24話 「守る側」と「守られる側」
Dクラスの教室に駆け込むと、シオンはようやく一息ついた。しかし、背中に突き刺さるような視線の感覚はまだ消えない。
「……なんでこんなことになったんだ。」
思わずつぶやく。
リリアとクランを組んだという話が、アカデミーに広まっていた。リリアは本来ソロで活動するはずの実力者。そんな彼女が、一年生の、それもDクラスのシオンとクランを組んだとなれば、周囲が騒ぐのも無理はない。
「お前が目立ちたくないなら、クラン結成は悪手だったな。」
AIのトールが、どこか楽しげに言う。
「それを言うか? そもそもクランを作れって言い出したの、お前だろ……!」
シオンは思わず反論するが、トールは平然としたままだ。
「確かに提案したのは私だが、決断したのは君だ。」
「……ぐっ。」
言い返せない。クラン結成を決めたのは、間違いなく自分だったのだから。
シオンはため息をついて、自分の席に座る。しかし、静かな時間は長くは続かなかった。
「おい、Dクラスのお前がリリアとクランを組んだってマジか?」
突然、教室のドアが勢いよく開き、数人の生徒が押し寄せてきた。シオンの平穏な日常は、すでに崩れ去ろうとしていた――。
シオンは面倒ごとが来たなと思いながら、押し寄せてきた生徒たちを見た。
「なんでお前がリリアとクラン組んでるんだ?」
「Dクラスが、リリアと? 何か裏があるんじゃないのか?」
「まさかお前、何か弱みでも握ったのか?」
次々と飛んでくる問いかけ。好奇心と疑念に満ちた視線がシオンを貫く。
「いや、弱みって……違うから。」
シオンはため息をつきながら否定したが、周囲の生徒たちは納得しない様子だった。
「じゃあ、何でなんだよ?」
「それは……。」
答えようにも、トールが「リリアとクランを作れ」と提案した理由を、シオンはまだはっきりとは理解していなかった。
「説明するのは面倒だな……。」
そう思った瞬間、またもやトールが口を挟んできた。
「ならば簡単な答えを言えばいい。『リリアに認められたからだ』と。」
「お前なぁ……。」
シオンは頭を抱えつつも、それが一番面倒のない返答だと理解した。
「リリアが俺を認めてくれたから、それだけだ。」
そう答えると、周囲の生徒たちはざわめいた。
「はぁ? リリアがDクラスの一年を認めた?」
「いやいや、そんなことあるわけないだろ。」
「でも、リリア自身がクラン結成を認めてるんだよな……?」
半信半疑のまま、生徒たちは納得しきれない表情でシオンを見つめた。
「――なるほど。確かに面白い話だ。」
低く響く声が教室の入り口から聞こえた。
シオンが顔を上げると、そこに立っていたのは3年目Bクラスの上級生だった。
「クランを組んだ実力を、ちょっと確かめさせてもらおうか。」
そう言って、3年目Bクラスの生徒はシオンを挑発するように笑った。
「――シオンに模擬戦を挑むなら、私が代わりに受けるわ。」
静かだけれど、はっきりとした声が教室に響いた。
シオンが驚いて入り口を見ると、そこにはリリアが立っていた。
「リ、リリア……?」
「彼は私のクランメンバーよ。無意味な小競り合いに巻き込ませるつもりはないわ。」
リリアは淡々と告げるが、その目は鋭くBクラスの生徒を見据えていた。
Bクラスの生徒は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに顔をしかめる。
「チッ……お前が出るなら話は別だ。分が悪いな。」
そう言って、シオンを睨みつけながらも、渋々と後退していった。
「……助けてくれて、ありがとう。」
シオンはリリアに向き直り、少し照れくさそうに感謝を述べた。
「別に問題ないわ。」
リリアはさらりと答えると、柔らかな表情になり、シオンに向かって言った。
「それより、今日はDクラスに来た理由があるの。今日からクランハウスに入居できることになったから、引っ越しを進めるわ。」
「クランハウスに……?」
シオンの胸が高鳴る。これからリリアと同じ拠点で生活し、クランとして活動していくのだと実感が湧いてくる。
「了解!」
シオンは即答した。
リリアは小さく頷き、少しだけ微笑んだ。
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