第12階 ねぇ、これってどういう状況なんですか?
ノンビリ達は、弓使いのレイセイに連れられて12階に到達した。
「ここならいいな」
レイセイがそう言うと、ノンビリ達に、
「じゃあ、ここに座って」
と促した。
「ねぇ、これってどういう状況なんですか?」
シトヤカがノンビリに耳打ちした。
「…うーん、俺もよくわからないよ…」
ノンビリもなんともいえない顔になった。
「キマジメ、これどういう状況かわかる?」
ノンビリはキマジメに耳打ちした。
「シトヤカさんが分からないなら、俺が分かるはずないだろ…」
キマジメもなんともいえない顔になった。
「君たち、俺の話聞いてる?」
レイセイが呼びかける。
「あ、すいません」
3人は慌ててレイセイの方に向き直る。
「俺は、ずっとソロでやってきたんだ」
レイセイが口を開いた。
「え?ずっと1人でってことですか?」
ノンビリが聞く。
「あぁ、昔はパーティーにいたんだけど、そいつらと反りが合わなくてさ。それでパーティーを抜けたんだ」
「随分軽い感じで言いますね…」
キマジメが言った。
「それでずっとソロで戦っていたんだけど、やっぱり1人では色々不都合なことも起きてきてさ…」
「例えば…?」
シトヤカが聞いた。
「1対1の時は何とか倒せるんだけど、大勢の時はさすがに大変なんだ」
「まぁ、それはそうでしょうな」
ノンビリが言った。
「だからさ…、その…」
レイセイは少し言い淀んで、
「君たちのパーティーに入れてもらえないかな?」
と言った。
「俺たちのパーティーに?」
ノンビリは目を丸くした。
「あぁ、ぜひ一緒に戦いんだ」
ノンビリはじっくり考えた。
実力は申し訳ない。
それは自分たちがこの目で見たから間違いない。
多分仲間になってくれれば、パーティーはかなり強くなるだろう。
しかし、この男、なんかいけ好かない。
なんか上から目線だし、自分たちのことを見下している気がする。
こういう奴は、何かと前に出て勝手に仕切ったりとかするんだ。
「なぁ、どうすんだ?あぁ言ってるけど、仲間にするのか?」
キマジメが聞いてきた。
「…んー、それはまだ…」
ノンビリが考えていると、
「俺はちょっと嫌だな。なんか偉そうだし」
とキマジメが言った。
やっぱり友達だな。
俺もそう思っていたんだ。
「あの、あなたは僕達と旅をして一体何をしたいんですか?」
ノンビリがレイセイに聞いた。
「何がしたいか…、か…」
レイセイは少し考えこむ。
「君たちは何をしたいんだ?」
レイセイはノンビリ達に質問した。
質問してきたよコイツ。
ノンビリとキマジメは少し引いた。
ちょっと温度差感じるな。
「お、俺は、さらわれた妹を助けるために冒険してます」
ノンビリが言った。
「そうなのか」
レイセイは目を閉じて、考えこむ。
「なんか考えてるよ」
「シッ、静かに」
キマジメがノンビリに注意する。
「やっぱり、一緒に旅をさせてくれ」
レイセイが目を開きつつ言った。
こりゃ本気だな。
ノンビリとキマジメは諦めることにした。
「あの、じゃあ一緒に…」
「あ!魔物!」
ノンビリの声をかき消すかのように、シトヤカが声を上げた。
「いや、シトヤカさん…」
ノンビリがなんとも言えない顔になっているのを横目に、
「ほら、行くぞ!」
とキマジメは魔物の方に向かっていった。
「なんでそんなにすぐに切り替えられるの?」
ノンビリはそう言いながら、キマジメの後を追った。
キマジメ達の行く先には、オーク達が道を塞いでいた。
「かなり多いな」
キマジメはその数の多さにビックリした。
「こんなの、準備運動ぐらいだぜ」
レイセイは弓を取り出すと、次々にオークを仕留めていく。
やっぱり、コイツ只者じゃないな。
キマジメは改めてレイセイの実力を感じた。
「お!あれがボスか!」
レイセイが指さした先には、他のオークよりも一回り大きいオークが立っていた。
「かなり大きいですね…」
シトヤカがたじろぐ。
「あぁ、だが相手にとって不足なしだ」
レイセイは弓を構えて、オークに向けて矢を放った。
オークはレイセイが放った矢をいとも簡単にかわした。
「な、効かない…」
レイセイはひるまず、オークに向けて矢を放ち続ける。
しかし、オークは攻撃をかわし続けた。
「全部かわすだと…!」
レイセイは愕然とした。
「まだだ!」
キマジメはオークに向かっていく。
しかし、オークはキマジメを弾き飛ばす。
「キマジメさん!今、回復します!」
シトヤカはキマジメを回復する。
「くそ、俺の弓が通用しないなんて…。ここで終わりなのか…」
レイセイがうつむく。
「まだまだだな」
その時、レイセイの耳に声が聞こえた。
レイセイが振り向くと、ノンビリが剣を片手にオークに突進していた。
「そんなんじゃ、俺たちのパーティーに入れないぜ!」
ノンビリはオークに切りかかった。
オークはうめき声を上げながら倒れた。
「相変わらず強いな」
キマジメはノンビリを見て言った。
「まさかキマジメが一発でやられるとは思わなかったけどな」
「うるせぇな」
キマジメがノンビリを殴るフリをした。
「あの…」
レイセイがノンビリ達に話しかけてきた。
「あ、な、なんですか?」
ノンビリが言った。
「俺は今まで自分の弓に自信を持っていたんだ。『この弓があれば、俺は1人でやれる』って」
「はい」
「でも、今の戦いでわかったんだ。それが根拠のない自信だって」
「え?」
キマジメが驚く。
「俺は自信を持って戦えるような男になりたい。だから、俺を連れて行ってくれ」
レイセイが頭を下げた。
いやいや、もっとふさわしいパーティーがあると思うよ。
キマジメは心の中でそう思った。
「いいよ」
ノンビリがキッパリ言った。
「いいの?」
キマジメが思わず聞いた。
「仲間だったらかなり戦力になるし、仲間は多い方がいいじゃん」
ノンビリはニコッと笑った。
「私も賛成です。レイセイさんがいると心強いです」
シトヤカも賛成した。
「…しょうがないな、一緒に来な」
キマジメは観念したようにレイセイの仲間入りを認めた。
「…本当か?ありがとう!」
こうして、レイセイはノンビリ達のパーティーに入った。
「あ、仲間だから堅苦しい話し方はなしで。いいよな?」
「あぁ、いいよ」
ノンビリとレイセイはあっという間に打ち解けた。
俺は時間がかかりそうだな。
キマジメは少し後ろをついていった。