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失態

……くそ眠い……。


ひとまず、いつものアラームを止める。


「……だめだ、頭が重い」


土日の間、気になって中々寝れなかったのはまだ良い。


問題は、小説もほとんど書くことができなかった。


小説を書くというのは、精神状態に左右される。


少なくとも、俺はそういうタイプだ。


「……更新を今日は休ませてもらうか」


重たい体を起こし、パソコンの前に座る。


「すみません、体調を崩しているので本日の更新はお休みさせていただきますっと……」


書きだめはしてあるが、それは出来るだけ出してはいけない。


途中で物語を変更する場合や、あとで矛盾点が出た時に修正するために用意してあるからだ。


「ひとまず、二度寝をして……学校行きたくねえ」


アキラさんにはあんなこと言われたけど……。


土日の間に、あいつが広めてるかもしれない。


そんでもって、俺を馬鹿にする。


無論、俺自身小説を書いてることを恥じたことはないけど。






何とか三十分くらい寝ることができ、ベットから起き上がる。


そして、準備を済ませてリビングに向かう。


「おはよう、姉貴」


「おはよう、天馬……今日は静かだったし、あんまり寝てないみたいね?」


「まあ……そんな感じ」


「若いと色々あるわよねぇ……」


「姉貴は……ナンデモナイデス」


殺気を感じたので、大人しく席に着く。


間違ってもアラサーなどと言ってはいけない。


「全く、良い男いないかしら?」


「姉貴なら選り取り見取りだろ?」


「近寄ってくるチャラい男に用はないのよ。もっと、眼鏡とかが似合う紳士とか」


「はぁ……そんなもんかね」


「アンタも、彼女とか作ったら?」


「できたら苦労しねぇ……」


「別に、そこまで容姿が悪いわけじゃないのに」


「嫌味か?」


俺は身長も170、体重も58キロ、髪型もボサボサの陰キャだぞ?


こちとら、モテた記憶どころか……女子と話したのも、昨日が久々だ。


「まあ、そのうちアンタの良さをわかってくれる人もいるわよ……おっと、遅刻しちゃうわね」


「いると良いけどなぁ」


姉貴を見送り、片付けを済ませたら、俺も学校へと向かう。







……どうやら、まだ知れ渡ってはいないらしい。


教室入り、自分の席に着いたが、いつものと変わらない感じだ。


俺は相変わらずぼっちだし、かといって俺に視線が集まることもない。


「……あいつ、言いふらさなかったのか」


もしかしたら……アキラさんのいう通りだったとか?


いやいや、まだわからない。


すると……奴らがやってくる。


「昨日のドラマ見た〜?」


「あの俳優さんかっこよかったよね〜」


「いやいや、あの女優さんが可愛いかったし」


「葉月さんは見たのかな?」


「うーん……まだかな。ビデオには撮ったから今日辺り見ようかと」


……いつもと変わらないか。


俺のことは黙っててくれたみたいだ。


なんだ、意外と良いやつなのかもしれないな。









そう思った俺が馬鹿だった。


昼休みになった瞬間に、奴が俺の机の前に立った。


油断していた俺は、脱出の機会を失う。


「ねえ、少し良い?」


「………」


「聞いてる?」


「……俺に言ってるのか?」


「それ以外にいる?」


周りを見るが、俺以外にはいない。


どうやら、逃げる事は出来そうにないか。


「ここでは場所が悪い。とりあえずついてこい」


「ちょっ……わかったわ」


その後、行きに購買でパンを書い、いつもの校舎裏に向かう。


「……俺をどうするつもりだ?」


「えっ? 何が?」


その顔はきょとんとしており、特に何も考えていないように見える。


……調子が狂うな。


てっきり、黙っててやるからと……何か要求されるかと。


「いや、まずは確認だ。どうして、俺に話しかけてきた?」


「それは……作品の更新がなかったから」


「……はい?」


「わ、私、あれから君の作品見て……面白かった」


「……そ、そうか」


……だめだ、にやけそうになる。


小説を書くのは楽しいけど、その言葉のためにやってる面もある。


「土日を使って、ずっと読んでて……いつも十二時に更新されてた」


「ん? ……ああ、今連載中のやつか」


今書いてるのは現地主人公のファンタジー小説だ。


割と王道系の成り上がり物語を作っていると思う。


「それかも? 他にもいくつかあったけど。じゃなくて! 今日の更新は!? あれの続きは!?」


「ちょっ!? ち、近いって!」


何やら良い匂いがするし、立派な二つのモノが目の前で揺れている!


しかも、こいつ……本当に可愛い顔してるな。


「良いから! どうしてないのよ!?」


……と、とりあえず、急いで説明しよう。


じゃないと、俺の精神がまずい。


「こっちは、お前に知られて気が気がじゃなかったんだよ」


「……どういう事?」


「お前に知られたから、学校のやつらにバラされるとか。あと、それをネタに馬鹿にされるとか……」


「どうしてそんなことするのよ?」


「…はい?」


「バラすのは、ペンネームを使ってるから良くないのはわかってるし……君の作品は面白かったから、馬鹿にするつもりもないし」


「じゃあ、なんで教室で話しかけた?」


「だ、だから……お昼に更新がなかったから……それを楽しみにしてて」


……つまりは、待ちきれなくてってことか?


俺の作品が楽しみだけど、あるはずの更新がなかった。


だから、更新時間であるお昼過ぎに声をかけたと。


……更新しとけばよかったァァァ!!


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