嘘。なんで……このクッキー一つで、こんなに……『回復』してる……この子、何者?)

 最初から変なことを言っていた。自分は大人だとか言ってたし、誰かと一緒に来ていたって言ってるし……訳が分からないが……もしかしたらこの子は……。

「とにかく、このクッキーは大事にしないと……」

 いつも身に着けているポーチに、音紗は大事そうに貰ったクッキーを入れて置くのであった


「それでね、話の続きなんだけど……昨日助けた子、消えちゃったんだって」

 舞華が事件の後のことを聞き出して、報告してきた。

「えっ!? 消えちゃった!? 助け出せたのに!?」

 サナが思わず、声を上げた。

 確かに、あのとき、しっかりと助けたし、治癒だって完璧だった。何か変な効果みたいなのも感じたから、それも全部、まとめて浄化してあげたのに……。

「助けられなかったなんて……」

「まあ、最初から成功するなんて、思わない方がいいわ。私達は調べながら、原因を突き止めようとしているんだから。もちろん、出来る限りたくさんの人達を助けたいとは思うけど……」

 今は行動が制限されまくっている、高校生なのだから、仕方ないのかもしれない。

「本当の大人だったら……助けられたのかな……?」

 しょんぼりしてしまうサナに、音紗は続ける。

「あなたのせいじゃない。とにかく、七不思議を調べましょう。おかしいと思うのは、そこだと思うから」

 その音紗の言葉に、周りの面々は、静かに頷いたのだった。




 ――夜の旧校舎一階。

 理科室の隣にある『理科準備室』。そこに置かれている『古い鏡』がある。

 それを覗いた時、自分ではない『誰か』を見る時がある。

 違う顔が映った生徒は翌朝、精神状態が不安定になって登校してくる。


 それが、第二の七不思議。



 現地にたどり着いたら、もう誰かが中に入っているのが分かった。

 研究部の面々は急いで、一階の理科準備室に飛び込む。

「古い鏡なんて、オーソドックスだよね……」

 怖いなぁと呟きながら、サナが言う。

「な、なら……俺が守ってあげようか?」

 すると、近くにいた蒼士の言葉に、サナはどきっとしてしまう。


『サナのことは僕が守るよ。必ず』


 そんな言葉が頭に浮かんだ。優しい声。それを聞いただけで、蕩けてしまいそうな……。

「ほら、いちゃついてないで、こっちよ!! 人がいるっ!!」

 どうやら、もう目的地にたどり着いたようだ。そこには……。

 がらっと開くと、そこでは、二人の女子生徒が鏡の前で話をしていた。

「ねえ、私……ここ、前にも来たことあるよね?」

「ないよ。今日が初めてでしょ」

「え? でも……昨日、ここで――」

 彼女達は違和感に気づいていない。何かがズレている。音紗とサナが顔を見合わせ。

「あなた達、二人で来たの?」

 そう音紗が尋ねると。

「あれ、ヨージは?」

「イツキもいない……あれ?」

 その言葉に蒼士が動き出す。

「他にどこか行った場所あるか?」

「ううん、私達、この鏡を見に来て……」

 蒼士と女子生徒達の話によると、他に二人の男性生徒がいたらしい。しかし、ここにはいない。

「もしかして……」

 音紗とサナは、同時に、そこに飾られた鏡を見た。

 先に見たのは音紗。いつもと変わらぬ姿で、何も変化がない。

「確か、自分ではない『誰か』が見えるって……」

 今度はサナが見てみる。


 ――そこには、『大人の姿のサナ』がそこに映っていた。


「えっ……誰!?」

 驚いて、サナは鏡から離れた。

「どうかしたの、サナちゃん。何か見えたの?」

 舞華が尋ねると。

「わ、わかんない……知らない人が……映ってた……こ、怖い……」

 がたがたと振るえるサナに、蒼士が寄り添う。

「大丈夫?」

「う、うん……」

「それよりも、早くここから出よう。何か嫌な予感がする……」

 玲玖の言葉に、音紗が頷く。

「そうね、他には何もないみたいだし、そろそろ出ましょう」

 その教室を出て、皆はそのまま、新校舎の保健室へと向かった。サナはまた、異変に気付き、回復と浄化の力を使って、二人に癒しを与える。すると、二人はそのまま、気持ちよさそうに眠ってしまった。

「今回もみんな助けられてよかったね!」

「うん、良かったよ」

 舞華の言葉に、サナが頷く。

「何言っているの? 一緒に居た男子生徒の二人、助けられなかったわ」

 そう音紗が指摘すると。

 二人は顔を見合わせ、こてんと首を傾げた。

「そうだったっけ?」

「舞華ちゃん、もう二人、いたっけ?」

 二人とも……特にサナもまた、何かを忘れている。いや、もう何かが進んでしまっているのかもしれない。

「まあいいわ……どっちにせよ、私達には無理だから……」

 こうして、研究部の面々は、女子生徒の二人を助け出すことが出来たのだった。



 深夜の旧校舎。

 そこでまた、彼は……怒っていた。

「どうして……どうして、僕にはくれなかったんだよ……!!」

 ばきっと、近くの壁を叩いて、壊してしまった。が、次の瞬間にはそれがなかったかのように元通りになっていた。

「サナ……僕にもくれなきゃ……駄目だよ。僕もいるのに……」

 悲しそうに涙を浮かべそうにしても、何も感情が浮かばない。

「けど、サナの力をまた、少し貰うことが出来たから、この次は……だから、今度は僕にもクッキーをくれるよね?」

 とたんに綺麗な笑顔を見せて、音もなく廊下を歩いていく。

「大好きだよ、僕のサナ……だから、今度は」

 ぴたっと月を見上げて、微笑んだ。いつも好きだと言ってくれた、その笑顔を浮かべて。

「僕が、会いに行くね……」

 だから、何か、僕にもちょうだい……と、呟くのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ