28話 ミッション後の考察
クランハウスへ戻ったシオンとリリアは、トールを交えて戦闘の振り返りを行った。
「やっぱり、あの無人機……普通じゃなかったよね?」リリアが腕を組みながら言う。
「うん。普通の無人機ならパターンを読めば対処できるはずだけど、奴らは途中で戦い方を変えてきた。まるで学習しているみたいだった」とシオンも同意する。
トールが静かに解析結果を表示する。
『敵機の挙動は従来の無人機と異なるパターンを持っている。戦闘中に適応し、より効果的な動きを選択していた可能性が高い』
「……つまり、ただの無人機じゃないってこと?」
『その可能性が高い、詳細なデータは不足である』
さらに話を進める中で、リリアが別の異変にも気づいた。
「シオン、君の機体……途中で妙な動きをしたわよね?」
シオンは少し考えてから答える。
「確かに……戦闘中、まるで自分の意識よりも先に機体が動いているように感じたんだ」
トールが画面を切り替える。
『分析の結果、シオンがワタシの補助システムを通じて、僅かに未来の動きを予測し、それに基づいて最適な動作を選択していた可能性がある』
「未来の動きを……?」シオンが驚く。
『ただし、この戦闘システムについて今はまだ詳細を制限されている』
トールの言葉にシオンとリリアは顔を見合わせる。
「……制限、か。やっぱり、まだ何か隠されてるってことね」リリアはため息をついた。
『現時点で重要なのは、シオンの機体が通常のノヴァとは異なる動作をしている点です。これを今後の戦闘でどのように活用するかが課題となります』
「それに、今回の敵……あいつらの正体がわからないのも問題ね」
『敵のデータは解析中、明確な情報はない。警戒を強化すべき』
シオンは拳を握る。今回の戦いは初陣だったが、ただの護衛任務のはずが奇妙な戦闘になった。そして、自分の機体の異常な動き、そして敵の正体不明の戦術――すべてが謎に包まれていた。
「……俺、もっと強くならなきゃいけないな」シオンは静かに決意を口にした。
◇◇◇
翌日、リリアとシオン、二人はアカデミーの作戦司令室に呼び出された。
アカデミー側に前日のミッション報告を行うためだ。
室内には担当官と数名の教官が並び、データをチェックしていた。
リリアが冷静に報告を終えると、担当官は無表情のまま淡々と告げた。
「輸送車の護衛、ご苦労だった。損害なしでの成功、評価に値する」
しかし、肝心の“敵”についての情報は一切開示されなかった。
リリアが問いかける。
「昨日の無人機、そして最後に現れた人型機。あれは一体、何だったのですか?」
担当官は微妙な間を置いた後、表情を変えずに答える。
「現時点での詳細は不明だ」
「……本当に不明なんですか?」
リリアの語気が少し強くなる。
「通常の無人機とは明らかに異なっていました。あれほど高度な機動をするAI制御は、私の知る限り学園の技術にも存在しないはず……」
担当官は少し目を細めた。
「それ以上の情報は開示できない」
「開示できない、のですか?」
リリアは言葉を選びながらも、鋭く切り込む。
しかし、担当官は静かに席を立ち、話を終わらせるように言った。
「君たちはクランの役割を果たせばいい。それ以上を詮索する必要はない」
冷たい言葉だった。
リリアはいらだったが、これ以上の追及は無駄だと悟る。
シオンも隣で拳を握りしめていた。
(何かを隠している——それは間違いない)
その違和感を胸に抱えたまま、三人は司令室を後にした。
◇◇◇
その頃、アカデミーの別の場所では、密かにある会話が交わされていた。
薄暗い会議室。
数名の人物がモニターを見つめている。
映し出されているのは、シオンたちの戦闘データ。
「やはり、彼の戦闘行動には“異常”が見られる」
低く、冷静な声が響く。
「彼はまだ気づいていない。しかし、このまま成長を続ければ、いずれ……」
「……排除するべきか?」
短く鋭い問いかけ。
「いや、まだ様子を見る。だが、警戒は怠るな」
会議室の空気が重くなる。
「このクラン……特にシオン・ハートランドの動向を監視しろ」
闇の中で、新たな陰謀が静かに動き始めていた——。
いつも読んでいただいてありがとうございます。
次回是非よろしくお願いします。




