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ディメンション・ノヴァ  作者: 酒本 ナルシー。
4章 動き出す歯車

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チュートリアル 終了

クランハウスは静まり返っていた。

仲間の声が消えたその空間に、ただシオンだけが残されていた。


部屋の中を歩きながら、あの戦いを、あの選択を、何度も頭の中で再生する。

カイ、エルナ――彼らの命を、自分は救えなかった。


「……何が……駄目だった……」


一人呟きながら、机にもたれ、思考の渦に沈んでいく。


『推奨:睡眠を取るように。神経系の限界値に接触しています』


トールの警告は、もはや遠くに聞こえるだけだった。

応える気力すら湧かず、それでも考えるのをやめられないまま、いつの間にかシオンの意識は落ちていた。


――夢。


カイが、何かを叫んでいる。


爆発。血。ブレードの残光。

目の前で、仲間が倒れていく。


「――っ!」


シオンは目を覚ました。


呼吸が荒い。額から汗が滴る。

現実と夢が混ざり、意識が戻るのに少し時間がかかった。


シオンのUIが起動、画面に表示された名は――セナ。


《今日迎えに行くわ。準備を整えておいて》


その一文だけで、全てを思い出す。

あの白衣の女。実験施設。記憶に染みついた冷たい空気。


「……また、あそこに戻るのか」


呟きながら制服を整え、クランハウスを出る。


登校途中、生徒たちが自然と道を空ける。

視線を合わせようとせず、シオンを“何か”を見るような目で遠巻きに見ていた。


――怖がられている。


守ったはずなのに。仲間を失ったのに。


それでも、今は立ち止まれない。

教室に着くと担任がすぐに声をかけてきた。


「シオン。今すぐ理事長室へ」


そのまま理事長室へと足を向け、扉を開くと、

そこにはやはり、セナが立っていた。


冷たく、どこか楽しげに彼女は言った。


「遊びは終わり。ここから本番が始まるのよ」


シオンは何も言えなかった。思考が追いつかず、ただその言葉を受け入れるしかなかった。


「……何をする気だ」


やっと出た言葉に、セナは微笑んで言う。


「安心して。あなたのお友達、一人連れて行くから。寂しくないでしょ?」


その言葉に、シオンは一瞬期待を抱く。

リリアか、フラワか。あの二人なら、まだ……


だが、セナは冷淡に切り捨てた。


「あの二人はもう“使い物にならない”わ。精神も体もボロボロ。あなたには相応しくないの。もう、忘れなさい」


心臓を握り潰されるような感覚。

言葉が出ない。悔しさも、怒りも、喉まで込み上げるのに、声にできなかった。


その日、世界の秩序は静かに、しかし確実に揺らぎ始めた。


速報が流れたのは、16時39分。

最初にその名を報じたのは軍事関連の非公開通信網だった。

だが、情報はあっという間に拡散した。


「ジュディキウム・ヴェナトールが戻った」


数十年前、存在そのものが神話扱いされていた、最強級AI。

国家や企業が資源と叡智を総動員しなお勝てなかった“世界の狩人ヴェナトール”。

圧倒的戦力を持ち、“抑止力”の象徴としてあらゆる記録から消された存在。


その名が、再び現代に姿を現した――。



---


各国首脳は緊急会議を招集。

軍事衛星は即座に再配置され、

大手企業は投資の軸を「軍事・防衛」へシフトし始める。

情報機関は“再臨”の経緯を探り、各陣営のスパイたちが暗躍を始めた。


「世界の力関係が塗り替えられるぞ……」


そう呟いたのは、某国家の参謀総長だった。


そして、あるキーワードが同時に浮上する。


“シオン”――アストラル・ノヴァ・アカデミー所属、ジュディキウム・ヴェナトールとの同調反応を示した存在。



---


アカデミーへの問い合わせが殺到する。

理事長室は完全封鎖。セナの名が、各国機関のリストに急浮上した。

だが、アカデミーは沈黙を貫く。


この瞬間から、少年シオンの名は――

世界の最前線に踊り出た。


それが意味するものはただ一つ。


「選ばれた者と、選ばれなかった世界の、戦争の始まり」


ジュディキウム・ヴェナトール。

それは神の裁きではない。

“人類そのものを見定める刃”。


そして今、世界はその刃の上に立たされていた。



---


静かな病室。窓から差し込む柔らかな陽の光が、白いカーテンを優しく揺らしている。

リリアはその光の先を見つめるように、ただじっと外を見ていた。

表情は変わらず、まるで心がどこか遠くへ行ってしまったかのようだった。


扉が静かに開き、シオンがそっと足を踏み入れる。

リリアの横に立つと、言葉を選ぶように一拍、息を整えた。


「……ごめんなさい」


その言葉には後悔と無力さ、そして決意が込められていた。

ゆっくりと手を伸ばし、リリアをそっと抱きしめる。

温もりは返ってこない。それでも、抱きしめた腕には確かな重みがあった。


「……行ってきます」


短く、でも力強くそう告げて、シオンは立ち上がった。

部屋を出ようと振り返ったその時、

リリアの指が、シオンの服の裾をそっと掴んでいた。


言葉はない。

ただ、あの無表情のまま、何かを訴えるように。

「行かないで」と、心の中で叫んでいるように思えた。


シオンは数秒、その手元を見つめた後、

その手を優しく包み、そっとほどいた。


「……ありがとう」


小さく、誰にも聞こえないほどの声でそう呟き、

シオンは静かに部屋を後にした。


扉の閉まる音だけが、静寂の中に響いた。


最後まで読んでいただいてありがとうございます。

ここで完結となります。

作者自身初めての作品となりまして至らぬ点は大変多くあったと思われます。

小説家になろう様に登校する前、他の投稿サイトに少し前投稿していましたが、全く読んでいただけなかっのですが、投げやりでなろう様に投稿した結果、たくさんの方に読んで頂けたことをとても嬉しく思っています。

投稿してみての感想としては、早い段階でブックマークを三人ほど登録していただいて、評価もいただいて、好きで読んでいただいている方にも、なんとか完結まで持っていこうと努力致しました。

PV数も次第に増えていき、初めての作品としてはかなり満足しています。

最終的には投稿すると、10数人の方が、すぐに読みに来てくれることが、とてもモチベーションにつながりました。

おかげさまで、予想よりかなりいい反応をいただき、大変喜ばしく思おます。

4月19日現在、本当に最後まで読んでいただいてありがとうございました。引き続き第二部読んで頂いたら嬉しいです。

今第二部のタイトル変えよか悩んでいますw

ん〜どーしよっかなー?

それと並行し新作も同時に投稿していこうと思います。

2作同時に作っていくつもりなのでディメンション・ノヴァの投稿が、毎日できなくなると思いますが御陵ください。全く違う新作も興味のある方は読んでいただけると嬉しいです。

これからも酒本ナルシーをよろしくお願いたします!


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