僕①
2027年10月8日金曜日7時25分
テッテレテレンブーテッテレテレンブー
「もう朝か…」
スマホのアラームを止めていつものように洗顔、着替え、食事、歯磨きの順で朝の支度を済ませる。歯磨きの時に髪を半分で分けたところの少し左の6:4か7:3くらいの場所で水で濡らしたりドライヤーを使ったりして少しだけ分ける。分け目を大きくして顔が相手からよく見えるのも嫌だし髪を全部下ろしているとどことなく暗い印象になりそうなので少しだけ分けている。
8時4分
家から学校までは10分くらいなのでいつもこのくらいの時間に家を出る。
8時15分
何も考えずにボーッと歩いていると学校についていた。僕はいつも通り教室に向かう。
「おはよう、楓」
昇降口で聞き覚えしかない声を聞き、後ろを振り返るとそこには幼馴染の南雲蓮がいた。蓮は幼稚園からの幼馴染で小学校、そして中学生になった今でもずっと仲がいい。
「蓮、おはよう。ん?翔太は?」
「翔太は寝坊したよ」
翔太とは俺と蓮の幼馴染である宮村翔太のことである。俺と蓮は1組で翔太は4組でクラスは違うが昔からずっと仲がいい。俺と蓮はいつものように他愛もない話をしながら教室へと向かう。教室には約半数の生徒が登校していた。その中には神崎凛の姿もあった。俺は凛に片思いをしている。そして彼女の隣には七瀬結衣もいる。彼女は学年一レベルでモテていて、普段からよく凛と一緒にいる。俺は窓際の1番後ろにある自分の席に向かう。
「東雲君おはよー」
「ああ、おはよう」
今挨拶をしてきた彼女は学級委員の有田陽真里。誰とでも分け隔てなく接っし、顔もよく、運動や勉強もできる。まさに完璧超人って感じの人だ。
「蓮君もおはよ」
「おはよー」
有田と蓮はそのまま話していた。一方で俺は席にカバンを置き、いつも通りの日課を行う。
「おい、起きろ」
「んだよ、もう来たのかよ」
「お前だってなんだかんだでいつも来るの早いじゃねぇかよ」
「家にはクソ親父がいるからな」
「…ははっ、この会話何回目だよ」
「知るかよ、毎日話しかけてんのはお前だろ」
「でも最初に話しかけてきたのはお前だろ」
「それはそれでこれはこれだろ」
俺の日課とは毎朝、黒羽遥斗と話すことだ。遥斗は毎朝学校に来るのは早いくせに1人で爆睡している。どうも親父さんが中々面倒臭い人らしい。俺と遥斗の会話は他愛が無さすぎて一見クソつまんない会話だが、まあなんだかんだで俺自身はこの時間を気に入っている。
ガラガラガラ
前の扉から担任の羽村幸成が入ってくる。いつもより少しだけ来るのが早く来たようだ。遥斗との話を切り上げて自分の席へと戻る。すると隣の席の如月唯花がこちらに顔を向けて声をかけてきた。
「また遥斗と話してたの?」
「ん?うん。唯花こそまたその小説読んでたの?」
「うん」
「それそんなに面白いの?」
「うん!めっちゃ面白いよ!!!今度貸そうか?」
唯花がニコニコな笑顔でそう聞いてくる。気付けば体までこっちを向いていて体は少しこっちの少し乗り出している。
「遠慮して…」
唯花の純粋な眼差しが俺の心に突き刺さる。
「いや、じゃあ唯花が読み終わったら借りるよ」
「わかった!!」
気がつくと教室で話しているのは俺と唯花だけだった。クラスの約3分の2がこちらに視線を送ってくる。唯花は少し頬を赤ながら体を前に向け、視界を本へと向ける。すると羽村が「よしっ」と言って朝のホームルームを始まる。
「学級委員、号令」
毎日聞く台詞だ。朝の号令は陽真里ではなくもうもう1人の学級委員である柊湊が行う。
「起立、礼」
「「「「おはようございまぁす」」」」
いつも通り湊が眠そうな声であいさつをして他の生徒もやる気のないあいさつをする。生徒が全員座ると羽村が名簿を手に取り、欠席者の確認をする。
「今日の欠席者は…0か」
今日は3年1組計33名全員が揃っているようだ。
「あーそうだ、今日の5時間目の数学なんだが……」
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「うっ…ってて…なんだここ…」
気づくと僕は白い天井の下に横たわっていた。床は固くて頭も痛くて気分も悪い。なんとか体を起こして周りを見渡すと部屋中真っ白で奥に大きな机と椅子がいくつか並べられている殺風景なばしょだった。そしてなにより俺の周りに10人の人間が横たわっている。その中には遥斗や陽真里、七瀬の姿もある。座ったまま周りを見渡していると遥斗も目を覚まし、体を起こした。体を起こした時に俺と目が合い、5秒ほど見つめ合った。すると遥斗が口を開いた。
「ここどこ……?」
そんことは俺が聞きたいところだが相手も全く同じ気持ちだろう。すると遥斗がもう一度口を開く。
「とりあえず他のやつらを起こそう」
「え…あ、ああ」
意外にもかなり冷静な遥斗に戸惑いつつもなんとか返事を返した。俺たちの話し声によってなのか七瀬が目を覚ました。そして木村優吾、市原鈴音も目を覚ました。他の6人にも声をかけ、5人は目を覚ましたが陽真里だけは中々目が覚めない。
5分ほど経って陽真里やっと目を覚ました。結局この部屋にいるのは黒羽遥斗、有村陽真里、七瀬結衣、木村優吾、市原鈴音、上里永太、梶原光莉、安藤悠輔、五十嵐順平、一ノ瀬輝夜、そして東雲楓だ。
この中だと木村、市原、五十嵐はあまり話したことがない。五十嵐は割と静かなタイプだし、市原は幼馴染の佐久間あかり(さくまあかり)と一緒にいることがほとんどのため他の人と話すのをそんなに見ない。木村に関しては割と嫌われていて、遥斗なんかも一時期木村への愚痴をこぼしていた。他のメンバーは一応ある程度は話したことがある。すると目を覚ましたばかりの陽真里が口を開く。
「ここ…どこ?」
「わからない。俺たちも気づいたらここにいた」
陽真里の問いかけに対して安藤がそう答える。すると遥斗が机や椅子のある方へと向かって行く。
トントントントン
『やあ、こんにちは』
「「「「「「「「「「?!」」」」」」」」」」
『私はこのゲームのゲームマスターを努めさせていただきます。Cと申します。』
「ゲーム?C?一体なんのことだ」
安藤が不安と苛立ちを含んだ声でそう尋ねる。
『ゲームというのは今から行われるデスゲームのことです。Cは私のあだ名のようなものだと思って貰えれば結構です。』
その回答な対してまたも安藤が口を開く。
「…は?デスゲーム?」
「なに…それ…」
一ノ瀬もデスゲームという言葉に対して反応を見せる。いや、一ノ瀬だけではない。この場にある全員がその言葉に対して明らかな恐怖、不安、困惑、怒りを覚えているのは明白だ。
「なあ、C。そのデスゲームってやつの説明をしてくれよ」