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ディメンション・ノヴァ  作者: 酒本 ナルシー。
4章 動き出す歯車

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43話 ネブラ・フレア

《ネブラ・フレア》、出撃。



シオンの漆黒の近接型機体が先頭に立ち、リリアの中距離支援型、そして──

最後方にはフラワの遠距離砲撃機が控えていた。彼女の機体は大型の可動式レールキャノンと、索敵補助ドローンを複数搭載した支援特化型。機動力は低めだが、その代わり射撃精度と継続支援能力に秀でている。


試合開始のアナウンスが場内に響く。


「クランバトル第一試合──《ネブラ・フレア》 対 《クロム・スレイ》、開始!」


敵は重装突撃型を主体としたパワー編成。その中央には重装砲撃機「バスタード・ベルク」が鎮座し、周囲をガードタイプが固める布陣。


「前に出る、支援頼お願いします!」

シオンが一声かけ、ブースト全開でフィールドを駆ける。


「了解、シオン。敵タンク、ロックオン完了──撃つよ」


フラワの声が冷静に響くと同時に、後方から一閃の閃光。彼女のレールキャノンが発射され、正確に敵のガード機体の脚部を破壊。機動不能に陥った敵が慌てる。


「ナイスカット、フラワ!」


「次、三秒後に追加砲撃いける。動きを止めてくれれば狙えるわ」


リリアは中距離から牽制射撃を続けつつ、味方の位置と敵の遮蔽の動きを読み、支援ポイントを指示。シオンは指示に合わせて動き、敵の死角を突いて一機ずつ仕留めていく。


「シオン、右上! 高架にもう一機いる!」


「見えた──!」


トールの反応支援とフラワの索敵ドローンが連動し、見えない敵の配置すらも把握できていた。シオンは最短ルートで高架に跳び上がり、瞬時にブレードで敵を切り伏せる。


──そして残るは敵隊長機──バスタード・ベルク。


重装砲撃型の巨体が、フラワの位置を正確に捕捉する。


「やばっ、こっち来るかも……!」


「逃げなくていい、俺が行く!」


シオンの機体が動いた瞬間、トールの声が響く。


『ちょうどいい。新型の挙動試してみよう、シオン。』


「今? 実戦中だぞ……」


『だからこそ、だ。君がこの機体を"着る"ように戦うなら、戦場が最適だ』


一瞬、躊躇しかけたが──シオンは笑った。


「わかった。お前に任せる」


トールが即座に動作モードを切り替え、内部駆動が異音を立てて変化する。


『まずは、近接補助ユニット〈エッジ・ラン〉展開。反応加速モード──オン。』


その瞬間、シオンの機体が目に見えて速くなる。

周囲の残骸を蹴る音が連続し、地形を滑るように接近するその姿は、まるで「斬るための弾丸」だった。


だがそのとき、敵砲塔が正面を向く。


「前に出すぎ──シオン、下がって!」


リリアの声と同時に、青白いミサイルが軌道を描いて飛来する。

リリアの機体が撃ち出したホーミングジャマー弾がバスタード・ベルクの照準システムを一時的に狂わせる。


『ナイス、リリアさん!』


「次の射線確保、5秒後。フラワ、右に回って」


「了解、位置取り修正中!」


その間にも、トールは機体の戦闘データをリアルタイムで調整していた。


『次、斬撃フォース強化。右腕、共振モードで割り込み!』


「やれるか?」


『この機体なら、やれる』


一撃。

ブレードが青白い閃光を放ち、バスタード・ベルクの右砲塔を切断。


だがそれでも、敵は倒れない。反撃の主砲がシオンに迫る。


『次はカウンター、行くぞ! 換装モジュール試す──機体背面、リリース』


ブースト用パーツが展開し、短時間だが異常な加速力が発生する。


その一瞬を使い、砲撃の軌道をずらして強引に背後へ回り込む。


「今だ、フラワ!」


「狙い、OK──射出!」


フラワのレールキャノンが放たれた閃光が、バスタード・ベルクのバリアを根こそぎ削り取る。


敵機が沈黙する中、リリアの中距離支援砲が敵残党の撤退路を制圧し、勝敗は決した。


「敵隊長機、撃破確認。ネブラ・フレア、勝利──!」


静かに武器を下ろしたシオンは息を整えながら背後を振り返る。

フラワとリリアが、それぞれのモニター越しに微笑んでいた。


「うまくいったね。連携、完璧だったよ」


「……悪くない。けどまだまだ詰める余地はある」


そして、その声の隙間にAIトールが満足そうに呟いた。


『新たな機体──想定以上。まだ試したいモード複数ある、シオン。』


シオンは肩で笑いながら、背後の煙と残骸を見つめてつぶやいた。


「次の戦いも、派手になりそうだな」


第1試合が終了し、試合会場の照明が落ち着きを取り戻すころ。

ネブラ・フレアのメンバーたちは無事に帰還し、控え室に戻っていた。


モニターには自分たちの試合のダイジェスト映像が流れている。派手な爆発とブーストの軌跡、精密な連携──そして最後の決着の瞬間。

それを見ながら、リリアがぽつりと口を開いた。


「……まあ、なんとか形にはなったかな」


「上出来でしょ? 初戦でこれだけ動けたら」と、フラワが椅子にもたれて笑う。


汗をぬぐいながら、シオンも静かに頷いた。

「みんなのおかげだよ。俺一人じゃ絶対無理だった」


その言葉に、リリアが少しだけ照れたような笑みを浮かべる。


「……でも、あなたの動きは想像以上だったわ。専用機と、ちゃんと噛み合ってる」


「シオンくん、途中で変な動きしてたでしょ。あれ、わざと?」

フラワが茶化すように聞けば、シオンは少しだけ困ったように笑う。


「……あれは、トールがいろいろ試してて。俺も、ちょっと楽しくなっちゃって」


「はは、そういうのいいね。勝って和むって、チームって感じする!」


リリアも目を細めて頷いた。

「次もこの調子でいきましょう。……まだまだ、これからなんだから」


軽く手を合わせるように拳を突き出すリリア。

それにフラワとシオンも自分の拳を重ねた。


──この日、ネブラ・フレアという名のクランが、確かに“戦った”証を残した。



お疲れさまでした。

いつも読んでいただいてありがとうございます。

♪次も頑張ります♪

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