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WEB作家で陰キャの俺、小説を書いてるのが陽キャのギャルにバレる~そしたらラブコメみたいな展開になった~  作者: おとら@7シリーズ商業化
一章

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19/63

朝の出来事

翌日の朝……俺はいつものように小説を書く。


昨日のだるさが嘘のように、風邪は治っていた。


そして、やる気も漲っている。


ふふふ、今なら何でもできそうな気がする。


「そう——今ならラブコメすら書けるかもしれんぞォォォ!」


「うるさいわねっ! もう一回寝かすわよ!?」


「ご、ごめんなさいぃ!」


丁度起きてきた姉貴が、ドアを開けて入ってくる。


「まったく、しようがない子ね。どれ……うん、問題ないわね。今日は学校行く? 一応、様子をみるって意味でね」


……本音を言えば休みたい。


そうすれば、一日中小説を書いていられる。


以前の俺なら、そうしていたに違いない。


学校には楽しいことなんかないし。


でも、葉月が心配すると思うし。


「いや、学校行くよ」


「……へぇ? 珍しい。やっぱり、彼女がいるから?」


「はぁ? あれはそんなんじゃない。というか、どう見たって俺とは釣り合わんし」


「まあ、そうね。あんな可愛い子、アンタにはもったいないわね」


「ぐはっ……」


自分で言うのはいいが、、人に言われるとダメージが……!


「でも、見舞いに来てくれるんだし。少なくとも嫌われてはないでしょ。というか、どこで知り合ったのよ?」


「……とりあえず、あとで話すよ」


「ふふ、そうね。じゃあ、適度に頑張んなさいね」


そう言い、部屋から出て行く。


「さて……書くとしますか」


意識を集中し、俺はパソコンに向かって文字を打ち込んでいく。








一話を書き終え、その日の更新予約をし……朝の準備を済ませる。


「それで、どうして仲良くなったの? どう考えても、アンタとは違うタイプだし」


「んなことはわかってるよ……実は……」


ひとまず、こうなる経緯を説明する。


こうなった以上、色々と聞かれるのも面倒だし。


「あははっ! うけるわね!」


「そりゃ、どーも」


「そういうことねぇ。ラブコメイベントかぁ……面白いわね」


「まあ、俺もよくわかってないし」


「でも、いいんじゃない?アンタは人見知りだし。ついでに鍛えてもらいなさいよ」


「ぐっ……わかってるよ」


「あと、そのうち……まあ、それは早いか」


「あん?」


「何でもないわよ。とりあえず、あの子ならいつでも連れてきていいわ」


「そんな機会はない。昨日はたまたまだし」


「そうかしら? わたしの予想では、そうじゃないと思うけど」


「へいへい、そうですか」


葉月が俺の家に来たのはたまたまだし、ただのラブコメイベントのための付き合いだ。


もう俺の家に来ることなどないだろうよ。








……と思っていたのだが?


「今……なんて言った?」


「おはよーって言ったよ?あと、風邪は大丈夫? って」


登校した俺の腕を組んできたのはまだいい……はい、気持ちいいです。


その後に心配されたのはありがたいと思う。


問題は、その後の台詞だ。


「その後に言ったことだよ」


「えっと……君のおうちにいきたいなってやつ?」


「それだ」


挨拶を済ませた後、急に言い出した。


「……ダメ?」


「……ダメではない」


美少女の上目遣いを断れる男がいるだろうか? 否! いるわけがない!


「でも、この間も言ったが……」


「平気平気〜、襲われたら——潰すから」


「ひぇ——」


一瞬で俺の背筋が凍りつく。


それは全男性にとって、この世で一番恐ろしい台詞だ。


「でも、君なら平気だよ」


「うん? どういう意味だ?」


「……別に手を出していいって意味じゃないから!」


「イテッ!? 何で叩くんだよ! 意味わからん! 俺は、俺が無害だから平気って意味か聞いたのに」


「へっ? ……そ、そうだし! 君はへなちょこだし!」


「……ほっとけって」


「と、とにかく! そういうことだから!」


俺をおいて、校内へ行ってしまう。


……結局、何がしたかったんだ?







……もうぅ〜! 変な感じになっちゃったじゃん!


そういう意味で言ったんじゃないし!


いや、そりゃ……野崎君は良い人だし、気に入ってるけどさ。


まだ、そういうアレじゃないし。


「というか、アレって何よ」


全然、何でもないし。


結局、私が言いたいことは言えなかったし。


机に突っ伏して、昨日のことを思い出す。





あの後、急いで家に帰って……。


「ただいま!」


「おやまあ、早かったのねぇ」


「お姉ちゃん! おかえりなしゃい!」


「結衣ねえ! おかえり!」


「二人とも、たたいま。おばあちゃん、急に頼んでごめんね」


「いいのよ、私を頼って」


「でも……」


「まあまあ、とりあえず外に行きましょう」


おばあちゃんに押され、玄関前に連れて行かれる。


「どうしたの?」


「実は言うと……嬉しかったの」


「えっ?」


「結衣は、全然弱音とか言わないものねぇ。そりゃぁ、私達だって生活はあるけど……それでも、孫が可愛いもの。困ったときは、遠慮なく言っていいの」


「おばあちゃん……」


そうだ、彼の小説にも書いてあった。


家族は頼って甘えても良いんだって。


もちろん、その分を返す必要はあるけど。


「おじいちゃんも喜んでたわ。わしのせいで、遠慮をしてしまうからと」


「おじいちゃんも……ううん、そんなことないし」


「とにかく……できるかどうかわからないけど、連絡だけはしてちょうだい。そしたら、おばあちゃん頑張るから」


「……ありがとぅ」


「いいのよ、孫なんだから」






その日の夜、二人が寝た後に、お母さんに話があると言われる。


私は、てっきり怒られるかと思っていたけど……。


「ごめんね、結衣」


「えっ?」


「私ったら、すっかり甘えることに慣れちゃって……お母さんにも怒られちゃったわ」


「そ、そうなんだ」


「私も、もうすこし頑張るから……」


「ううん、平気。お母さんは働くことに集中してて」


「でも……」


「大丈夫! 本当にきつくなったら言うし!あと、最近は家での楽しみもできたから」


「そういえば、ずっと何かを眺めてるわね」


「うーんと……ライトノベルってわかるかな?」


「わかるわよ。職場の人たちの中でも好きな方がいたりするし」


「実は、知り合いの人が書いてるの。それを読むのが楽しくて。私と同い年なのに、すごいなって思って」


「あら、そうなのね……男の子?」


「へっ? ……ち、違うし!」


「あらあら、私に似て美人さんなのに男っ気ないと思ってたら……」


「……それ、自分で言う?」


「「ふふっ」」


二人で顔を見合わせて、小さく笑う。


そういえば、こんな風にお母さんと話すのは久しぶりかも。


余裕がないから、ひどいことを言っちゃいそうだったし。





……ほんとに、野崎君には感謝しかないよね。


きちんとお礼言いたいのに、なんか恥ずかしい。


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