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第六話 初めての実践へようこそ


 「こっちに侵入者がいたぞッ!」


 俺は気が付いたらチーター共が集まった何処かの港付近に飛ばされ、黒のスーツに体を覆った彼らから銃弾の雨を浴びていた。



 「とりあえず、適当でもいいから跳ね返すッ!」


 だが、俺は体全体をピッチリ覆うように能力を使って銃弾を跳ね返すバリアを作る。



 「なッ!? 銃弾を弾いたダトッ!」


 俺は彼らが驚いているうちに足からも地面にたたきつけるように反発力を生み出し、体をボールのようにバウンドさせながら物陰に移動した。



 「…大分遠くに離れたし、これでしばらくは見つからないだろ」


 「それはどうでしょう」


 俺の右耳にいつの間にか付けてあったインカムから四宮の声が聞こえてくる。


 「どういうことだ?」


 「透視系の能力を持ったチーターがいるかもしれません、ってもう近くまで来てるみたいですよ」


 「マジかよッ!」


 俺は近づく足音を聞くと直ぐにバリアを張り直し、足音から逃げるようにまた体を能力でバウンドさせる。


 

 「これでも喰らえッ!」


 「それは意味ねえ…ッ!?」


 飛び出した俺に対して一人の黒ずくめの男が銃に引き金を引いたが、それから出るのはどうやら普通の銃弾とは違ったようだ。


 

 「弾が追っかけてくるッ!? これは今の俺の能力で跳ね返せるのか?」


 俺の能力は体から反発力のようなものを生み出してさっきみたいに移動や物理攻撃の反射に使うものだ。だから、物理攻撃以外の何かの力が加わったこれを跳ね返せるのか確信が持てなかった。


 

 「とりあえず避けるしかねェ!」


 「それが賢明ですね」


 俺は取り敢えず足元に力を一気に溜めて、それを地面に向けて放出した。


 「思ったより飛ぶなッ!」


 

 その結果、俺の体は風を切りながら銃弾を上回る速さで空に飛んで行った。 



 「でも、しっかり追ってきているな。 一回能力を当ててみるか」


 俺は手の平に反発力を集め、それを背後からまだ追ってきている銃弾に放った。

 


 「やったか?」


 俺は首を捻って結果を確認するが、如何やら上手くいかなかったようだ。



 「…元気に追ってくるか」


 俺は仕方ないのでホルダーから学園の購買で買っておいたナイフを取り出した。そして空中で体を捻りながら能力を使い、背後から迫っていた銃弾に向けて飛んで行く。



 「どこまでも来るなら叩き切ってやるよッ!」


 どこまでも頭狙って追ってくるホーミング機能は厄介だが、それ故に銃弾の軌道は簡単にわかる。


 

 「つまり、簡単に叩き斬れるってことだッ!」


 俺は銃弾を容易く切り捨て、その場でホバリングしながら落ちていく銃の破片を眺めていた。


 

 「俺にこんなもので殺せるものか…ッテ今度は大量に来たぞッ!?」


 俺は地上から大量に迫ってくる銃弾を発見して思わず驚きの声をあげてしまう。


 

 「これって逃げていいのか?」


 「ここにいるチーター全員を倒すまで逃がしませんよ」


 「…拒否権はどうやら無さそうだな」


 俺は背後から迫ってくる銃弾をすべて切り裂く為に振り返り、ナイフを力強く握りしめる。


 

 「俺ならこれぐらい乗り越えられる…自分を信じろッ!」


 だが、俺の意思とは裏腹に体は死を予感していた。


 





────俺は昔から誰からも愛されなかった。


 父親とはまともに顔を合わせたことはないし、母親は俺を生んで直ぐに死んでしまったそうだ。



 「なんであたしがこんなガキの世話をしないといけないのか…」


 俺の世話はいつも文句を言いながら働くおばさんだった。 俺は彼女の名前さえも知らなかった。



 「聖夜君は天才ですね」


 でも跡継ぎになる為に外部から人を呼ばれ、最低限の教育を施された。


 

 「君なら立派な西園寺グループの跡継ぎになれますよ!」


 だがこれも父が自分のことを意識しているという訳ではなく、昔からの伝統で長男が跡を継ぐから仕方なく教育しているというだけだった。


 父は自分の後のことなど気にしない、だから俺がどれだけ頑張ろうともどうでもいいことなのだろう。


 

 「…なんで僕は跡を継がなきゃならないんですか?」


 「それが聖夜君の役目だからですよ!」


 …きっと、俺が生まれてくる意味は無かったのだろう。 ただ、西園寺の血が流れていれば良かったのだろう。



 「…僕のことを母親は愛していたのだろうか?」


 きっと愛していなかっただろう。 母親以外の人間もきっとそうだ。


 


 …だから、誰にも愛されない僕を俺は愛さなければならない。



 「俺は、こんな所では死なせないッ!!」


 俺は本能に従い能力を二重に発動させてナイフに纏った。 すると、反発力が裏返り純粋な力となった。



 「これでも、喰らえェ!!」


 轟音が鳴り響いた。 振り切った軌道に斬撃が生まれ、目の前の銃弾はすべて跡形も無く崩れ去った。



 「なるほど、反発力をさらに反発することで純粋な力としましたか。 やはり、バグ力は物理法則を凌駕しますね」


 「イマイチ仕組みは分からないが、取り敢えずこれで反撃開始だなッ!!」


 俺は先ほどの感覚を忘れないように、もう一度手のひらに反発力を二重に溜めた。



 「散々俺をコケにしてくれた罪、晴らさせてやるぜェ!」


 そして俺は手の平の力を解き放ち、地面に向けて今できる前回の力で放った。 すると、銃弾を放っていた男たちがいた所には小さなクレーターができていた。


 「ざまあみやがれェ!!」


 「…やりすぎですよ、コンテナなどの弁償費用は天引きですからね」

 

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