23話 念願
シオンはUIを確認し、新着メッセージを開いた。
送信者: リリア・ヴァルハント
思わず画面を見つめるシオン。慌てて返信を打ち込み、気がつけば「部屋に来る?」と送信してしまっていた。返事はすぐに来た。
リリア:うん、いいの? じゃあ、行くね。
「……え?」
その瞬間、AI【トール】の冷静な声が響く。
「女性を部屋に招待するとは、君は大胆だな。」
シオンはようやく事の重大さに気づく。
「ま、待て! 俺、リリアを男の部屋に招いちまったのか!?」
「この荒れ果てて男臭い部屋を、今すぐ掃除せよ。」
AI【トール】の冷静な指示に、シオンは大慌てで片付けを始めた。
(自分の部屋に女の子が来るなんて、初めてだ……。もしものために、色々準備しておかなくては!)
「……君は何の準備をしているんだ? リリアはただ話をするために来るだけだろう。」
トールの冷淡な突っ込みに、シオンは我に返るが、胸の期待は大きくなるばかりだった。
(いやいや、わかってるよ! でも、だって、16歳の男なら!)
「心拍数上昇。体温上昇。」
「うるせえ!」
「ガツガツしている男は嫌われる可能性あり。」
「ぐっ……!」
ようやく冷静さを取り戻したシオンは、一旦落ち着いてリリアの到着を待つことにした。
「リリア接近中。ドアまでの距離、およそ50メートル。」
トールの通告に、シオンの緊張は最高潮に達する。
「カウント開始。9、8、7、6、5、4、3、2、1……」
インターホンが鳴った。
ガチガチになりながら、シオンはドアの鍵を開けた。ドアの向こうには、相変わらず見惚れるほどの美貌を持つリリアが立っていた。ふわりと甘い香りが漂う。
「わざわざどうも、中へどうぞ。」
「うん、いきなりごめんね。」
リリアは柔らかく微笑み、部屋へと入った。
そこでシオンは気づく。
(まずい! この部屋、一人用だから椅子がひとつしかない!)
どうするべきかと焦るシオンをよそに、リリアは自然とベッドに腰掛けた。
(助かった……!)
「お茶、入れてきますね。」
シオンはすぐさま準備し、テーブルをリリアの近くに移動させてカップを置いた。しかし、次なる試練が訪れる。
(俺はどこに座ればいいんだ……?)
「選択肢を提示する。A:デスクの椅子に座る。B:リリアと並んでベッドに座る。」
「……さあ、選べ。」
トールの少し怖い声に、シオンは迷った。本来ならデスクの椅子に座るのが自然なはず。しかし、並んで座れば、もしかして……?
グズグズと考えているシオンに、リリアがベッドをポンポンと叩いた。
「ここに座りなさい。」
リリアのエスコートにより、自然に並んで座る形となった。
リリアがお茶を一口飲み、シオンは意を決して口を開いた。
「昨日は突然いなくなってすみませんでした。俺、女の子と会話するのが本当に苦手で……。」
リリアは微笑む。
「ちょっとびっくりしたけど、平気。」
「それと……クランのこと、無理そうだったのに受け入れてくれてありがとうございます。」
「うん、あの後いろいろ考えて決めたことなの。だから今日はその話をしたくて来たの。」
リリアが説明を始めた。
「クランを結成すると、まずメンバー同士の情報共有が必要になるの。それに、クランには専用の『クランハウス』が与えられるのよ。」
「クランハウス?」
「そう。クランのメンバーが生活できるようになっていて、会議室や訓練設備もあるの。つまり、ひとつ屋根の下で一緒に暮らすってことね。」
(……同棲だと!?)
高鳴る気持ちを抑えつつ、シオンは冷静を装う。
「私と一緒に生活することになるけど、大丈夫?」
「ああ、問題ない。」
カッコつけて答えるが、リリアは不思議そうな顔をした。
「じゃあ、これからよろしくね。」
「よろしく。」
リリアは、お互いの情報共有(フレンド登録)を今からしようと言った。
「わかりました。でも……やり方が分からないんだけど。」
「じゃあ、ケーブル持ってきて。」
「ケーブル? USB的な?」
リリアは笑い、「無いなら直接するからいいわ」と言った。
(直接? とは?)
シオンはわからぬまま、「わかりました」と答えた。
リリアはお茶を一口飲み、シオンに優しく言った。
「目をつぶって。」
「え? あ、うん。」
シオンはお茶を飲み、ゆっくりと目を閉じた——。
シオンは目を閉じながら、緊張で心臓がバクバクしていた。
直接ってどういうことなんだ……? まさか……!
16歳、DT、異世界物大好きっ子のシオンの脳内では、漫画や小説で見たような「直接接続=キス」説が全力で駆け巡る。
しかし、トールの冷静な声がその幻想をぶち壊した。
「シオン、落ち着け。心拍数が異常だ。リリアの前で鼻血を出して倒れるつもりか?」
「うるさい! こっちは色々と初めての状況なんだよ!!」
「……深呼吸しろ。でないと、いらぬ誤解を生むぞ。」
シオンは言われた通り深呼吸する。そして、リリアの指示通りに目を閉じた。
次の瞬間、額にふわりとした温もりが触れた。
「っ!?!?」
シオンの脳がショートしかけた瞬間、リリアの静かな声が聞こえる。
「これで完了。お互いのデータリンクが済んだから、これからはクランメンバーとして情報共有できるよ。」
額に乗せられたリリアの指先がそっと離れる。
シオンは目を開けた。
目の前には、涼しげな笑顔を浮かべるリリア。
「……なんだ、そういうことか。」
「? どうしたの?」
「いや、なんでも……ないです……。」
めちゃくちゃ期待してたとは言えない……!!!
トールの乾いた声が響く。
「……君が何を期待していたのか、敢えて聞かないでおこう。」
シオンは悶絶しながらも、リリアに向き直る。
「じゃあ、これで正式にクランメンバーになったんですね。」
「うん。改めてよろしくね、シオン。」
そう言ってリリアは微笑んだ。
シオンはその笑顔に、これから始まる新しい生活への期待と、未知の展開へのドキドキを感じながら、小さく頷いた。
そして、この瞬間から──
シオン・ハートランドの「クラン生活」が本格的に幕を開けるのだった。
お疲れさまでした。
ようやくクラン作ることが出来ました。
小説書き始めて一か月、空いてる時間で頑張って書いていますが、毎日投稿は結構しんどいです。
しかし!読んでくださる方も少なからずいらっしゃるので、これからも毎日投稿するので、読みに来てくださいm(_ _"m)




