32話 援護と突撃
指定ポイントに近づくと、荒野の向こうに密集するAUC――AI制御の無人戦闘兵器・オートマタの群れが姿を現した。その数、およそ五十機。警戒レベルは高く、即時の対応が求められる。
「全ユニット、作戦通りに展開を開始する」
カイ・フォルセティの冷静な指示が全体通信に走った。
カイのクランとシオンたちのクランが、一糸乱れぬ動きで布陣を整えていく。
シオンは小高い岩陰に陣取り、エネルギーライフルの照準を調整する。リリアがその前方に位置を取り、彼を援護するために展開していった。
一方、エルナ・レヴィアはすでに高台からの狙撃体勢に入っており、無言で一機、また一機とオートマタをマーキングしていた。
「よーし、行くよジーク先輩!」
前線突破役のジークとフラワが同時にブースターを噴かし、突撃の構えを見せたその瞬間。
――『フラワ、私の隣から離れるな』
カイの通信がフラワの耳に届いた。
「え〜……せっかく出番って感じだったのに」
不満げに頬を膨らませるフラワだったが、渋々、カイのそばに位置を戻す。
やがてカイが短く合図を出す。
「開始」
ズン、と空気が震えたような一瞬後。
シオンとエルナの援護射撃が火を吹いた。放たれたエネルギービームがオートマタの装甲を正確に撃ち抜く。
「行くぜぇぇぇぇぇっ!!」
ジークが吼えながら前線へ突撃。両肩のスラスターが火を噴き、圧倒的な勢いで突撃していく。
彼のマシンガンが次々と敵を薙ぎ払い、爆発が次々に土煙を上げた。
その後方から、カイとフラワがそれぞれの役割を果たすように動き、ジークの突破口を広げていく。
「援護、問題なし。シオン、気をつけて」
リリアが通信で告げると同時に、彼女もシオンとエルナの射線を頼りに前へ進み、撃ち漏らしたオートマタを正確に排除していった。
戦況は、次第にこちらに傾き始めていた。
「ねえシオンくん、今何機落としたの?」
唐突に、フラワから通信が入る。
「え? まだ三機くらいだけど……」
シオンが答えると、フラワの声が一瞬だけ沈黙した後、笑み混じりに続いた。
「そっか……ふーん。じゃあ、負けないから!」
シオンはその言葉に、ようやく気づく。
(……あの時の“私負けないから”って、そういうことか)
実は――
フラワは、自分こそが“1年目で初めて敵機を撃墜した生徒”になりたかったのだ。
けれど前回のミッションで、その栄光はシオンに先を越されてしまった。
『ちょっと悔しかっただけだもん。……だから今日は、絶対に勝つって決めてたの』
そう言ったフラワの声は、少しだけ強がっているようにも聞こえた。
彼女はただ、誰よりも早く、一年生としての一歩を踏み出したかったのだ。
その想いが、今日の彼女の奮闘につながっていた。
「シオンくんには負けないから!」
フラワの機体が跳ねるように前線へ飛び出していく。小型のビームブレードと短距離射撃を絶妙に組み合わせ、オートマタを次々と撃墜していく。
彼女のスコアはぐんぐん伸びていき、やがて――。
「敵、鎮圧完了」
カイの低く抑えた声と共に、最後のオートマタが爆炎に包まれた。
「……フラワ、撃墜数トップね」
リリアが小さく呟く。フラワはにこっと笑って、通信越しに勝ち誇ったように言った。
「えへへ、シオンくん。まだまだだねー?」
勝負は勝負。だけどその笑顔には、どこか“仲間”としての照れと嬉しさがにじんでいた。
鎮圧成功の報せが届き、仲間たちの間にわずかな安堵が流れた。
「ふふん、さすが私でしょ~」
フラワが機体越しに得意げに笑い、ジークが「上出来だ」と豪快に返す。リリアも珍しく小さく微笑み、エルナさえ「……まあ、悪くない」と短く呟いた。
だがその中で、シオンの胸だけがざわついていた。
(……こんなもんじゃない気がする)
機体のモニターを見つめる。感覚が告げている。“まだ終わっていない”と。
その時だった。
『……全機に告ぐ。新たな反応を確認』
通信が入ったのは、リリアの冷静な声だった。彼女の機体には、高性能の索敵レーダーが搭載されている。
『複数の敵性反応、こちらに向かって接近中。数は……不明、だが……』
リリアの声に一瞬だけ含まれた“戸惑い”に、全員の空気が一変した。
「確認できたのは……人型。識別不能、AI反応なし。これは……」
『人形だと?』
カイの低い声が重く響く。
「まさか……AUCとは違う敵なの?」
フラワが不安げに呟く。
「こっちに向かってくる速度……おかしい」
シオンがモニターの数値を睨む。まるで意思を持っているかのような、冷たく静かな接近。
その瞬間――
遠方で、爆発音と共に舞い上がる黒煙。
通信の先で、誰かが呟いた。
『――来るぞ』
そして空気は、一瞬で凍りついた。
投稿遅くなりました。ごめんなさい。
今回の投稿、以前の戦闘シーンと異なる書き方を勉強して、作ってみました。
遅くなりましたが、次回お楽しみに。




