46話 アカデミー襲撃 3
外へ出ようとした、その瞬間だった。
――ズドン!
突如、一直線の閃光が横から走り、フラワの機体を正面から貫いた。機体の左肩から腹部にかけて焼け焦げるように穿たれ、青白い煙が上がる。
「きゃああっ!!」
通信越しにフラワの悲鳴が響く。
状況が把握できず、一瞬その場が凍りついた。
「フラワ――ッ!」
リリアがすぐさま叫ぶ。「シオン!フラワを連れてすぐに後退して!今すぐ!」
「っ、了解ッ!」
シオンは即座にスラスターを全開にしてフラワの機体のもとへと飛ぶ。が、もう一発、赤い閃光が空間を引き裂くように放たれた。
今度こそ、フラワの機体に直撃する――そう思われた瞬間、
「間に合ったかッ!!」
鋼の巨躯が突如割り込んだ。
カイの修理中の機体。そのシールドがレーザーを弾き、空中に火花が散る。
続いて、別方向から2機が現れる。
「フラワ、よく頑張ったわね。ここからは任せて」エルナが落ち着いた声で言う。
「てめぇ……よくも俺の後輩に手ぇ出しやがったな」
ジークの声は怒気を含み、「覚悟できてんだろうな」
「カイ、あなたたち大丈夫なの!?」リリアが叫ぶ。
「問題ない」カイは言い切った。「これでも、3年ランキング1位だ」
そして、リリアに一言。「行くぞ、リリア」
「わかった……でも、無理はしないで」
次の瞬間、エルナの声が割り込む。
「レーザーの軌道、解析完了。あれ……光学迷彩のステルス機体よ」
彼女が座標を指定し、手持ちの拡散ビームを放つ。
空間がまるで波打つように歪み、その中にうっすらと黒い影――機体らしき輪郭が浮かび上がる。
「見えた……あれが敵の正体……!」
完全ステルス型の刺客。
アカデミーを襲った正体不明の敵。その一角が、ようやく姿を現した――。
浮かび上がった影は、再び空間に溶けるように消えた。
「視認不能、再ステルスか……!」
カイが周囲を警戒するが、気配はまるで掴めない。
「やっぱり……このタイプ、まともにセンサーに映らない」
エルナの声には焦りが滲む。「動くたびに光学屈折率が変化してる。位置が定まらない……!」
ステルス機の動きはまるで幽霊。どこから攻撃が飛んでくるのか、誰も読めない。
一点に意識を集中すれば、もう一方から音もなく襲ってくる。全方位が死角だ。
「……っ、後ろか!」
ジークが振り向いた瞬間、鋭い閃光が走る。
「ジークッ!!」
肩口から機体が貫かれ、爆発音と共にジークの機体が崩れ落ちた。煙の中から脱出ポッドが射出される――が、戦線を離脱せざるを得ない。
「ちくしょう……クソッ……!」
「くっ……!リリア、フォローするわ!」
エルナが前に出た瞬間、別方向からスナイパーのような超精密射撃。
「……えっ」
直後、彼女の機体のコクピット周辺が蒸発するように焼かれる。
「エルナあああああっ!!」
カイの怒声が響いた。目の前で仲間を、何もできずに失う。怒りに任せ、カイが猛然と敵の方向へ突進する。
「姿を見せろ……貴様ああああ!!」
全出力をブーストに注ぎ、斬撃を叩き込む――その刹那。
斜め上から鋭い一閃。
レーザーがカイの頭部センサーを斬り裂き、そして胸部を貫いた。
「……リリア……すまん……」
機体が爆発する寸前の通信。最後の言葉を残して、カイの機体も沈む。
残されたのはリリアただ一人。
だが、その顔に怯えはなかった。怒りと、悲しみと、強い覚悟が宿っていた。
「……この子たちを……これ以上、誰も失わせない!」
フラワに通信を入れる。「すぐに下がって!あなたはまだ――」
その瞬間、再びステルス機の殺意が迫る。
「しま――!」
一発のレーザーがリリアの機体を狙い、放たれた。
――だが、それは命中することはなかった。
「間に合え……っ!!」
別方向から凄まじいブースト音とともに、新たな機体が割り込む。
レーザーは防がれ、煙の中からその機体が現れる。
桎梏のフレーム。洗練されたシルエット。Dクラスには不釣り合いな、異質な力を纏った専用機体――シオンの機体がそこに立っていた。
「リリアは俺が守る。もう、誰もやらせない!」
背後でフラワの機体が、ゆっくりと後退を始める。
「トール、戦闘モード。敵の捕捉と、弱点解析開始」
《了解。AI兵器との交戦モード、全出力展開。》
最後の希望が、今、戦場に降り立つ。
まだ続きます。




