二人だけのピアスの秘密
久しぶりのカフェデート。
羅那は実家に寄ってから来ると言っていたから、きっと遅くなるんだろうなと思って、気長に待っていた。
「羅那くん、まだかな……」
初めて、デートした場所。そのカフェで、サナは携帯を眺めながら、羅那が来るのを待っていた。
「……ごめん、待たせたかな?」
ふと、後ろから声がかけられる。
「羅那くん! ううん、ちっとも!!」
本当はかなり待っていたのだが、彼が来てくれただけで、その時間はなかったことになる。
羅那は嬉しそうに、瞳を細めて、サナの向かいに座り、コーヒーを頼んだ。
「食べなくていいの? お腹空いてない?」
「んんー今はまだ、いいかな? それよりも、これをサナに渡したくって。はい、少し動かないで」
そして、両耳にぱちんと、音がした瞬間。
サナの体の奥で、微かな光が弾けた。
羅那の魔力と、自分の魔力が――静かに重なった気がした。
「えっ……これって……」
「前のショッピングモールで買ったピアス。あっと、僕もつけるね。お揃い。石の色は違うけどね」
サナのピアスは青と金の石が輝き、羅那のは紫色一色だった。しかも同じ形の、お揃いだ。
「それにね」
そっと羅那がピアスに魔力を込めると。
『聞こえる?』
「はわっ!! き、聞こえたっ!!」
「これが、念話。テレパシーとも言うね。離れすぎると会話できなくなっちゃうけど、万が一の時はこれで分かるよ。それに、サナの魔力なら、僕は何処に居たって分かるから」
「んん? それって、かくれんぼしたら、羅那くんにもろバレってこと?」
「ふふ、内緒」
たぶん、正解だろうなーと思い、じとーっとした目で羅那を見る。
「それはちょっと、やだなぁ……」
「万が一の時しかしないよ。けど、これからはきっと必要になるから、なるべく付けて欲しいな」
「もう……わかったよー。……なんか、ちょっとお腹空いてきた」
「奇遇だね。僕もだよ。何を食べる?」
悪戯な少年のような笑顔で羅那が尋ねると。
「いちごのパンケーキ」
「了解。僕はこのりんごのやつにしようかな……?」
甘いデートはまだまだ、続いて……。
そして、翌日。
「あれ、サナ。ピアスなんて、珍しいわね」
「ふふん、いいでしょ! これ、羅那くんとお揃いなの!!」
「え、お揃い……?」
美咲とサナがそう話している横を、羅那がすっと上司達に囲まれながら、通り過ぎる。羅那の耳にも同じ形のピアスが揺れていて。
「!!!!!」
美咲が言葉を失った。
「ね、形が一緒! いいでしょー?」
「羅那くんの方は、サナの瞳の色だったね。サナのは片方は羅那くんの瞳の色と同じだけど……もう片方は金色? めでたい感じ?」
「ううん、こっちも羅那くんの目の色だよ? 羅那くん、ホントはオッドアイなんだよ。すっごく綺麗な、ね!」
「えっ? だって、社長、両方蒼い目じゃん……?? まあいいや。お互いの色をお互いが持ってるってことなんでしょ……この、この! らぶらぶカップルめー! 式はいつよ?」
「……そういえば、まだ決まってない」
「って、もう、そっちの話も進んでるって言うの!?」
「そういえば、その話もまだだったなー? 今度、翔さんやリィナさんにも聞いてみないと……」
「で、その翔さんとリィナさんとやらは、どなた?」
美咲が尋ねると。
「うん、羅那くんのお父さんとお母さんだよ。すっごく素敵な人! でもね、浅樹家のお披露目パーティーには参加したよ!」
「ちょっ……それって、ほぼ、婚約ってことでしょ!! しかも、相手のお父さんとお母さんを名前呼びってどうよ!!」
「だって、名前呼びの方が若く思われるから、そっちにしてくれって……そういえば、レイさんのコスプレ、いつやるのかな?」
「そこで、新たな人物出さない!!」
「羅那くんのお姉さんだよ。いっつも、海外でお仕事してるから、なかなか会えないんだよね」
「羅那くんの家族って、どんだけーーー!!!!」
と話をしていると、にこにこしている羅那が傍にいた。
「うん、二人して楽しそうに話をしてるね? そろそろお仕事しようか?」
口元は爽やかに微笑んでいるが、その瞳はちっとも笑っていない。
「「はいっ!!!」」
サナと美咲は、びくぅとなって、ようやく仕事に戻っていった。
「もう……家族の話は秘密にしないとダメかな? 恥ずかしすぎる……」
思わず、羅那がそう呟いているのを、吉岡が目撃して、驚いていたのは言うまでもない。




