契約?
……よし、書けた。
今日はいつも通りに起きて、規定の文字数を書けた。
「ふぅ……予約投稿も完了っと」
……葉月も読むのか。
そう思うと、今更ドキドキしてくる。
クラスの人が、自分の作品を読むことに。
朝の準備を済ませたら、姉貴を見送る。
「今日は少し遅くなるから。多分、夕飯には間に合わないかも……」
「いいよ、姉貴だって自分の時間があるし」
「生意気言わないの。今日は、ただの会議よ。友達と遊ぶ時は、もっと前もっていうわよ」
「わかった。じゃあ、飯は適当に食うよ」
「お金は置いとくから、しっかりしたの食べなさい」
「わ、わかったよ」
「よろしい」
その後、俺も学校へ向かっていると……。
後ろから、誰かの気配がして振り向く。
「おはよー」
「……はい?」
なんだ、この柔らかいものは……未だかつて経験したことない感触だ。
「おはよー、野崎君」
「へっ?」
良く良く見てみれば……葉月に腕を組まれていた。
な、なんで腕を組まれてる?
というか……おっぱいが当たってる。
……えっ——おっぱいダトォ!?
「聞こえなかった? おはよー」
「な、何をしてるんだ!?」
「んっ……きゅ、急に動かないでよ」
「ご、ごめん!」
腕を動かした際に、何やらふわんとした感触が……これが谷間に挟まれるってやつか!
俺の人生には起こりえないイベントだと思っていた!
「ほ、ほら、いこ」
「い、いや、だから……」
「とりあえず、こっちに来て」
「わ、わかったから!」
そのまま引っ張られて、校庭を進んでいく。
当然ながら、視線が集まってくる。
なにせ、葉月は学校一モテる女子だ。
「嘘!?」
「誰だあの冴えないやつ!」
「うわぁ、釣り合ってない」
ま、まずい……胃が痛くなってきた。
俺は見られることに慣れてないんだよ……。
そのまま、校舎の裏につれていかれる。
同時に、ようやく腕を離してくれた。
「……なんのつもりだ? 新手のいじめか?」
こうすることによって、俺を惚れさせる。
そして、告白させてふると……そんな手には乗らない。
俺はそういう漫画や、ラブコメ小説を見てきたからな!
「なんのこと?」
「……違うのか?」
「私は、君のためにやってるんだけど?」
「俺のため? まるで意味がわからん」
「そうよ。君がラブコメがわからないって言ったから。あのあと、悔しくて君の作品を色々と見たんだけど……君の作品って女の子あんまり出てこないけど……確かに、女の子が変だったわ。そんなこと言わないし、思わないかなって。あぁ、女子のこと知らないんだなって」
「ぐはっ……」
俺の心に深刻なダメージ……!
ちょ、直接感想を言われると、こんなに苦しいのか!?
「どうしたの?」
「い、いや、いい……続けてくれ」
これを読者にいっても通じないことはわかってる。
読者が悪いわけではなく、作家側の問題だ。
作者とはデリケートな生き物なのです。
皆さんも、お願いだから優しくしてあげてね!
「それで……ラブコメがわからないなら、実際にラブコメすればいいかなって」
「ラブコメがわからないなら、実際にラブコメをすればいい……どういうことだ?」
「もう! 鈍いわね! 私が題材になってあげるって言ってるの!」
「……何?」
「つまり、さっきのような感じで腕を組んだり……その、どうだった? ドキドキした?」
そう言い、上目遣いで頬を赤らめる。
はい、今現在ドキドキしてます。
何こいつ、めちゃくちゃ可愛いんですけど?
陰キャの俺を殺す気ですかね?
「お、おう」
「それなら良かったわ。ああいう感じで、ラブコメのイベント?ってやつをしていったらいいんじゃない?」
「なるほど、実体験に基づく経験値か……悪くない」
ファンタジーは世界観が違うので、妄想でどうにかなる。
しかし、ラブコメは現実に近い分、その辺りが難しい。
「でしょ? 経験しなくても書けるって人はいるみたいだけど、君は違うみたいだから」
「へぇ、よく知ってるな?」
「え、えっと……昨日、あれから色々と調べたし……」
「……待て。それで、葉月になんの得がある? 俺なんかといたら、カーストトップから落ちるのでは?ましてや、友達すらいなくなるんじゃないか?」
「えっ? 君の小説が見たいからだよ? だって、そのせいでスランプなんでしょう?」
「そ、そうか」
まじか……こいつ、めっちゃいいやつだったとか?
「あ、あと! 男子に告白されるの迷惑なのよ! 私、今のところ彼氏作る気ないし。あと、別にカーストトップとか知らないし。友達も、別にいなくなったりしないと思う」
「はぁ〜モテる奴の苦労ってやつか」
「別にモテても良いことないし。好きな人に好かれなきゃ意味ないから。あと、少し人付き合いに疲れたのよ……君といれば人は寄ってこないかなって」
少し鼻に付くが……そういうキャラを作るときに良いかもしれない。
「最後のは余計だ。ただ……俺自身、その経験が積めるなら助かる」
「じゃあ、今日から特訓ね。あっ、その代わり……」
「葉月に先に小説を見せれば良いんだろ?」
「そゆこと。じゃあ、教室行こっか」
そう言い、俺に手を差し出す。
「あん?」
「て、手を繋ぐのよ」
「い、今からか?」
「これも練習よ」
「わ、わかった」
その日、俺は初めて女子と手を繋いだ。
何とも言えない柔らかさと、高鳴る鼓動を感じる……。
そうか、これがラブコメってやつか。




