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第九話 私の太陽


 私は小学校の時にバグ能力者であることが発覚し、その次の日には学園都市に送られた。


 ちなみに私の能力はありきたりな透明化であり、序列者のような火力も特質さも無い平凡なものだった。


 

 (きっと私は能力と一緒でここでも平凡な生活を送るのだろうと考えていた)


 しかし、そんな私の考えを一人の少女が変えてくれた。



 「強いッ! 他の生徒を一瞬で蹴散らしていく!?」 



 それは去年の第二学園武道大会でのことだった。 自分と同じ透明化を持った一人の少女が上級生も含まれる大勢の生徒相手達を完封していた。 


 急に姿を現したと思ったら生徒を一人倒した後に直ぐ姿を消し、さらには地面から高速で飛び出し空中で飛び回るマッチョな男を撃墜しまた姿を消す。


 

 「能力の発動が透明化と思えないほどに速い、そして巧みだッ!」


 透明化の能力は圧倒的な性能の反面、発動に多大な集中力が要り、それも普通の人なら透明になるまで一分ほどの時間が掛かる。 また、姿を消すだけではなく物質をすり抜けるような物理的な透明化はさらに発動時間も難易度も上がる。



 「これは序列者に匹敵する強さですッ!」


 だから、それはまるで私が能力を詳しく知らないときに思い描いていた理想の戦い方だった。 一瞬で能力を切り替え敵を倒す隠密系の能力者の理想の戦い方。



 それを見て、私は思わずつぶやいた。 「・・・透明化でも戦えるんだ」


 私はこの時、序列者やそれに近しい生徒達は殆どが相応しい特質的な能力を持っていることから自分が選ばれない側の人間だと錯覚していた。 そしてそれを諦めの理由にして堕落していた。


 だが、彼女はそんなことを考えたことは一切ないのだろう。 きっと、只管に自分の理想を思い描いて行動しただけなのだろう。


 だから私はその日のうちに彼女に会いに行き、図々しくも言ってしまった。



 「私を弟子にしてください!」


 だが、そんな私の失礼な言葉に彼女は顔色一つ変えずに言った。



 「あなた、名前は?」


 「…私は志村 那奈です」


 それを聞いて彼女は無表情ながら少し笑った気がした。



 「私に着いてきて、透明化の使い方をレクチャーしてあげる」


 「はい! 一生ついていきます四宮様!」


 だから、彼女は私にとっての太陽なのだ。






────それからも四宮様は獅子奮迅の活躍を織り成し、いつの間にか序列五位の地位に登り詰めた。そして彼女は私と同じ様な隠密系の能力を持った生徒を集めて一つの組織を作り上げた。


 「組織名は暗殺チーム、目立たないことが重要な暗殺や潜入を主とする隠密部隊」

 

 「…それなら、【陰を歩む者(シャドウ・ウォーカー)】という組織名でどうでしょう?」


 「…採用、それじゃあ貴方には副官として頑張って貰う」


 「私が副官ですか!?……」


 そんな感じで組織は活動を始め、序列五位に恥じない様々な活躍を成し遂げてきた。 なんと、その中には()()()()()に繋がる証拠まであった。


 

 だから、きっと我々は彼に目をつけられてしまったのだろう。



 「お前達、大丈夫か!?」


 私たちが帰った時、アジトでは負傷をして倒れこんでいる大勢の仲間達がいた。 そして、机の上には一つの紙が置いてあった。


 『これ以上探るな』 たった一文、それだけの言葉で私たちは彼に対する捜索を中止した。




 幸い、私たちの中に死者は出なかった。 だが、人員不足などにより一時的に組織の活動は中止となった。


 

 「これからどうしますか四宮様?」


 「暫く休暇です、勿論あなたも」



 




────私は組織が復活するのを力を蓄え待っていた。 だが、待っていたのは組織の復活ではなく四宮様の横に居座る謎の男だった。


 

 「…私の太陽を汚す男、コロス」


 私は部下と連携し絶え間なく彼に銃弾を叩き込んでいく。 しかし彼は大抵の弾を飛び回りながら回避し、避けられない弾は能力で対処するので中々ダメージを与えられない。



 (お互い決め手に欠けるようですね)


 あちらもこちらの無効化への対抗策が浮かばないようで防戦一方。 だから、ここは一気に私が隙を作り奴を打ち滅ぼす。



 「…去年の四宮様の姿、忘れたことはありません」


 私は四宮様の勇姿を思い出しながら床をすり抜け、そして一瞬能力を解除することで地面から空へ自らの体を射出。


 勿論、狙いは空中で飛び回るナルシスト。 私は彼の背中を見ながら能力を解除し、銃を怨敵に構える。


 (死んでください、ナルシスト…!?)


 私は気づかれていない、確かにその筈だった。 だが、彼は私に気づいていたかのように背面に向けて掌を突き出した。



 「能力を応用してソナー代わりにしてみたのさ、怪我をさせたらごめんね☆」


 そう言って彼は掌から衝撃波を私に放った。 



 (短期間で能力の応用、これが天才か…) 


 私は四宮様が彼を気にしている理由の一端を垣間見た。

 


 

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