41話 専用機
朝日が差し込むクランハウス。
シオンはすっきりと目を覚ました。昨夜の眠りは深く、身体の感覚がいつもと少し違うような気がする。けれどそれは不快なものではなく、むしろ冴えているとすら思えるほどだった。
「今日は……なんか調子いいな」
思わずそう呟きながら身支度を整えると、UIに新着通知が届いていることに気づいた。
差出人は、白衣の女性──セナからだった。
> 「今日、あなたの専用機が届くわ。本当は立ち会いたいけど、どうしても手が離せなくて…。
最終調整が終わるまでは起動できないから、それまで我慢してね」
そのメッセージの添付ファイルには、機体に関する情報が詳細に記載されていた。
機体名はまだコードネーム段階だったが、その仕様は明確だった。
シオンが戦闘時、とくに近接戦闘において異常な身体能力を発揮することから、構造はスピードと反応性を最大限に引き出す設計にされていた。
さらに、AIの先述処理と完全連動する、特殊なOS構成。
シオンはその設計思想を読み進めるうち、胸が高鳴っていくのを止められなかった。
「これが……俺の機体か」
その後、クランハウスのリビングで再びリリア、そしてフラワとミーティングが行われた。
シオンの機体が近接特化と知ったリリアは、少し表情を曇らせる。
「汎用型か遠距離でバランスを取ってくると思ったんだけど……ちょっと編成を見直さなきゃね」
フラワも、自身と同じく前線向きの機体を持っているだけに、苦笑いを浮かべながら言った。
「前に出るタイプがふたりって……派手すぎるかもね」
そこでリリアがふと提案する。
「フラワ、今回の戦術では、シオンのサポートに回ってもらえない?」
「……え~っ、後ろかぁ」
不満げに口を尖らせるフラワだったが、今回のクラン参加はあくまで一時的なもの。無理にお願いしている立場でもある。
「……まぁ、今回は我慢しとく。どうせすぐ前に出るチャンスも来るしね」
リリアはその反応に少し微笑みつつ、シオンへ目を向けた。
「シオン、あなたがこのクランの最大火力になる。私とフラワが後ろから支えるから、思いっきり暴れて」
突然の大役に、シオンは少し緊張した様子を見せたが──うなずいた。
「わかりました。……やります」
フラワはUIを操作しながら、少し呟く。
「たぶん間に合わないけど、アセンブルの変更、上に打診しとくよ。少しでも最適化したいしね」
そして──
ついにシオンの専用機が到着する。
アカデミー機体格納庫搬入口に、大型トレーラーが静かに滑り込んできた。
その荷台には、漆黒と深紅を基調とした流線型の機体が固定されていた。
その姿は他のどの機体よりも鋭く、しなやかで、まるで獣のような気配を放っていた。
「これが……俺の専用機……」
初めて目にするはずなのに、シオンはなぜかその機体に懐かしさのようなものを覚えた。
機体はまるで生きているかのような存在感を持ち、どこか「自分の一部」のように感じられた。
載る──のではない。
「使う」のではなく、「一体になる」。
それは武器のようで、しかしそれ以上の何かだった。
細く鋭いシルエットに隠された高出力スラスター。
両腕部に内蔵された展開式ブレードユニット。
背部には余剰エネルギーを直接転換する特殊コアが存在し、機体全体が接近戦と瞬間加速に特化していることが明らかだった。
シオンは無意識に手を伸ばしていた。
そのとき、背後から声がかかる。
「──やっと来たね、シオン」
振り向くと、リリアがいた。
リリアは機体を見て驚いた様子を見せながらも、静かに頷いた。
「これで、ようやく全てが揃った」
シオンはリリアの言葉に小さく頷いた。
その背後、少し離れた場所でフラワが腕を組んで笑っている。
「うん、悪くないじゃん。その姿のまま突っ込めば、注目の的だよ」
そして──
時は流れ、ついにクランバトル当日が訪れる。
クラン《ネブラ・フレア》の三人は、それぞれのポジションに合わせて最終調整を行いながら、会場へと向かう。
アカデミー全体が熱気に包まれる中、新たな戦いの幕が、いま開かれようとしていた。
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次回も宜しくお願いします。




