想い出のカフェであなたと偶然の出会い
その日は珍しく、仕事がいつもより早く終わった。
「どうしよ……この後……」
急にできた余白時間。サナはちょっと戸惑っていた。
日頃から、あーしたい、こーしたいとは思っていたけれど。
「いざ、そうなったら、何も思い浮かばないなんて……!!」
勿体なさすぎる!! サナはちょっとだけ、混乱していた。
と、足を止めたところ。
「あれ、ここって……カフェ?」
あっと、気づいた。ここは初めて羅那と、デートしたカフェだった。
そう気づいてしまったら、自然と足はその中に入って行って……。
窓際の席。
あのとき、羅那と一緒に座った、あの席が空いてたので、そこにしてしまった。
「はうう……来ちゃった……」
けれど、入ってしまったからには……せっかくならと。
目の前に並べられたのは、フルーツフレーバーの紅茶。
それに合わせて、美味しそうなミルクレープもつけてみた。
「はわーん!! 普通のケーキも美味しそう……写真写真」
ぱしゃぱしゃと楽しそうに夢中で写真を撮っていると……。
「えっ……もしかして、サナ?」
後ろから声をかけられた。
その声は男の人の声で……聞いたことのある声で……。
「羅那くんっ!?」
「あ、やっぱり……まさか、またここで会えるなんてね。あ、そっちに移動してもいい?」
にこっと微笑んで、飲んでいたコーヒーと伝票を持って、サナの目の前に座っていた。
――前のデートの時と、同じ。
「背中合わせに座ってたから、気づくのが遅くなったよ」
くすっと笑って、さっきまで飲んでいたコーヒーに口をつけている。けれど、視線は……なぜか、サナの目の前にあるケーキのことを見ていて……。
「……羅那くんも、食べる?」
「あ、さっき、お食事パンケーキ、三つ食べたから、大丈夫」
「……三つっ!?」
「うん、昼食べてなかったから、お腹すいちゃってて……サナはどうして、ここに?」
改めて、羅那に言われて、はわわとしながら、サナは答える。
「えっと……早めにお仕事終わったから、偶然、ここに通りかかって……せっかくだから、頼んでなかったのを頼もうかなって……」
はむはむと、ミルクレープを口に含んで。
「んんん……!! 美味しいっ!! 前のパンケーキも美味しかったけど、ミルクレープも、美味しい!!」
いつになく、幸せそうな顔をして……羅那と目が合った。
羅那も幸せそうな顔を見て……驚いている?
「え、えっと……な、何かついてた、私……??」
「いや、そうじゃなくって……えっと、その……」
口元を手で覆って、少し俯き……頬を染めていた。
「????」
「あまりに、可愛いから……その、びっくりして……」
「はうううっ!!!」
恥ずかしくなって、その後はずっと俯いて食べて……結局、その後のミルクレープの味がわからなくなった。
一通り、目の前のケーキとお茶を食べ終えて。
「あ、そうだ……ねえ、サナ……」
羅那は少し真剣な瞳で、サナを見つめる。
一瞬、また、羅那の瞳が宝石のように輝いたように見えた。
「う、うん……なに?」
「この後、時間あるんだよね? よかったら、ドライブに行かない? 今日は車で来てるんだ」
「ドライブ……羅那くんの車って……」
羅那が視線で窓の外を見る。
「あそこに置いてある、白いランボルギーニ。それが僕の車だよ」
「ら、らんぼる……えっと……」
くすっと笑って、今度は指差して教えてくれた。
「わあ、格好いい……スポーツカー?」
「うんそう。どうかな? けど、嫌なら断ってくれても……」
「ううん、行く……せっかく、誘ってくれたし」
その後のことはよく覚えていない。
いつの間にか、サナの分まで羅那が会計して。
「さあ、どうぞ? 僕のお姫様?」
そんな風に冗談めかして、助手席を開けて、エスコートされて。
車を運転する羅那の隣で、少し上機嫌な羅那の横顔を見つめていたのだった。




