高校生になったサナと七不思議研究部 ~第一の七不思議は赤い影の謎
気がついたら、サナは保健室で目を覚ました。
「はわっ!? あ、あれ……わ、私……」
まだ、ぼーっとしている。
「あっ!! 転入生ちゃん、起きたよっ!!」
そう声を上げたのは、どことなく、サナに似たデジカメを首から下げた、サナと同じ制服を着た女の子。
「よかった……目を覚ましたのね」
落ち着いた長い黒髪を揺らす、凛とした少女も出てきて。
「あ、あの子、起きた!? よかった……大丈夫そうでよかっ……た……」
んん? なんか、元気そうな少年がサナを見て、ちょっと頬を染めている?
「それよりも、君の名前……教えてくれる?」
眼鏡をかけてパソコンを持っている少年が、サナに声をかけてきた。
「あ、私……? えっと、柊サナ、です。あの、皆さんは……?」
「私はね、雪野 舞華! はい、写真ぱしゃっと! ふふん、最初の一枚ゲット!!」
デジカメを首に下げていた少女、舞華がサナとのツーショットを撮影してきた。
「僕は白庭 玲玖。科学部だよ。ほら、お前も自己紹介」
眼鏡でパソコンを持った少年、玲玖が隣で、頬を染めている少年を小突いた。
「あ、え、えっと……サッカー部で副会長やってる、葛城 蒼士だ。そ、その、よろしく!!」
真っ赤になった少年、蒼士がそういって笑顔を見せて。
「私は千景 音紗よ。七不思議を調査しようとしたら、時計台の前で倒れているあなたを見つけて、保健室に連れてきたの。外傷はないみたいだけど……大丈夫?」
「あ、えっと……大丈夫……っぽい……んん?」
なんか、違和感を感じる。確か制服着た時、ちょっとだけキツキツだった。でも今は、ピッタリな感じ。特に……。
「ふえええええ、わ、私のお胸がないいいいいい!?」
「えっ……」
「お胸?」
サナは驚き、そして、近くにあった全身が映る鏡の前に立って、もう一度叫んだ。
少し縮んでいるし、長かった髪もボブヘアーになっている。何より、声が少し高い気がする。
「わわわわ、私、高校生になっちゃってるうううううう!!!!」
「……ってことは、サナ……本当は二十歳の大人だっていうの?」
「そうだったんです……ちょっと前までは……」
自慢だったお胸が小さくなって、サナはしょんぼりしている。
「夢でも見てたんじゃない?」
「そうとしか考えられないよ。だって、柊さん、僕らと同じだし」
「と、とにかくさ、サナのことも調べてあげようぜ。もしかしたら、七不思議が悪さしてるかもしれないし」
最後にそういうのは、蒼士だ。
「そうね……もう一人、メンバーを増やしてもいいかもね。私達、『七不思議研究部』は、この学校の七不思議を調べているの。あなたも一緒にどうかしら?」
そういって、音紗が手を差し伸べてきて。
「わ、私も……調べてみたい、です……その、七不思議」
それに……何故か、サナはとても気になっていた。『七不思議』のことが……。
――夜の旧校舎二階。
夕暮れを過ぎると、廊下に『赤い影』が現れる。
影に追いつかれた者は、翌朝まで行方不明になる。
それが、第一の七不思議。
「……ってことは、その影に追いつかれたらヤバいってこと?」
なんとかお胸ショックから立ち直ったサナは、四人と一緒に夜の旧校舎に来ていた。
「うん、そういうこと。それに……もう人が入ってる」
と、音紗は地面に先に入ったと思われる足跡が残っているのを指摘した。一つしかないので、恐らく入っていったのは一人だけ。
「そ、それなら、急がないと!!」
「そうね、いくわよ!!」
サナと音紗が走り出す。
「ちょ、待てよっ!!」
蒼士も、二人を追って、急いで駆け出し。
「三人とも、早いってばっ!!」
「ま、待ってっ!!」
その後を、玲玖と舞華が追いかけていったのだった。
廊下の奥、夕闇の中に『滲むように』赤い何かが立っていた。
いや、よく見ると、赤い影がぐったりした生徒を担いで、どこかに連れて行こうとしているのが見えたのだ。
それをいち早く見つけた音紗が。
「そうは……させないっ!!」
とうっと、ジャンピングキックを赤い影に浴びせようとして、すり抜けた。
「わあっ!!」
そのまま、通り過ぎてしまって、生徒を助けられない。
「そ、それなら、その子を返してっ!!」
ぐいっと赤い影が担いでいた生徒を引っ張る。掴めた。このまま引っ張れば、その生徒を助けられる……はずなのだが、なかなか引っ張り切れない。なんて、力なのだろう。
「さ、サナ……!! 手伝うよっ!!」
そこに駆け付けた蒼士が、サナと一緒になって引っ張る。
「「えいっ!!」」
ずぽっという音と共に、生徒を引っ張り上げることができた。
「い、行けた?」
「な、何とかっ!!」
すると、赤い影が三人の方へと近付いてくる。
「に、逃げろ―っ!!」
そして、一目散に逃げだす。
「ね、音紗ちゃんっ!?」
「ほら、逃げるわよっ!!」
「ちょ……うわあああ!!」
ずだだだだーーーと、逃げ出して、そして、新校舎の保健室に入り込むことが出来た。
幸いなことに、まだ保健の先生はそこにいてくれた。
「どうしたの、皆? こんな時間に……」
「この子を助けたので、お願いしますっ!!」
と言いつつ、サナはこっそりと、ぐったりとした生徒へと癒しの力を使う。
「んん……あれ、ここ……保健室……?」
こうして、研究部の面々は、一人の生徒を七不思議の異形から助け出したのだった。
時計台の上でパチパチと拍手を送る、少年がそこにいた。彼らを見下ろしながら、くすくすと笑っている。
「凄いね……やっぱり、凄い力の持ち主だね……サナ」
彼はブレザーではなく、詰襟で黒の学生服を纏っていた。
銀色に輝く髪に、蒼い瞳で眼鏡をかけている。
だが、その輝きはどこか冷たく、生きている人間のものには見えなかった。
そして、若い姿になっているが、その姿は紛れもなく……。
「でも……あれが厄介だな……どうにかできないかな? ねえ、サナ……」
その口元は笑っていたが、その蒼い瞳は何処か、空虚さを感じたのだった。




