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ディメンション・ノヴァ  作者: 酒本 ナルシー。
3章  信頼と疑念

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27話 実戦

ミッション開始


 朝の冷たい空気が漂う中、シオンとリリアはクランハウスを出発し、発電所へ向かう輸送車と合流するため指定されたポイントへ向かった。太陽が低い位置で輝き、ノバァの装甲に淡い光が反射する。


 目的地に到着すると、すでに輸送車と他の護衛部隊が待機していた。輸送車は装甲が強化され、外部からの衝撃に耐えられる設計になっている。しかし、それでも単独での移動は危険なため、護衛が必要とされていた。


「おはようございます、リリア・ヴァルハルトさんですね?」


 輸送車の担当者がリリアに向かって敬礼しながら確認する。リリアはそれに応えながら、シオンを指し示した。


「ええ、そしてこちらが私のクランのメンバー、シオン・ハートランド。今回の護衛任務には彼も参加します。」


 担当者はシオンを見て、「新人か?」と尋ねる。シオンは少し緊張しながらも、はっきりとした声で「はい」と答えた。

 

担当者の視線の先には、完全防護仕様のアカデミー実戦用機体が佇んでいた。肩部には対衝撃パッド、背部には標準装備の「パルスライフル」が組み込まれている。


「まあ、新人でも戦えるなら問題ない。最近、この辺りの治安が悪くなっているからな。気を引き締めてくれ。」


 そう言い残すと、担当者は輸送車の準備に戻った。


 出発前、リリアはシオンとノヴァの通信回線を繋ぎ、最終確認を行う。


「ルートは学園から発電所までの最短経路を取るわ。ただし、一部山間部を通るから、不意打ちには気をつけて。」


「了解。でも、本当に襲撃なんてあるのか?」


「確率は低いけど、ゼロではないわ。特に最近は物資の略奪を目論む連中が増えている。だからこそ、油断しないこと。」


 リリアの言葉には説得力があった。シオンは頷きながら、操縦桿を握る手に力を込めた。


 数分後、輸送車と護衛部隊が発進。ノヴァに搭乗したシオンとリリアは、その周囲を固めながら移動を開始した。


 最初の区間は特に問題なく進行した。都市部を抜けると、広大な草原地帯が広がる。ここは見通しが良く、敵の待ち伏せには向かないため、比較的安全なルートだった。

草原地帯を進むノヴァの足元が微かに軋む。**「衝撃吸収式足関節」**が不整地に対応する音だ。


「この機体……訓練機より確かに安定してる」


「シオン、大丈夫?」


「今のところは……うん、大丈夫。でも、ちょっと緊張してる。」


「実戦機の自動防御姿勢制御は優秀よ」


 リリアの落ち着いた声に、シオンは少しだけ気持ちを落ち着かせることができた。


 しかし、問題は次の区間だった。輸送ルートの後半には、森林地帯を抜けて山間部に入る道がある。ここは遮蔽物が多く、待ち伏せにはうってつけの場所だった。


 ルートに差し掛かった瞬間、トールの警告音が響いた。


『警告。微弱な電磁波干渉を検出。通信障害の可能性。』


「……何か来るかもしれないわね。」


 リリアが警戒態勢を指示するより早く、ノバァの装甲各部が微かに唸りを上げた。防御システムが自動で起動し、Eシールドの密度が増していく。


 その時だった。


 遠方から、突如として複数の高速移動物体が接近してくるのがレーダーに映った。


 突如として通信にノイズが走る。




《……ザー……ガ……っ……》




トールからの警告と表示。




《警告:外部からの強力な電波干渉を検知》




——ジャミングだ。




同時に、輸送車のナビシステムがエラーを起こし、センサーが乱れ始める。




「ジャミングか……こんな近距離から?」




リリアの表情が険しくなる。




普段の警戒レベルならありえない精度だ。


これが偶然の障害とは考えにくい。




「周囲をスキャンして。敵がいる可能性が高い」




リリアの指示に従い、シオンがレーダーをチェックする。


しかし、通常のスキャンでは何も映らない。




「……おかしい。何も——」




——その時だった。




背後の警戒アラームが赤く点滅。




高速度の飛行物体が接近。




《高速目標、接近中!》




「っ……来た!」




「全員、迎撃準備!」




リリアの声が響く。



「シオン! まずはバリアで輸送車を! こっちはLRS-Xで――」


「わかってる! ……トール、Eシールド最大展開! ロングテイル、狙撃モード!」


 ノバァの背部からパルスライフルが展開する音が響き、機体前方には半透明のバリアが展開した。シオンの視界には、敵機の推定弱点がAIによって赤くマーキングされる。


——だが。




「っ……!」




敵の動きが、想像以上に速い。




ミサイルが軌道を変えながら迫り、レーザーが交差する戦場。




シオンは慌てて回避行動を取るが、機体の動きがぎこちない。




防御に徹するしかなかった。




「シオン、前だけじゃなく、敵の動きを予測して!」




リリアが敵を次々と撃墜しながら指示を出す。



——予測する?




シオンは意識を集中させ、敵の動きを見つめた。




次の瞬間——




《補助モード起動》




トールの声が響く。




シオンの視界が拡張され、敵の軌道が先読みされる。




「……いける!」


シオンの指がトリガーに触れる瞬間、ノバァの背部から展開した**パルスライフル「ロングテイル」**が青白い光を蓄え始める。狙撃モードの照準器が視界に重なり、敵機のエンジン部が赤く浮かび上がった。


バシャン!


鈍い衝撃がコクピットを揺らす。パルス弾が空気を引き裂き、遠方の敵機の右腕部を貫いた。爆発は起きないが、敵の動きが明らかに鈍る。


「命中! でも致命傷じゃない!」


「当然よ」

リリアの機体がシオンの横へ滑り込む。彼女の機体は中軽量高速型で、シオンの狙撃と連動した動きを見せる。

「シオンの狙撃は『足止め』が目的。次は私が──」

機体が跳躍し、敵の真上からミサイルポッドを斉射。森林に爆炎が上がる。


シオンは荒い息を整えながら、機体の装甲状態を確認した。

『冷却システム:正常』

 


(……実戦機の耐久力は本物だ)



しかし戦闘はまだ終わっていない──



『警告:敵機、至近距離。推奨行動──』



トールの冷静な合成音声が、シオンの鼓動を打ち消すように響いた。



『接近戦モードへ移行』



ブースターを吹かし、一気に距離を詰める。




エネルギーブレードを展開。




そして——




無人機の動きを捉え、一閃。




刹那、敵機が真っ二つに裂け、爆発。




シオンの初撃破だった。




「やった!」




初めての戦闘での撃破に、シオンの中でわずかに安堵が広がる。




しかし——




「シオン、油断しないで!」



リリアの鋭い声が響いた瞬間、トールからの警報が再び鳴り響く。




《警告:新たな敵機接近》




シオンが視線を向けた先——




無人機とは明らかに異なる機影が、ゆっくりと霧の中から姿を現した。




鋼鉄の巨体。




細身ながらもしなやかな動き。




ノバァと同等の性能を持つであろう人型機が、二機。




その漆黒の装甲には、どこのクランの紋章もない。




「……まずい。これはただの賊じゃない」




リリアの表情が険しくなる。




敵はまるでこちらを品定めするかのように動かない。




「シオン、すぐに撤退する。戦う相手じゃない!」




リリアの言葉に驚くシオン。




——だが、それ以上に驚いたのは自分の胸に広がった"違和感"だった。




目の前の敵機。




この未知の機体に、なぜか"見覚え"がある気がする。




どこかで見たことがある。




どこかで——戦ったことがある?




しかし、考える暇はない。




リリアがすぐに撤退経路を指示し、輸送車を守りながら発電所へ向かう。




シオンも戸惑いながらブースターを吹かし、敵機との距離を取る。




すると、敵機は追ってこなかった。




——ただ、じっとこちらを見つめている。




(なぜ……?)




その疑問を抱えたまま、シオンたちは何とか発電所へ到達。




《輸送完了、任務達成》




しかし、シオンの胸には不安が残る。




あの敵は一体何者だったのか。




そして——なぜ自分は、あの機体に"既視感"を覚えたのか。




それが、この戦いの始まりに過ぎないことを、彼はまだ知らない。







かなり長くなってしまいました。

読んでいただいてありがとうございます。

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