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ディメンション・ノヴァ  作者: 酒本 ナルシー。
3章  信頼と疑念

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29話 同期

静かに広がる噂


初のミッションから二日後――。


アカデミーでは、またしてもシオンの名前が話題になっていた。


「一年のDクラスの生徒が、初の任務で敵を撃墜したらしいぞ」


本来、新入生が受ける初ミッションは、実戦の緊張感を味わうことが目的であり、ほとんど戦闘にはならない。しかし、シオンは実戦を経験し、しかも敵機を撃破して帰還したのだ。


その戦果は一年生での最速記録だった。


これまでのシオンへの視線は、Dクラスの底辺生としての軽蔑や嘲笑だった。しかし、今日の視線は少し違っている。好奇と驚き、そしてほんのわずかながら敬意が混じっているように感じた。


だが、シオンにとってそんなものはどうでもよかった。


昼食の時間になり、彼はアカデミー内の人が少ない場所へ移動し、静かにハンバーガーをかじる。


「……なんでこの時代は照り焼きバーガーがないんだよ」


不満をこぼすシオンに、AIのトールが即座に返答する。


「鳥の照り焼きならある。それをパンに挟んで食べろ」


「それじゃダメなんだよ……」


くだらない会話をしていると、不意に足音が近づいてきた。


「シオンくん、一人で食べてるの?」


澄んだ声と共に現れたのは、Aクラスのフラワ・ストレリツィアだった。


「……俺、友達いないから」


少し照れ臭そうに答えるシオンに、フラワは苦笑いする。


「Dクラスのシオンくんだもんね。でも、じゃあ私が一緒にランチ付き合ってあげる!」


そう言って、フラワはシオンの向かいに座る。


シオンはハンバーガーをかじりながら、ふと口を開く。


「……これでご飯一緒に食べるの、二回目だな」


「そだね〜」


「てか、なんでここにいるんだよ? 普段なら誰も来ない場所だぞ」


「ん〜、たまたまかな?」


そう言いながら、フラワはシオンをじっと見つめる。


やがて、彼女は軽い調子で尋ねた。


「前回のミッションのこと、ちょっと聞かせてよ」


シオンは少し考えながら、簡単にミッションの概要を説明する。フラワは興味深そうに聞いていたが、話の途中でふと口元に笑みを浮かべる。


「シオンくんってさ、模擬戦の時もそうだったけど、実は凄いよね」


「……何が?」


シオンは本気で疑問に思っていた。


「ふふっ」


フラワは笑いながら、スプーンでカップに入ったデザートをすくい、ゆっくり口に運ぶ。


「強いってこと」


「いや、俺負けたんだけど」


シオンが肩をすくめると、フラワはスプーンをくるくる回しながら言った。


「でもさ、模擬戦の時も今回のミッションも、普通の一年生にはできないことをやってるでしょ?」


「それは……まあ、結果としてそうなっただけだろ」


「謙遜? それとも自覚ないだけ?」


フラワは少し意地悪そうな笑みを浮かべる。


「どっちでもいいだろ」


「そっか、ならいいや」


そう言って、フラワはスプーンを置き、ゆっくり立ち上がった。


シオンは曖昧に肩をすくめながら、ハンバーガーをもう一口かじる。


すると、フラワがふと首をかしげた。


「そういえばさ、シオンくんのランキングって上がったんじゃない?」


「……ん?」


シオンは不意を突かれたように瞬きをし、少し考え込む。


「……ああ、そういや見てなかった」


実戦で敵機を撃墜したのなら、多少なりとも評価に影響があるはず。そう思いながら、彼はUIを開き、自分のランキングを確認する。


画面に映し出されたのは―― 最下位。


「……おかしいな」


シオンは目を凝らし、もう一度見直すが、間違いなく最下位のままだった。


「……あれ?」


苦笑いしながらフラワにデータ転送すると、彼女も画面を覗き込んで目を瞬かせる。


「え、変わってないの?」


「うん。びっくりするくらい何も変わってない」


シオンはため息交じりに言い、UIを閉じる。


フラワは少し気まずそうに視線を逸らしながら、スプーンをカップの中でくるくる回した。


「……まあ、ランキングって色々あるしね! 実戦の評価が反映されるの、ちょっと時間かかるのかも?」


「……そっか、そういうもんか」


シオンは適当に相槌を打ちながらも、何か腑に落ちない感覚を覚えていた。


「そろそろ行くね」


「……おう」


「次のミッション、私負けないから」


そう言い残し、フラワは軽やかに去っていった。


「……負けないって、何に?」


シオンは首を傾げつつ、午後の訓練へ向かうのだった。



---


次なるミッションの発表


その日の夕方、シオンはリリアに呼ばれ、クランハウスのミーティングルームへと足を運んだ。壁のスクリーンにはミッション概要が映し出されている。


「座って」


リリアは簡潔に促し、シオンが席につくとすぐに本題に入った。


「次のミッションが決まったの。3年のランキング1位のクランと合同での作戦」


シオンは驚き、思わず眉をひそめる。


「3年のトップランカーと……? どうして俺たちが?」


「上層部の判断ね。理由は分からないけど、1年のDクラスでありながら実戦で敵を撃破したあなたが注目されたのは確なの」


「……面倒なことになったな」


「そうね。でも、チャンスでもあるわ」


リリアが画面を操作し、ミッションの詳細を映し出す。


「作戦内容はアカデミー近郊での暴走AI兵器の鎮圧。単なる無人機じゃないわ。未知のプログラムによって通常の制御を逸脱している可能性が高い」


「暴走AI兵器……」


シオンは前回の戦闘を思い出す。あの時の敵も、何か異様な動きをしていた。今回の敵と関係があるのだろうか。


「そして、合同クランのメンバーの中に……フラワ・ストレリツィアがいる」


画面に映る名前を見て、シオンは思わず息をのむ。


「……フラワ?」


昼間、「負けない」と言い残して去った彼女の言葉が、脳裏に蘇る。


「彼女は3年のトップランカークランに所属しているみたい。シオン、知り合いなの?」


「知り合いってほどじゃない。ただ、話したことはある」


「そう……。どちらにしても、今回は彼女たちと共に戦うことになる。3年のトップクランの足を引っ張るわけにはいかないわ」


「分かってる」


シオンは腕を組み、スクリーンの情報をじっと見つめた。


「ただ、1つ気になることがある」


「何?」


「……フラワ、俺に“負けない”って言ったんだ。まるでこのミッションを知ってたみたいに」


リリアは少し考え込んだ後、ため息をつく。


「その意味は、会えば分かるんじゃない?」


シオンは小さく頷く。


「ともかく、これは私たちのクランにとっても大きな機会なの。気を引き締めていこ」


「了解」


そうして、2人だけのブリーフィングは終了した。


シオンはクランハウスを出ながら、フラワの言葉の意味を考え続けていた。



さらに、今回のミッションで、あの人形と再会することになる――。





今回も読んでいただいてありがとうございます。

次回も頑張って面白くなるよに努力します!

評価やブクマいただけると、モチベーション上がりますのので、何卒宜しくお願い致します。

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