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WEB作家で陰キャの俺、小説を書いてるのが陽キャのギャルにバレる~そしたらラブコメみたいな展開になった~  作者: おとら@7シリーズ商業化
一章

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教え合う

 その後、食べ終わったら本題に入る。


「俺は国語、英語、歴史が得意と」


「私は数学と化学と物理ね」


 それぞれ採点された紙を見せ合う。


「なるほど、見事に真逆だな」


「そうだね」


 お互いに得意な科目は90点くらいで、苦手なのは60点くらいだ。


「君は何がわからないの?」


「何って……全てだよ。計算とか記号とか、わけがわからん」


「なんで? 公式に当てはめれば良いだけじゃん」


「あん? それがわからん。そっちこそ、何がわからないんだ?」


「何って……答えがないからわかんないし。心情とか、英語の場面によって単語の意味が違うとか」


「いや、文章の中に答えあるし。だいたい読めばわかるだろ?」


「はい? 全然わかんないし」


「「………」」


 二人で見つめ合い、沈黙してしまう。


「……よし、まずは俺から教える」


「うん。じゃあ、よろしくね」


「まずは、ここの文章が……」


 何か言おうとしたが、頭が真っ白になる。


 何故なら、葉月が身を寄せてきたからだ。


「ふんふん……どうしたの?」


「い、いや、なんでもない」


 近いんだよォォォ!


 なんか良い香りがするんだよォォォ!








 その後、双方教えあい……。


 気がつけば、六時になろうとしていた。


「ふんふん、なるほど……何となくわかったかも。登場人物の気持ちを考えれば良いってこと?」


「まあ、そういうことだ。英語でも同じだ。主語の文章を読んで、その人物がわかれば自ずと答えは出る」


「じゃあ、参考までに君の作品以外のも読んでみようかな」


「ああ、そうしてくれ」


 よしよし、これで布教活動ができる。


 俺以外のを読んで……なんかもやっとするのは気のせいか?


「うん、そうしてみる」


「……今日はこの辺にしとくか。俺も帰って執筆しないとな」


「私も帰らないと」


 席を立ち、二人でレジに向かい、会計をすませる。


 そして、店の外に出る。


「ところで……本当に良かったの?」


「ん? ああ、このくらいなら」


「……ありがとう、ご馳走様です」


 そう言い、律儀にお辞儀をする。


 ……意外と、こういうところあるんだな。


「んじゃ、俺はこっちだから」


「私はあっちだから。じゃあ、また……あっ」


「ん? ……ああ、雨が降ってきたのか」


「あちゃー……傘持ってきてないや。まだ、梅雨には早かったし」


「じゃあ、これを使えよ」


 俺はカバンの中から折り畳み傘を取り、葉月に握らせる。


「えっ? えっ?」


「お前は妹と弟がいるんだから、風邪を引いたら大変だろ。んじゃ、またな。お陰で捗りそうだ」


 押し問答になっても面倒なので、答えを聞かずに走り出す。


「ちょっ!?」


「今日はありがとなー!」


 そして、そのまま家へと向かう。


 ……少しずつ強くなる雨に打たれながら思う。


 今日は普通に楽しかったと。







 ◇


 ……行っちゃった。


 無理矢理押し付ける形で……多分、私が気を使わないように。


 ひとまず、ありがたく傘をさして、家に向かって歩き出す。


「なんだ、しっかり男の子じゃん」


 まあ、それは知ってたけど。


 ……私のおっぱい見てたし。


 本人はバレてないと思ってるみたいだけどね。


 私は、そういうのに敏感だし。


「……別にいいんだけどね。自分から腕を組んじゃったし」


 ちょっとやりすぎかなって思った。


 ああいうことしないし、しないようにしてきたし。


 でも、不思議と嫌な感じはしなかった。


「なんだろ? 彼が恥ずかしがるのが面白い?……うん、そうかも」


 それにしても……褒められるとは思わなかったなぁ。


 ああいう人達に注意すると、男の人は引いたりするらしいし。


「嬉しかったかも」


 何より、嬉しかったことがある。


 自分の気持ち……罪悪感をわかってくれた。


 弟や妹を差し置いて、自分が贅沢をすることを。


 私が、それを一番気にしてることを。


「なんでわかったんだろ? 私、わかりやすかった? ……そんなことないよね」


 割と、みんなには本音を悟られないし。


「うーん、女心はわかってなさそうなのに……変なの」


 とりあえず、これで借りが増えちゃった。


 また、彼のためにラブコメの勉強しとかなきゃね。






 二十分くらいかけて、家に到着する。


「ただいまー」


「あらあら、お帰り」


「うん、おばあちゃん」


 扉を開けると、母方の祖母が出迎えてくれた。


 週に二、三回、こうして送り迎えの世話や料理などをしてくれる。


 そのお陰で放課後限定だけど、私は自分の時間を過ごすことができるので感謝しかない。


「二人は遊び疲れて、今さっきお昼寝したわ。ご飯はラップしてあるけえ。じゃあ、私は帰るわね」


「ありがとう、おばあちゃん。おじいちゃんによろしくね」


 おじいちゃんは足腰が悪く、中々家から出れない。


 なので、おばあちゃんも私の家に付きっ切りってわけにはいかない。


「ええ、また来るのを楽しみにしてるわねぇ」


「うん、絶対行くから」


「あら……見ない傘」


「あっ……か、借りたの」


「男もんの傘だねぇ……おやおや」


「お、おばあちゃん! もういいから!」


「はいはい、帰りますよ」


 玄関で、おばあちゃんを見送る。


 ……別に、そういうじゃないし。


 ただ、気に入っただけだし。


 私は、そんなにちょろくないんだから。

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