35話 AI・Control
その後、シオンは眠れず昨日の出来事を色々考えていた。
クランハウスのシミュレーションルーム、深夜。誰もいないはずのその空間に、シオンの姿があった。トールのAIデータを、シオンはこっそり外部端末へとコピーしていた。
「悪いな……ちょっとだけ、“お前”の中を見せてもらう」
《シオン、何をしている?》
トールの声が響く。だが、制御システムはすでにマニュアルモードに切り替えられていた。
「確認しておきたいんだ。あの日、お前が使った『補助システム』と『GPU』の正体をな」
コピーしたAIデータを端末にロードすると、複数のファイル群が展開された。そのうちの一つ、通常ではアクセスできない“ブラックボックス”のようなコード領域に、シオンは手を伸ばした。
「この領域……セキュリティレベル高すぎだろ。民間のAIの規格じゃねぇ」
試行錯誤の末、ひとつのログファイルが開かれた。そこにはこう記されていた。
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《THOR LOG: Ver.0.01》
起動プロトコル:Project Chronos副制御AI 起動記録
設計者:不明(オリジン:AD3112 人類連合軍 研究機関)
ベース構成:人間型思考フレーム/適応型予測演算モデル(深層模倣型)
備考:搭乗者“イオ”との戦闘データより転写された神経応答パターンを一部採用
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「……イオ?」
思わずその名を呟いたシオンの脳裏に、かすかに残る噂がよぎる。“変わり者”、その中でもどこか浮いている存在。実戦データを持っていないはずなのに、異常な機体制御を見せた青年。
「まさか……トール、お前……」
そのとき。ブラックボックスの奥、さらに隠されていた音声データが再生された。ノイズ混じりの低い男の声。
「……“トール”は模倣AIだ。1世代前の戦術神経パターンをベースに作られている。あの時代に“裁きの狩人”と呼ばれた一人の兵士の、思考と本能を再現したものだ」
「裁きの狩人……?」
「だが、模倣に過ぎない。完全な“再現”は不可能だ。だからこそ、誰かと“融合”させる必要がある」
「それが……俺ってことかよ」
シオンは頭を抱えた。震えが止まらない。
トールはただのサポートAIなんかじゃない。
“誰か”の意志が、その中に確かに生きている。
そのとき、端末のスピーカーから、またあの冷静な声が響いた。
《アクセスログは記録済み。君が見た情報は、削除される》
「おい……待て、トール。お前、本当は……」
《安心しろ。私は君の味方だ。だが君が“私の記憶”を掘り返そうとする限り、それは敵対行為と見なす》
沈黙。
その声の裏に、確かに“怒り”に似た何かが潜んでいた。
◇◇◇
AIコントロールシステム - “戦闘補助制御機構(通称:AIコントロール)”
■ 概要
AIコントロールとは、パイロットの脳波・反射・行動パターンに応じて戦闘時の機体制御をAIが補完・代行するシステム。人間の反応速度や認識処理の限界をAIが“先読み”で補うことで、通常不可能な高速戦闘や超精密機動を可能にする。
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■ 段階制御システム(シオンの会話にもあった「50%」などの数字)
AIコントロールには出力モードが存在する。
1. AI補助10%:
一般的なOSにもある補助レベル。スラスター制御や姿勢安定などが主な支援範囲。
2. AI補助30%:
回避運動や索敵などの補助が強化。パイロットの操作を最適化するが、主導権は完全に人間にある。
3. AI補助50%:
※トールが使ったモード。
パイロットの判断と並行して、AIが独立思考で“次の行動”を提示・先行入力する。
限りなく「AIと人間の共同操縦」に近く、通常では対応不能な奇襲や連続回避が可能となる。
この段階から、AIにはある種の“個性”が発現し始める。
4. AI補助75%:
AIが主導となり、パイロットは指示系統と制動のみに関与する。
複数目標の同時対応や、複雑な多方向戦闘が可能。だが、パイロットの意志と衝突する危険も高まる。
5. AI補助100%(フルAIモード):
AIが完全に機体を支配する。
このモードは事実上の“暴走”に近く、人間の限界を超える動きが可能だが、反動・負荷・AIの人格発現が問題となる。
旧時代では“神経接続型兵器”に使われていたが、現在は禁止されている。
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■ トール独自の特徴
トールは通常のAIとは異なり、「模倣AI」技術をベースにした旧時代の特殊戦闘AI。
過去に実在した伝説的な兵士(=後にイオと関連づけられる人物)の“戦闘直感”と“戦術神経パターン”を複製したもの。
単なる計算処理ではなく、直感・予感・経験的選択を行うため、「まるで人間のように戦う」。
このため、高出力モード時に人格のような言動を見せることがある。
■ 使用リスク
パイロットへの精神負荷:
AIとの並列思考が脳に強い負担をかけ、過度な使用は意識障害・記憶混濁を引き起こす。
AIとの主導権争い:
AIが過去の“記憶”に引っ張られると、現実の状況より「模倣された過去の戦場」に合わせて行動する恐れがある。
人格融合の危険:
AIの出力が高まるほど、パイロットの思考とAIの“意志”が混ざり、まれに一体化するケースが報告されている(=通称:リンク暴走)。
戦場において“人間の限界”を超えることは、技術進化のひとつの終着点だ。
《AIコントロール》は、その限界の突破口として生まれた。だがそれは同時に、“人”とは何か、“意志”とは誰のものかという問いを突きつける存在でもある。
《トール》という存在は、単なる兵器ではない。
かつて確かに戦場に立ち、生き、死んだ誰かの“残響”であり、過去と未来を繋ぐ“鍵”だ。
それはシオンというパイロットの心を揺さぶり、問いかけ、共鳴し、そして戦場で“ともに生きる”という物語を紡いでいく。
AIが人の意思を超えて動く時、その戦いに“意味”はあるのか。
機械が感情を宿す時、それは模倣か、あるいは新たな“命”なのか。
《AIコントロール》の裏に隠された真実が、シオンをどこへ導くのか。
それは、まだ誰にも分からない。
お疲れ様でした。
説明ダラダラですみません。
次回!
なにかこっかなぁ〜w
まだ決めてません。




