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ディメンション・ノヴァ  作者: 酒本 ナルシー。
3章  信頼と疑念

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33話 異形 ― クロノマタ出現

「シオン、警告。こちらをロックしている」

シオンのUIに、冷静なトールの声が響く。


「……は? こんな距離で? もうロックされてんのかよ」

驚きと焦りを隠せずにモニターを見るシオン。


「当たり前だ。さっきまでのオートマタとは格が違う」

その言葉と同時に、クロノマタと呼ばれる人形兵器が両腕から長距離レーザーを放った。


「来るぞ!」

トールの指示で機体が自動的に急回避。シオンはかろうじて回避に成功した。


だがその直後、エルナの機体が――


「うそ……っ!」

レーザーが直撃し、エルナの機体の頭部が吹き飛ぶ。警告音が鳴り響く中、彼女はかろうじて機体を動かそうとあがいていた。


「エルナ!」

リリアがシオンのカバーに入りつつ、仲間の異常に気づき、即座に前へ。


「作戦中止! 全員、退避に移れ!」

カイの命令が飛ぶ。


だが、遅かった。


2機のクロノマタが音もなく、高速で接近。


ジークがすぐに応戦に向かうが――

「速……っ!」

意思を持ったような動きに翻弄され、両腕を掴まれ、ねじ切られる。ジークの機体はその場で動かなくなった。


「ジーク!」

フラワがその惨状に目を見開き、恐怖で身動きが取れなくなる。


『リリア、フラワを頼む』

カイの通信。


「了解。フラワ、下がって!」

リリアがフラワの援護に向かう。その間、カイがクロノマタと正面から交戦を開始。


「はっ、動きが……読めない……っ」

リリアは援護しながらもカイの窮地に気づき、すぐに彼の元へ戻る。


3年目エリート二人 vs クロノマタ二機。

しかし、カイの機体は激しいダメージを受けていた。バリアが消失し、コクピットが狙われる。


「カイッ!」

リリアが飛び込もうとするが、すでに余裕はない。


「こちらも参戦する」

突然、トールが言った。


「は? リリアが前に出るなって言ってたろ!」

「久しぶりの感覚だ……」

どこか嬉しそうな声音に、シオンは焦る。


「AIコントロール50%。GPUおよび補助システム起動」

「おい待てトール! ふざけ――!」


トールの制御下で、シオンの機体が自動起動し、戦線へ突入。


クロノマタの二機が、即座に目標を変更。両腕から、再びレーザーが放たれる。


「未来予測起動。思考加速、開始」

トールの声と同時に、シオンの機体がまるで意思を持ったように滑らかに動き、回避していく。


「近接戦モード、展開」

機体の脚部からブレードが射出され、装備される。


クロノマタ1機が高速で接近――


突きが来る。回避。左腕の薙ぎ払いも、ブースターで空中回避。


そのまま急接近し、ブレードで本体を切断――!


が、それは囮だった。もう1機が至近距離からビームを発射。


「やば――!」

だが、機体は信じられない速さでそれをも回避。


しかし――


「ブースター、限界超過……っ!」

爆発音。推進器の一つが吹き飛ぶ。


「機体性能、最低クラス。これでは話にならん」

「言い訳すんな!」

だが、制御不能に近づいていく機体。


その瞬間、リリアの機体が間に入る。


ビームは逸れ、クロノマタが動きを止める。


そして――

まるで何かの命令を受けたかのように、2機はそのまま戦場を離脱していった。


残されたのは、傷ついた仲間と、焦げた大地、そして――

異質な“恐怖”だった。


沈黙が戦場に降りた。


風の音すら止まったように感じられる中、シオンは息を切らしながらブレード体制を維持していた。


「……なんでだ。あいつら、なんで引いた……?」

トールの返答はない。まるで分析中かのように沈黙を守っていた。


「シオン! 無事!?」

リリアの声が通信に飛び込んでくる。息を荒くしながらも、彼女は何とか冷静を保っていた。


「ああ、なんとか。でもブースターやられた。機体、ほぼ死んでる」

「無茶しすぎだ……何が“前に出るな”だよ……」

シオンが苦笑するも、リリアは返さない。ただ、胸を押さえているような沈んだ沈黙だけが返ってきた。


「エルナ……!」

フラワの叫びが割り込む。

機体を降りた彼女が、頭部を吹き飛ばされたエルナの機体に駆け寄っていた。エルナは意識を保っていたが、コクピットの中で肩を震わせていた。


「ごめん……動けなくて……何も……できなかった……」

「エルナ、よかった、生きてて……!」

フラワが泣きながらエルナにしがみつく。


ジークの機体は……その場に横たわり、動かない。腕をもがれ、動力系統が死んでいる。


「俺は……クソッ……!」

彼の声が通信からかすかに聞こえた。怒りと悔しさ、そして恐怖がにじんでいる。


「リリア、カイさんの状態は!?」

シオンが尋ねる。


「……バリアはゼロ。コクピットは……ギリギリで潰されなかった。意識はあるけど、出血がひどい。すぐに医療班呼ぶ」

リリアの声は震えていた。彼女もまたギリギリだった。


「この機体じゃ、もう動けないな……」

シオンがため息をつく。


「トール、さっきの……なんだよ。なんで、あんな動きできたんだ」

「後で話す。今は状況整理を優先すべきだ」

冷静すぎるトールの返答に、シオンは苦い顔をする。


「……怖かった」

誰かがポツリと呟いた。


フラワかエルナか、それともジークか――

その言葉は、全員の胸に突き刺さっていた。


あれは兵器じゃない。

“あれ”には意志がある。

そう、誰もが直感していた。


いつもありがとうございます。

またお越しお待ちしております。

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