20話 実力診断戦(スキル・アセスメント)後編 1
試合が終わり、格納庫へと搬送される最中、シオンのAIに通信が入った。
「リリアのAIより通信。今夜のアフターパーティーで少し時間がほしいとのこと。」
シオンのAIは即座に了承の返事を送る。
だが、このやりとりを シオンもリリアも知らない。
両機体は試合のダメージのこともあり、コックピットに入ったまま、それぞれの格納庫へと搬送されていく。
コックピットの静かな空間で、シオンはAIに問いかけた。
「……お前、ホントはどんなAIなんだ?」
AIは一瞬の沈黙の後、冷静に答える。
「期待値の低い個体。」
「……またそれか。」
シオンは呆れたようにため息をつく。
「話したくなったら、いつでも言ってくれよ。」
そう言った直後、シオンは緊張から解放されたのか、意識を失うように眠りに落ちた。
しかし、AIはまだ起動していた。
試合のデータを整理し、シオンをどう強化するかを考え続けていた。
そして、リリアのAIに短い通信を送る。
「──よくやった。」
リリアのAIは、リリアに気づかれないよう、その通信記録を 削除した。
シオンのAIとリリアのAIの間に、いったい何があるのか?
それはまだ、シオンもリリアも知らない──。
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アフターパーティーへ
格納庫に到着すると、シオンは目を覚ました。
「……やっと終わったか。」
コックピットを降りながら、実感が湧いてくる。
しかし、これから クラン結成のためにリリアと話す必要がある。
問題は どうやってリリアと連絡を取るか だった。
すると、AIが提案してくる。
「今日のアフターパーティーに参加するべきだ。」
「アフターパーティー?」
「そこに行けば、リリアに会えるかもしれない。」
シオンは少し考えた後、納得する。
「……わかったよ。」
部屋に戻り、最低限の準備を整えた後、アフターパーティーの会場へ向かう。
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パーティー会場にて
アフターパーティーの会場は、 大きなホール に生徒たちや来賓が集まり、まるで華やかな社交場のような雰囲気を醸し出していた。
この時ばかりは、誰もが試合のことを忘れ、楽しんでいるようだった。
しかし、 シオンがホールに入った瞬間、周囲の空気が変わる。
コソコソと話し合う生徒たちの視線がシオンに集まる。
彼らは Dクラスの一年生がリリアに模擬戦を挑んだ という話を、試合後に知ったのだった。
── そもそも、リリアは 今回のイベントには不参加のはずだった。
だが、突然の参加と Dクラスの一年との試合 に、周囲は驚きを隠せなかった。
さらに、試合結果の噂が広がるにつれ シオンへの反感が強まっていた。
── 「リリアの機体に傷をつけた?」
リリアは 3年生の中でも一目置かれる存在。
彼女の機体を Dクラスの一年が傷つけた という事実が、多くの生徒たちの不満を煽っていた。
(……なんだよ、この雰囲気。)
周囲から 冷ややかな視線 を浴びながら、シオンはアフターパーティーの開始を待つ。
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すると、不意に声をかけられる。
「ねー、シオンくん。リリアさんと模擬戦やったんだって?」
振り向くと、そこにいたのは フラワ だった。
「しかも、リリアさんの機体に傷つけたって何なの?」
「何があったの?」
シオンは仕方なく、試合の流れを説明した。
パイルバンカーが偶然当たっただけだと強調する。
フラワはじっとシオンの話を聞いた後、ゆるく首を傾げる。
「ふぅーん、そぉなんだぁ。」
しかし、その表情には まだ納得していない 様子があった。
「……でもさ、本当に偶然で、そんな簡単にリリアさんの機体に触れられるかなぁ?」
疑問げにそう呟いたフラワだったが、
その時、ホールに響くアナウンスが、アフターパーティーの開始を告げた。
アフターパーティーの幕開けとして、まずは スキル・アセスメントで優秀だった生徒たちの表彰 が行われる。
司会が次々と名前を呼び上げる中、シオンの耳に馴染みのある名前が聞こえた。
「──フラワ・ストレリツィア。」
シオンは一瞬驚いたが、すぐに納得する。
(やっぱりフラワって、普通に優等生なんだよな……。)
普段の軽い性格からは想像しにくいが、こうして表彰される姿を見れば、彼女が 実力者であることを再認識 させられる。
表彰が終わると、アフターパーティーは 本格的にスタート する。
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ビュッフェと会話の熱気
会場には 豪華なビュッフェ形式の料理 が並び、生徒たちは思い思いに食事を楽しみながら 今日の試合について熱く語り合っていた。
あちこちで交わされる会話の内容は、ほとんどが 今日の模擬戦の話 だ。
・ Aクラスの上位生徒の戦いがどうだったか
・ リリアの機体の仕上がり
・ 誰がどのスポンサーの目に留まったか
そして、その話題の一角に シオンの名前 も出ていた。
「Dクラスの一年がリリアさんと戦ったんだろ?」
「しかも、機体に傷をつけたとか……マジかよ。」
周囲の視線は、やはりどこか冷ややかだ。
(……まあ、気にしても仕方ないか。)
シオンは食事を取りながら、適当に流していた。
そんな中、スポンサーたちが目当ての生徒に声をかけ始める。
これは、将来有望なパイロットをスカウトするための重要な時間 でもあった。
Aクラスの上位生たちは、すぐにスポンサーの囲い込みが始まる。
一方、シオンは…… 誰からも声をかけられない。
──と思ったその時。
白衣の女性 が、静かにシオンの前に現れた。
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白衣の女性との会話
シオンは内心、ため息をつく。
(……またか。)
彼女は 学園の関係者でもなく、純粋なスポンサーでもない。
シオンに 「目立つな」と釘を刺すために現れる人物 だ。
「今日の模擬戦……」
女性は静かに口を開く。
「……うまく“言いつけどおり”に負けることができたわね。」
「……」
「でも、念のため言っておくわ。絶対に目立ってはダメ。 わかっているわね?」
シオンは 苦笑い しながら、肩をすくめる。
「……了解。」
「それと、次の休みの日は予定を空けておいて。」
シオンは少し眉をひそめたが、すぐに答えた。
「わかったよ。」
白衣の女性は、それ以上は何も言わず、すっと去っていった。
彼女の姿が見えなくなると、シオンは わずかに息を吐く。
(……本当に、面倒くさいな。)
しかし、今はそれより リリアを探すことが優先 だった。
シオンは、再びホールを見渡し リリアの姿を探し始める──。
いつも読んでいただいてありがとうございます。
お披露目後編1話でまとめるつもりでしたが無理でした。ごめんなさい。
まだ終わりません…。
続く。




