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ミッドナイト・リィンカーネーション ~運命に選ばれた彼と恋をして世界が変わりました~  作者: 秋原かざや


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時計台が招く鐘の音 ~高等学校からの依頼

 その依頼は、書類の入った封書として浅樹家に届いた。

 差出人は――市立黒羽高等学校。

「……高校から、直接……か」

 翔は、その書類を確かめるように読み進める。

 内容はひどく事務的だった。

 近頃、放課後から夜間にかけて生徒の体調不良や一時的な行方不明が相次いでいること。

 だが警察沙汰にするほどの証拠はなく、原因も特定できていないこと。

 そして――『専門的な知見を持つ者』による内密の調査を希望する、という一文。

「羅那、お前ならこれをどう読む?」

 翔に尋ねられ、ソファーに座っていた羅那は、翔の持っていた書類のコピーを見ながら答える。

「たぶん、何かしらの『異形』かなと思うよ。妖魔が悪さしたっていう報告もないし……それにミイラとも違う」

「サナは?」

「そう……ですね。すっごく嫌な感じします……こう、おどろおどろしい感じ……なんだろ、ぞわぞわする感じもします。あ、羅那くん、前に行った廃神社のときと似てるかも!」

「ああ、アレね。うん、言われてみれば、そうかもしれない」

 夕食を終えた時間、三人はこうして向かい合って話をしていた。そして……羅那は、父がこの次に何を言うかも、気づいている。

(……絶対コレ、面倒な事、押し付けられそうな気配がする……)

 かといって、拒否権もなさそうなので、何も言わずに静かにしている。気を緩めたらため息が出そうである。

「それで、翔さんは、私達になにをさせたいんですか?」

 ああ、サナ、今はそれを言っちゃダメなやつ!! と、羅那は思ったがもう遅い。翔はニヤッと笑って、こう言った。

「サナ……君は小柄で学生に混じっても問題ないな?」

「??」

 翔の言葉に首を傾げるサナ。それに察した羅那は何か言おうとしたが……。

(待て。ってことは……もしかして……)

 思わず、羅那の喉がごくりと息を呑む。きっとこの次の言葉は。

「お前、学生になれ」

「はいいいいいっ!? いやいや、私、もう大人ですしっ!!」

「じゃあ、そこにある制服を着てみろ。お前のサイズで作ってみたんだ」

「父さん、いつの間に!?」

 思わず、羅那も突っ込んでしまう。

「……じゃあ、ちょっと着替えてきます……絶対、似合わないですよ……?」


 といったのが、数十分前。

「どうだ、羅那。行けるだろう?」

「くっ……なんか悔しいけど、全然問題ないよ。まさか、ここでサナの制服姿を見られるとは……」

「ちょっと、羅那くん! そこで喜ばないでっ!! うわーーん、私、これでも二十歳越えてるのにっ!!」

 可愛らしいブレザーの制服に身を包んだサナを見て、羅那は思わず笑みが零れてしまう。正直言って可愛い。最高ってやつである。

「となると、僕に学生は、流石に無理だと思うけど?」

「ああ、お前は臨時の教師で入れ。丁度、体調を崩した教師が一人出てしまってなぁ。科目は数学だ。お前の得意分野だろ?」

「高校レベルなら、どれでも行けるとは思うけど。それで問題ないよ」

 と、翔と羅那が話を進めている。

「え、羅那くんは先生役なの!! ズルい、私も先生になりたーい!!」

「サナ。教員免許持ってる?」

「えっ……羅那くん、もしかして持ってるの?」

「うん、免許とか検定とかそういうのは、一通りね……で、サナは持ってる?」

「くっ……悔しい……」

 ついでにいうと、サナはそんな免許持っていない。

 そんな二人の横で、翔が付け加えた。

「サナには学生として、学生達の噂を調査して貰いたい。学生達もこの件については口を噤んでいてな。学生同士であれば、何かわかるかもしれない。これは特別任務だよ」

「と、特別任務……わ、わかりました! 私も特別任務、頑張りますっ!!」

 翔に言われて、サナは可愛い制服姿で、びしっと敬礼してみせる。

「……やっぱり、可愛い」

 羅那はそんな可愛いサナを温かい瞳で見守るのであった。



 そして、潜入の日。

「サナ、準備はできた?」

 羅那の耳には、紫のピアスが輝いていた。

「うん、できたよ。どう、可愛い?」

 くるっと回ってみる。ふわりと制服のスカートが揺れ、ちょっとだけ見えそうになった。

「可愛いよ。後もう少しジャンプしてくれたら、更に嬉しかったけど」

「ど、何処、見てるのよっ!!」

 ぽかぽかと、全く痛くないサナのパンチを食らって、羅那はあははと笑っている。

 ちなみに、サナはブレザーの可愛らしい制服だが、羅那はいつもとあまり変わらないスーツ姿だ。流石に胸にあの鳳凰のブローチはつけてはいかないが。

「じゃあ、僕は準備があるから先に行くね。サナは……」

「翔さんが用意してくれる車で向かうよ。放課後は一緒に帰れそうだね」

「ああ。じゃあまた、放課後にね」

 そういって、サナの頬にそっとキスをして、羅那は一足先に自分の車で向かう。

 なお、今回は、長期の調査になりそうなので、現地でマンスリーマンションを借りている。

 もちろん、セキュリティも万全なアサギグループの所有物件だ。

 と、気になって生徒手帳を見た。

「うーんと……はわっ!! ピアスは駄目って書いてある!! ペンダントは書いてないけど……出さないようにしておけばいいかな?」

 前はペンダントの加護がなかったから、いろいろと大変な目にあった。ピアスはともかく、ペンダントは外してはいけない。だから、ペンダントはブラウスの中に隠しておくことにした。そして、仕方ないと、青色と金色のピアスを外していく。羅那の瞳の色と同じで、かつ、特別な魔導具になっているそれを。

「うん、これでよしっ!!」

 そして、準備を整えたサナは、翔の用意した車で学校へと向かったのだった。



「うわあ……なんだか、荘厳な感じ……」

 由緒正しい学校というべきか。かなり、歴史が古そうだ。だが、校舎は真新しく感じる。

「あ、あっちの方に古い校舎もある。そっか、立て直したばかりなんだね」

 なんだか、旧校舎の奥の方が気になった。

「あ、時計台……とっても素敵」

 その時計台を見上げて、素敵だなと思った、次の瞬間。

 突然、ぐらりと地面が揺れた。

 それと同時に、微かに、空気が震えた気がした。

「えっ……これって……」

 その直後に。


 ――キィイイイイインン!!


 何かが共鳴するかのような音と共に。

 突然、時計台の鐘が鳴り始めた。

 ゴーンゴーンと厳かに。


 どさりと、サナはその場で倒れ込んでしまった。

 まるで、何かに意識を奪われたかのように。

 サナは後に、この日の事を後悔することになる。大切なピアスを置いていったことに……。




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