43話 ネブラ・フレア
《ネブラ・フレア》、出撃。
シオンの漆黒の近接型機体が先頭に立ち、リリアの中距離支援型、そして──
最後方にはフラワの遠距離砲撃機が控えていた。彼女の機体は大型の可動式レールキャノンと、索敵補助ドローンを複数搭載した支援特化型。機動力は低めだが、その代わり射撃精度と継続支援能力に秀でている。
試合開始のアナウンスが場内に響く。
「クランバトル第一試合──《ネブラ・フレア》 対 《クロム・スレイ》、開始!」
敵は重装突撃型を主体としたパワー編成。その中央には重装砲撃機「バスタード・ベルク」が鎮座し、周囲をガードタイプが固める布陣。
「前に出る、支援頼お願いします!」
シオンが一声かけ、ブースト全開でフィールドを駆ける。
「了解、シオン。敵タンク、ロックオン完了──撃つよ」
フラワの声が冷静に響くと同時に、後方から一閃の閃光。彼女のレールキャノンが発射され、正確に敵のガード機体の脚部を破壊。機動不能に陥った敵が慌てる。
「ナイスカット、フラワ!」
「次、三秒後に追加砲撃いける。動きを止めてくれれば狙えるわ」
リリアは中距離から牽制射撃を続けつつ、味方の位置と敵の遮蔽の動きを読み、支援ポイントを指示。シオンは指示に合わせて動き、敵の死角を突いて一機ずつ仕留めていく。
「シオン、右上! 高架にもう一機いる!」
「見えた──!」
トールの反応支援とフラワの索敵ドローンが連動し、見えない敵の配置すらも把握できていた。シオンは最短ルートで高架に跳び上がり、瞬時にブレードで敵を切り伏せる。
──そして残るは敵隊長機──バスタード・ベルク。
重装砲撃型の巨体が、フラワの位置を正確に捕捉する。
「やばっ、こっち来るかも……!」
「逃げなくていい、俺が行く!」
シオンの機体が動いた瞬間、トールの声が響く。
『ちょうどいい。新型の挙動試してみよう、シオン。』
「今? 実戦中だぞ……」
『だからこそ、だ。君がこの機体を"着る"ように戦うなら、戦場が最適だ』
一瞬、躊躇しかけたが──シオンは笑った。
「わかった。お前に任せる」
トールが即座に動作モードを切り替え、内部駆動が異音を立てて変化する。
『まずは、近接補助ユニット〈エッジ・ラン〉展開。反応加速モード──オン。』
その瞬間、シオンの機体が目に見えて速くなる。
周囲の残骸を蹴る音が連続し、地形を滑るように接近するその姿は、まるで「斬るための弾丸」だった。
だがそのとき、敵砲塔が正面を向く。
「前に出すぎ──シオン、下がって!」
リリアの声と同時に、青白いミサイルが軌道を描いて飛来する。
リリアの機体が撃ち出したホーミングジャマー弾がバスタード・ベルクの照準システムを一時的に狂わせる。
『ナイス、リリアさん!』
「次の射線確保、5秒後。フラワ、右に回って」
「了解、位置取り修正中!」
その間にも、トールは機体の戦闘データをリアルタイムで調整していた。
『次、斬撃フォース強化。右腕、共振モードで割り込み!』
「やれるか?」
『この機体なら、やれる』
一撃。
ブレードが青白い閃光を放ち、バスタード・ベルクの右砲塔を切断。
だがそれでも、敵は倒れない。反撃の主砲がシオンに迫る。
『次はカウンター、行くぞ! 換装モジュール試す──機体背面、リリース』
ブースト用パーツが展開し、短時間だが異常な加速力が発生する。
その一瞬を使い、砲撃の軌道をずらして強引に背後へ回り込む。
「今だ、フラワ!」
「狙い、OK──射出!」
フラワのレールキャノンが放たれた閃光が、バスタード・ベルクのバリアを根こそぎ削り取る。
敵機が沈黙する中、リリアの中距離支援砲が敵残党の撤退路を制圧し、勝敗は決した。
「敵隊長機、撃破確認。ネブラ・フレア、勝利──!」
静かに武器を下ろしたシオンは息を整えながら背後を振り返る。
フラワとリリアが、それぞれのモニター越しに微笑んでいた。
「うまくいったね。連携、完璧だったよ」
「……悪くない。けどまだまだ詰める余地はある」
そして、その声の隙間にAIトールが満足そうに呟いた。
『新たな機体──想定以上。まだ試したいモード複数ある、シオン。』
シオンは肩で笑いながら、背後の煙と残骸を見つめてつぶやいた。
「次の戦いも、派手になりそうだな」
第1試合が終了し、試合会場の照明が落ち着きを取り戻すころ。
ネブラ・フレアのメンバーたちは無事に帰還し、控え室に戻っていた。
モニターには自分たちの試合のダイジェスト映像が流れている。派手な爆発とブーストの軌跡、精密な連携──そして最後の決着の瞬間。
それを見ながら、リリアがぽつりと口を開いた。
「……まあ、なんとか形にはなったかな」
「上出来でしょ? 初戦でこれだけ動けたら」と、フラワが椅子にもたれて笑う。
汗をぬぐいながら、シオンも静かに頷いた。
「みんなのおかげだよ。俺一人じゃ絶対無理だった」
その言葉に、リリアが少しだけ照れたような笑みを浮かべる。
「……でも、あなたの動きは想像以上だったわ。専用機と、ちゃんと噛み合ってる」
「シオンくん、途中で変な動きしてたでしょ。あれ、わざと?」
フラワが茶化すように聞けば、シオンは少しだけ困ったように笑う。
「……あれは、トールがいろいろ試してて。俺も、ちょっと楽しくなっちゃって」
「はは、そういうのいいね。勝って和むって、チームって感じする!」
リリアも目を細めて頷いた。
「次もこの調子でいきましょう。……まだまだ、これからなんだから」
軽く手を合わせるように拳を突き出すリリア。
それにフラワとシオンも自分の拳を重ねた。
──この日、ネブラ・フレアという名のクランが、確かに“戦った”証を残した。
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