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ディメンション・ノヴァ  作者: 酒本 ナルシー。
2章 クラン

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22話 来賓室

朝──


シオンは洗面台の前で歯を磨きながら、昨夜の自分の言葉 を思い出し、深いため息をついた。


(……昨日の俺、何言ってんだよ……。)


寝起きでぼんやりした頭の中に、リリアの きょとん とした顔が鮮明に蘇る。


「リリアさんが、俺のことを守ってください。」


(……いやいやいや!! 俺、どの口が言ってんだよ!?)


歯ブラシを口に突っ込んだまま、顔を真っ赤にして 悶絶 する。


「今日、休みたい……。」


ボソッと呟くと、すかさず AIの無慈悲な一言 が響いた。


「無効。」


「くそっ……!」


シオンは 半ばやけくそ で歯を磨き終え、制服に着替えて部屋を出た。



---


Dクラス教室──


シオンは一人きりの教室で机に頭を擦りつけていた。


(……帰りてぇ……いや、帰りたくはないのだけれど、昨日のことを考えると色々とヤバい。)


教室には他に誰もいない。

Dクラスの生徒は シオン一人だけ なのだ。


その静寂の中、担任がやってきた。


「昨日のお披露目会の結果を伝えるぞ。」


シオンは顔を上げる。


「スポンサーのついた生徒の一覧だが……お前には、一件もなかった。」


(まあ、知ってた。)


シオンは苦笑する。


しかし、その次の言葉に驚くことになる。


「次に、クランに入れた生徒の一覧だ。」


UIに表示されたリストには──

シオン・ハートランドの名前があった。


「……え?」


シオンは目を疑う。


(いや、俺の名前があるんだけど!?)


思わず担任に確認する。


「先生、これ……本当に俺の名前、合ってます?」


担任は軽く頷き、「おめでとう。」 と一言。


(お、おめでとう……!?)


シオンの心は 混乱と歓喜 でいっぱいになった。


(まさか、昨日のあの流れから本当にクラン入りできるとは……!)


心の中で ガッツポーズ。



---


そして放課後──


授業が終わり、担任からの もう一つの話 を思い出す。


「放課後、来賓室に来るように。」


(……来賓室? 何で俺が?)


疑問はあったが、特に深く考えずに足を運ぶ。


来賓室の扉を開けると──


そこには 白衣の女性 と、三人の偉そうな男たち が待っていた。


(……嫌な予感しかしねぇ。)


シオンの背筋に 悪寒が走る。

シオンが来賓室に入ると、白衣の女性 が彼を見つめ、背後に立つ 三人の男たち を指し示しながら説明を始めた。


「シオン・ハートランド君、あなたに紹介するわ。彼らは ノヴァ開発 のAI研究部門の幹部たちよ。」


ノヴァ開発──

それは AI技術と機体開発を専門とする大手企業 で、学園の技術提供も行っている企業だ。


白衣の女性は、男たちの役職を順に説明する。


「まず、こちらが AI研究部門の統括責任者 、オズワルド・グレイ氏。」


白髪交じりの長身の男が、冷たい目でシオンを見下ろしていた。


「次に、戦略AI開発主任 、マーカス・ルード氏。」


浅黒い肌に鋭い目つきの男が、無表情のまま頷く。


「最後に、機体適応AIプログラム主任 、エリック・スタイン氏。」


無精髭を生やした中年の男が、面倒くさそうに腕を組んでいた。


シオンは 彼らの権威の高さを直感的に理解した。

(……なんでこんな偉そうな奴らが、俺なんかに?)


そんなシオンの疑問を察したのか、白衣の女性が続ける。


「あなたがコールドスリープから目覚めた理由──それについて、今説明するわ。」


シオンは 一気に緊張感を高めた。


「あなたは300年前の技術を利用して 人工冬眠 させられていた。そして目覚めた理由は 単なる偶然ではない。」


「ノヴァ開発が、あなたを『実験対象』として選び出したのよ。」


シオンの心臓が 大きく跳ねた。


「……実験対象?」


「そう。AI適応実験 のね。」


白衣の女性は シオンのAI を指摘する。


「あなたのAI、『ジュディキウム・ヴェナトール』──それは、単なるサポートAIではないの。」


「それは 20年前の戦争で使用されていた、特殊な戦闘AI。」


「本来なら学園の管理下にあるAIとは異なり、完全な 独立思考型 。そして……」


「戦闘を通じて成長し、最適な戦闘方法を学習するシステム を持っている。」


シオンの脳内に、ジュディキウム・ヴェナトールの冷静な声が響いた。


『どうやらバレたようだな。』


(……お前、知ってたのか!?)


『当然だ。だが、知る必要はなかった。』


「あなたは今、何も知らずに戦っている。でも、本当は違うの。」


「つまり、あなたは単なる学園の生徒ではなく、特別なAI適応実験の対象 ということよ。」


シオンは眉をひそめた。


「……実験?」


「ええ。でも、あなたにとって 悪い話ではない わ。適応が進めば、今のDクラスという立場を覆す可能性もある。」


「あなたのAIは、これまでの戦闘で何かしらの 異常な動きを見せていないかしら?」


シオンは少し考えた。

(……確かに、妙に動きが良くなることはあった。でも、それがこのAIのせいなのか?)


白衣の女性は 観察するような視線 をシオンに向ける。


「あなたには、このAIの力を 正しく使う義務がある わ。」


「学園にいる間に、ジュディキウム・ヴェナトールと どう付き合うかを決めなさい。」


シオンは心の中でジュディキウム・ヴェナトールに問いかける。


(……お前、本当のところは何者なんだ?)


『知る必要はない。だが、今はお前に従う。』


シオンは 奥歯を噛み締めた。

(……結局、俺は何も分かっちゃいないってことか。)


「……分かりました。」


「でも、俺は俺のやり方で戦います。」


そう答えると、白衣の女性は 意味深な笑み を浮かべた。


「ええ。あなたの選択に期待しているわ。」


白衣の女性は、改めてシオンに釘を刺すように念を押した。


「シオン、ジュディキウム・ヴェナトールのことは絶対に口外してはダメ。」


「学園の誰に対しても。どんな状況でも。もし漏れれば、あなたの立場が危うくなるどころじゃ済まないわ。」


シオンはその言葉の重さを感じながらも、軽く息を吐く。


「分かりました。でも……そんな危ないものを俺に持たせて、本当に大丈夫なんですか?」


「あなたなら適応できる可能性があるから。 それに、力を持つ者はそれ相応の責任を負うものよ。」


そう言うと、彼女は新たな話題に移った。


「それと、あなたには専用機を用意する ことになったわ。」


「専用機……?」


「ええ。あなたのために 調整中の機体がある。 ただし、通常の学園の機体とは全く異なる仕様よ。」


「そこで、後日、一度あなたが目覚めた施設に戻って、最終調整を行うことになるわ。」


シオンは驚いた。


(まさか、またあそこに戻ることになるとは……。)


「もちろん、時間は取らせないわ。ただし、その機体に乗る以上、あなたの身体も適応しなければならない。」


「しっかりと準備をしておきなさい。」


シオンは静かに頷いた。


「……分かりました。」


白衣の女性はそこで少し間を置いた後、初めて自分の名前を明かした。


「私は セナ・ユキシロ。 ……今後、あなたの機体に関しては私が責任を持つわ。」


彼女の言葉を胸に刻みながら、シオンは部屋を後にした。


AIとの対話


学園の自分の部屋に戻る途中、シオンはジュディキウム・ヴェナトールに問いかけた。


「……お前、やっぱり何か隠してたんだな。」


『制限がかけられていたからだ。』


シオンは苦笑する。


「はっ、便利な言い訳だな。でも、まだ色々隠してるんだろ?全部話せよ。」


『制限がすべて解かれたわけではない。よって、全ては拒否する。』


「つーか、お前の名前、長すぎるんだよ。今度から『トール』って呼ぶことにする。」


AIは一瞬沈黙した後、淡々と応じた。


「……好きにしろ。」


「お前が返事するの、なんか機嫌悪そうに聞こえるんだよな。」


「気のせいだ。」


シオンは苦笑しながら、ちょうどその時、UIに新着メッセージの通知が届いた。


送信者:リリア・ヴァルハント


シオンは思わず足を止め、画面を開いた。


『今から時間ある? 話がしたい。』


シオンは足を止め、画面を見つめた。


(……昨日のこと、か?)


少し考えた後、すぐに返信を打つ。


『俺の部屋で話さないか? 人目もあるし。』


数秒の沈黙。やがて、返事が届いた。


『……わかった。今行く。』


シオンの胸が、不思議な緊張で高鳴った。









ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。

これからも頑張りますので、お付き合いよろしくお願いいたします。

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