表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディメンション・ノヴァ  作者: 酒本 ナルシー。
2章 クラン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/50

19話 実力診断戦(スキル・アセスメント)中編

──ノヴァ、起動。


コックピットに収まり、シオンは深く息を吸い込んだ。

目の前のディスプレイには機体の状態が次々と表示されていく。


(対ノヴァモード起動)

(AIコントロール 36%)


ゲートが開くと、太陽の光が視界を満たし、シオンはゆっくりと機体を前進させた。

視線の先には、すでにスタンバイしているリリアの機体。


それは──

入学式のデモンストレーションで見た、あの機体だった。


白と青の機体、背中には翼のようなスラスター。

中量級ながら細身のシルエットに、後付けの装甲が各所に取り付けられている。

武装はすべて、彼女の企業の最新モデルだ。


右手:中距離ライフル

左手:アサルトライフル(高レート連射)

右肩:プラズマキャノン

左肩:高性能レーダー

左腕:エネルギーブレード


そのフォルムからして、スピードは相当速い。

間違いなく、スペックではこちらの機体を凌駕している。


シオンは思わず息を呑み、わずかに萎縮した。


「ふざけんなよ……スペック差ありすぎだろ」


そんなシオンの心中を見透かしたかのように、AIが冷静な声で言い放つ。


「機体性能の差、約10倍。」


「おいおい、やっぱ無理ゲーじゃねえか!」


「だが──」


AIの声に、いつになく確信が宿る。


「ノヴァの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを……教えてやる!」


「お前ふざけてるだろ!?」

シオンはイラッとしながら叫ぶ。


「もしこれで負けたら、お前アンインストールだからな!!」


──カウントダウン開始。


9……8……7……6……GPU起動

3……2……1……GO!


瞬間、加速する世界。


シオンの脳内加速が始まるが──

リリアの動きが、前回のBクラスの相手と比べ物にならないほど速い。


「やっば……!」


だが、適応できないほどではない。

問題は──


機体がついてこられていない。


リリアは開始と同時に中距離射撃を展開。

シオンはAIの指示通り弾幕を張りながら後退し、被弾しつつグレネードをわざと落とす。


バリア残量 30%付近。


リリアが動いた。


──左手の武器をパージ。

──ブースト最大出力。

──エネルギーブレード攻撃体制。


一気に距離を詰め、トドメを刺しに来る。


「来た!」


シオンは作戦通り、グレネードを踏みつける。


ドォン!!


爆発の衝撃と土煙が視界を覆う。

リリアの機体も煙の中に突っ込んできた。


──そして、煙が晴れる。


シオンの機体と、リリアの機体が重なり合っていた。


シオンの機体はブレードの一撃をギリギリで回避していた。

だが、バリア残量は10%。


対してリリアは──


彼女の機体の 頭部にパイルバンカーが突き刺さっていた。

しかも、バリアを貫通して。


沈黙。


観客席も静まり返る。

リリアも動けずにいる。


その静寂を破ったのは、AIの落ち着き払った声だった。


「実戦なら、私の勝ちだ。」



──試合終了。


短い電子音とともに、アカデミーの試合終了の合図が響いた。


結果は── リリアの勝利。


シオンのバリア残量は 10%。

一方、リリアのバリアは 90%以上を維持 していた。


アカデミーのルールでは、模擬戦において 直接的な機体破壊は禁止 されている。

そのため、バリア残量が30%以下になった時点で勝敗が決まる。


たとえ、実戦であれば パイルバンカーの一撃で勝負が決していたとしても、ここでは負けは負け。


「はぁ……」


シオンは長く息を吐きながら、コックピットのシートに背を預けた。

今の戦いを振り返ると、完全に AIの作戦が機能していた のは間違いない。


「……惜しかったな。」


呟くと、AIの声がすぐに返ってくる。


「模擬戦ルール上は敗北。だが、目的は果たせた。」


「は?」


シオンが不機嫌そうに聞き返すと、AIは淡々と続けた。


「リリア・ヴァルハント、『負けた』と理解したはずだ。」


「……?」


意味が分からなかった。

シオンはゆっくりとモニターを操作し、外部カメラの映像に切り替える。


そこには── 機体の頭部にパイルバンカーを突き刺されたまま動けないリリアの機体があった。


リリア自身もまだ状況を整理しきれていないのか、コックピット内で沈黙しているように見える。


バリアの数値ではシオンが負けた。

だが 実戦ならシオンの勝ちだった。


リリアはその事実を、嫌でも理解しているはずだった。


「シオン。お前は確かに負けた。」


AIが、いつになくゆっくりとした口調で続ける。


「だが、リリア・ヴァルハントもまた──お前に『敗北』したのだ。」


シオンは口を噤んだ。


確かに バリアの数値はルール上の勝敗を決める。

だが 機体同士の戦いにおいて、勝者と敗者を決めるのはそれだけではない。


リリアは、シオンが単なるDクラスの生徒ではないことを この一戦で理解したはずだ。


「……そうかよ。」


シオンは小さく笑い、機体を静かに停止させた。



ここまで読んでいただいてありがとうございます。


後編もお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ