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「いよいよダンジョンに潜るんだ!ワクワクだな!」
本当に長かった。
この間まで毎日地下水道に潜ってたっていうのに。
「私は少し怖いわ。魔物がいっぱいいるんでしょう?」
ルーナは眉間に皺を寄せ、ネックレスを握りしめている。
魔物が苦手なんだもんな。
「無理せず来なくてもいいんだぞ?」
「いやいく!それでイズルが死んだりしたら、後悔してもしきれないし」
さっきまでの弱気はどこへやら、ルーナはすっかりやる気のようだ。
説得は無理か。
「じゃあ行こうか!」
「うん!」
ギルド受付でユウセイらと合流し、ダンジョンへと出発した。
「ユウセイ、今回のダンジョンてなんてとこなんだ?」
「鬼宿寺ってとこ。オニという種族の魔族がいる場所なんよ」
「オニも色々だからな。アカオニとかアオオニとか」
ユウセイもクライスも詳しいな。
続けてベラが思いついたように口を開いた。
「クロオニっていうのもいたよね!あれは強かったなぁ。クロオニがいたらルーナちゃんは下がったほうがいいよ!」
「ひぇえ。がんばります」
今回の大物はクロオニか。
ルーナは絶対に守ってやる!
「さて、じゃあ入ろうか」
薄暗い森を前に大きな木製の門がある。
風が不気味に木々を鳴らしていた。
お化け屋敷かよ。
「ほんとにここにはいんのかよ!?」
「あらイズル君びびってるの?」
「び、びびってねぇよっ!」
びびってなんかいない。
ちょっぴり足が震えるだけだ。
武者震いだ。
「えぇやっぱりびびってんじゃん」
ベラがここぞとばかりに煽ってくる。
ムカつくなぁ!
「あの、イズルと私は帰ります。ね?イズル」
ルーナは足どころか体中が震えている。
これダメなんじゃないか?
「いやいくよ!大丈夫平気平気!」
「心配すんな。ここなら俺一人でも受けきれるから安心してくれ」
三人とも余裕そうだな。
何回も入ったことあるんだろうな。
そう思うと落ち着いてきた。
「大丈夫だ。ルーナ、いくよ!」
「……わかった」
ルーナも観念したようだ。
よし!ユウセイパーティーの初陣だ!
「よし!じゃあイズル、ディバインプロテクションとクレアボヤンスをかけてくれ!」
「クレアボヤンス?」
「やってみろって!」
「ディバインプロテクション!クレアボヤンス!」
ディバインプロテクションによって五人が金色のオーラを纏う。
そして……この緑の帯はなんだ?
「見えてるか?イズル」
「なんだこの緑の帯」
「みんなの体力をあらわしてんのよ。俺のが削れたら回復よろしく!」
「そんな便利なスキルがあるのか!?」
「逆にそれでもなきゃ、回復が難しすぎるだろ。
戦闘中に要求なんてなかなかできないしな」
「たしかに」
でも、これは便利すぎるだろ!
今までどれだけ神経を使ってきたことか。
「じゃあルーナちゃんもマジックブレードとファイアエンチャント、よろしく!」
「マジックブレード!ファイアエンチャント!」
ルーナは魔法の刃に炎を纏わせる。
臨戦態勢だ。
さらに三人も武器を構える。
「デトフィケーション!」
「プロトルード!」
「エルプティオマギカ!」
三人のバフがかかり、門が開いた。
「シールドバッシュ!ルーナ!スイッチ!」
「はいっ!」
門を越えるとすぐに接敵した。
クライスが盾をアカオニへと叩きつけ、そのまま一歩下がると、ルーナが魔法の刃を手にアカオニへと向かっていく。
「メテオストリーム!」
ベラが魔力を解き放つ。
中空に出現した無数の火の玉がアカオニ目掛けて一斉に襲いかかった。
煙の中のアカオニは跡形もない。
これがソーサラーの大魔法か!
「さっすが!ベラの魔法はしびれるねぇ」
「あんたもいいアームスティールだったよ!」
「ルーナ、いいスイッチだ」
「ありがとうございます!」
最初の戦いだけど連携は完璧だ。
ルーナはスイッチなんてどこで覚えたんだろう?
「エリアオブヒール!」
緑の光があたりを包み、全員の体力ゲージが満タンになる。
これで次の戦闘も万全だ。
「よし!じゃあ進んでいこうか!」
「おう!」
クライスとユウセイは前に、その次がベラ、最後は俺とルーナだ。
「なあルーナ、スイッチなんてどこで覚えたんだ?」
「あれはクライスさんが下がったから代わりに前出たんだ!」
「え、知らなかったのにできたのか!?」
「うん!」
ニコニコしていて、とんでもない才能だな。
ちょっと怖いくらいだ。
「お!次のが来たよ!」
ユウセイの声に前を向くと、たしかに魔物の群れがいる。
アカオニ2匹にアオオニ一匹か。
「群れだけど手順はさっきと同じだ!ガーディアンズソウル!」
クライスの盾が赤色に輝き、オニがクライスへと向かっていく。
注意を惹くスキルだ。
「アームスティール!」
「トクシックソーン!」
ユウセイとベラのデバフが掛かり、オニ達の攻撃力と素早さが落ちる。
「シールドバッシュ!スイッチ!」
「はいっ!」
ルーナとオニ達がぶつかる。
ルーナの剣が次々とオニ達を焼いていくが、攻撃力不足なのかオニ達は攻撃の手を止めない。
そのうちに攻撃がルーナを捉え始める。
一発、二発。ルーナの体力ゲージは半分を切り、黄色く光始めた。
危ないっ!
「ルーナっ!ラージヒールっ!」
「メテオストリーム!」
ルーナを緑の光が包むのとオニ達が炎の海に沈むのが同時だった。
煙が晴れると、やはりオニ達は跡形もない。
とんでもない威力だ。
「魔力を込めすぎて少し危なかったね。ごめんね!」
「いえっ!そんな!」
ベラがルーナに向かって手を合わせて謝るが、ルーナは恐縮しているようだ。
「俺も回復が遅れたよ。ごめんルーナ」
「ううん大丈夫!ありがと!」
ルーナは相変わらずニコニコだ。でもオニの攻撃を受けたとき、結構怖がってたよな?
俺も怖かった。
このままルーナを前衛にしていていいのだろうか?
「なあユウセイ、やっぱりルーナを後衛にした方がいいんじゃないか?」
しかしユウセイは首を振った。
「これから先のことを考えるとねぇ」
「だな。サブタンクは必要だ」
クライスも同じ意見か。
「私は大丈夫だから!」
ルーナは笑ってそう続ける。
だがその笑みはどこかぎこちない。
下を見ると、林の中に立つ両の足はかすかに震えていた。




