綺麗な夜景と渡された贈り物
羅那はサナを連れて、ドライブへと向かった。
自然豊かな木々が左右を囲む、山の中。
その頂上を目指しているのだと、サナにもわかった。
「羅那くん、この先って……」
「うん、展望台があるよ。綺麗な夜景が見れるんだ」
しばらくして、車は目指していた頂上。展望台が見える駐車場へとたどり着いた。
すいーっと流れるように、羅那は手間取ることなく、鮮やかに駐車をすると、すぐに降りて、サナのいる助手席へと回って、サナを降ろしてくれた。
「あ、ありがと……。ここって、あまり人がいないんだね……」
「今日は、人があまり来ないから」
エスコートする羅那の手を取り、サナは思わず、どきっとする。
さわさわと木々が風に揺れる。
怖くはない。ただ、隣に静かに立っている羅那のことが気になって仕方ない。
「サナ、こっちだよ」
羅那はふんわりと笑みを浮かべると、展望台の一番夜景が見える場所へとサナを連れてくれた。
眼下に広がるのは、車のランプに街のネオンで輝く、色とりどりの美しい夜景。
「……わあ……綺麗……」
その光景に思わず、サナは展望台の手すりから乗り出しそうになって。
「危ないから、もう少し後ろ」
やんわりと、抑えられてしまった。ちょっと過保護みたいと思いながらも、ふと羅那の方を見て。
「綺麗なのはわかるよ。僕も同じ気持ちだから。でも、もう少ししたら、真上も見てごらん」
「えっ……真上?」
思わず、空を見上げる。徐々に暗くなる空に、少しずつキラキラと輝く星が見えてくる。
「はわわ……本当、凄い……綺麗……」
そのまま降って来そうな星空に、サナは思わず、瞳を輝かせながら、ずっと見上げて……。
後ろに重心が移動しているのに気づかず。
足元が疎かになっているのにも、気づかずに。
「あっ……わわ……」
ぽふっと優しく抱きかかえられた。
耳元、すぐ横で聞こえるのは。
「気を付けて? いつも僕がいるわけではないんだし」
どきんとまた、心臓の鼓動が大きくなったように感じた。
「ご、ごめんなさい」
そっと起き上がらせて、羅那はふっと笑みを浮かべた。
「怪我無いなら、それでいいよ」
きちんと、サナを立たせて……けれど、少し緊張した面持ちで、何かを取り出した。
細長い箱。
アクセサリーが入っているというのが、サナにもすぐにわかった。
それを開けようとして、一瞬、手を止めたが。
でも、羅那はそれを開いた。
「ペンダント……?」
可愛いというよりは、特別な何かを感じた。
ペンダントヘッドには、鳳凰を象った美しい細工が施されていた。
よく見れば、羅那の胸にも、同じ鳳凰を象ったブローチをつけていた。
「受け取ってくれるかな? ……君に持っていて欲しいんだ」
「……嬉しい」
そのサナの言葉に、羅那は自然に口元を綻ばせる。
「つけてあげるよ」
「うん」
サナの首にそのペンダントをつけてやる。
「えっとその……似合う?」
「ああ、とっても……だけど、それはあまり人には見せないでね」
「え、どうして?」
くすっと笑って、羅那は続ける。
「どうしても。……君を守るお守りだから、かな?」
「…………!!」
顔を真っ赤にさせながらも、サナはそのペンダントを服の中へと仕舞い込んだのだった。
こうして、サナと羅那のささやかなデートは終わった。
いつものように駅までサナを送る。
「サナ、気を付けて」
「うん、羅那くんも、ね……」
つなぐ手は名残惜しそうに、そっと離した。
羅那はそのまま、サナを見送った。
愛おしそうに、ずっとずっと、姿が見えなくなるまで彼女を見つめて。
そして、ふと、手元に視線を移す。
先ほどの鎖の感触を確かめるように、指を動かしながら。
何も言わずに羅那は、再びエンジンをかけ直すと、ようやく、その場を離れたのだった。




