奥山さんの髪の毛。
「奥山さんてもしかして髪の毛伸ばしてる?」
奥山さんはニタリと笑った。
「あちゃー、バレたか、バレちゃったか、あちゃー」
奥山さんの言い方が隠してたんだけどな〜チラチラっというのが垣間見えて、あかりちゃんはかなりげんなりした。
「なんかものすごくかまってちゃんでげんなりだよ」
「それすごく気のせいじゃない?」
「……まぁ、あれでしょ?なんで髪の毛伸ばしてるかとか聞いてほしいんでしょ?むしろ聴かせたいんでしょ?いいよ、話してごらんよ」
奥山さんは売り物のシュシュを伸びた襟足に結びながら「この伸びた襟足を自由自在に操って女子力アップ!」
襟足を自由自在に操る意味がわからないし、それ売り物。
「んーと、操る?とは?」
「あかりちゃんみたいにふわふわに操る!」
…………
巻き髪!?マッシュウルフで巻き髪!?マッシュは絶対捨てずに巻き髪!?
「待って待って。頭の上半身がきれいな丸で下半身の襟足巻くの?センスどこかにぶん投げた?」
「あかりちゃんたまに暴言ひどいよ、私いつか本当に泣くよ?ぶん投げてないよね。センスの塊凝り固まった塊だよ?」
あちゃーはこっちだ。
「まああれだ。凝り固まったセンスの塊はいいけど、なんかちょっとなぁ〜って思うからそのシュシュは買い取ってくれるかな?」
「え?」
「3500円だよ」
「え?」
「え?」
レースがふんだんに使われた一点物。しかもオーナーが珍しく本気で血迷わずにまともに仕入れたシュシュ。気合しか入ったシュシュ。オーナーのセンスに珍しく感嘆したシュシュ。特等席に陳列したシュシュ。
思い入れは強い。このシュシュを付けてくれる女の子の想像をぶち壊した奥山さん。
「あー!!奥山さんからガパオを記憶を奪いたい位に私ちょっと心に傷ついたかもしれない!」
「どっからガパオきたかわかんないけど謝った方がいい感じ?」
「謝って二度とガパオのレシビ集めるの止めてほしいぐらいだよ」
「……なんか……ごめんなさい。襟足もっと伸びたら買い取るよ……」
シュシュを付けてる奥山さんが想像してもしなくても似合わないのがわかっているから。
「いや、奥山さんには絶対似合わないから私が買うよ」
奥山さんはさっぱり何が悪いのかわからなくて。
あかりちゃんは理不尽と思う。