友達?
ひとまず、本屋を出たら……。
「んで、どうするよ? お礼は何がいい?」
「えっと……」
さっきから考えているけど、全然思いつかない。
その時、俺の目の前にとある建物が目に入る。
「じゃあ、あれでもいいかな?」
「あん? マックでいいのか? 金ならもう少しあるぜ?」
「いや、あそこが良いかな」
「よくわかんねえが、俺に気を使ってるわけじゃないんだな?」
「そういうわけじゃないよ」
「なら良い。んじゃ、行くとするか」
その後、すぐ近くのマックに移動して……。
「何がいい?」
「お昼は食べてるからて……シェイクとか?」
「わかった。じゃあ、俺が適当に頼むから席を取ってくれ」
「う、うん」
「どうした? きょろきょろして……」
「い、いや、何でもない」
自慢じゃないが、俺は……マックの中で食べたことはない。
友達もいないし、一人で食べる勇気もない。
だから、ここを選んだってわけだ。
奥の方の空いている席に座り、少し待っていると……。
「おっ、サンキュー」
「う、うん」
だめだ、こういう時の返しがわからない。
「悪いが、俺は飯を食うぜ」
「別に気にしないでいいよ」
どうやら、気にしてる様子はない。
これでよかったのか?
「ほら、お前……野崎も食えよ」
「わ、わかった。ありがとう」
「おう、大したもんじゃないけどな」
その後、佐々木君は黙々とハンバーガーを食べている。
これって、なにか話したほうがいいのか?
「佐々木君は妹さんがいるんだっけ?」
「おう、まだ小学生だけどな」
「なるほど。俺には歳の離れた姉さんがいるから、反対だね」
「姉貴か、憧れるな」
「そう? 確かに頼りになるけど……俺は妹か弟が欲しかったかな」
実を言うと、俺も妹や弟が欲しかった。
でも、親父や姉貴にそんなことを言えるわけがない。
「そうだよなぁ……まあ、ないものねだりってやつか」
「そういう感じかなぁ」
「やっと口調が砕けてきたな。さっきも言ったが、フランクでいいぞ」
「……わかったよ、なるべくそうする。でも、なんで?」
「俺はあんまり人とつるむのは好きじゃない。お前もそうだろ?」
「まあ、佐々木君とは種類が違うけど」
俺はぼっちで、彼は一匹狼って感じだ。
「大して変わんねえよ。んで、俺はお前が気に入った。あの啖呵もそうだが、さっきも俺に恐れずに声をかけてきた。俺はこんな見た目だからな、声をかけ辛いのは自覚がある」
「……あれは、葉月が馬鹿にされたから。それと、佐々木君は助けてくれたし。本人が、どう思うかは別として」
「あれはお前が頑張っただけだ。葉月ねぇ……ああ、あの派手な女か。なんだ、惚れてるのか?」
身を乗り出し、こそっと聞いてくる。
「えっと……まあ、そうだと思う」
「まあ、そうじゃないとああは言えないわな」
「正直言って、まだよくわかってないんだけどね」
「大丈夫だ、俺もよくわかってねえし。というわけで、相談には乗れん」
意外……確かに怖いけど、背も高いし見た目も良いし。
「モテそうだけど……」
「俺自身が興味ねえんだよ。バイト三昧でそんな暇もないしな。うちには母親しかいないからよ。おっと、気を使うなよ?」
「それなら平気……って言っちゃあれだけど、うちには父親しかいないから」
「……へぇ……お互い、苦労するな」
「まあね。でも、こればっかりは仕方ないかなって」
「……ライン交換するか?」
「へっ? ……い、良いよ」
「んじゃ、決まりだな」
お互いにスマホを出して、ライン交換をする。
「できたな。おっと、喋ってないで食べないと……」
「あっ、俺も溶けちゃってる」
「おいおい、奢ったんだから勘弁しろよ」
「いやいや、そっちの話が長かったし」
「いや、お前から話題を振ったし」
……すごい、普通に話してる。
それに、男子そのライン交換は初めてだ。
……これって、友達ってことでいいのかな?
うーん……よくわからない。




