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よろしくお願いします。
「なにもいないな」
ゴブリンの掃討から五時間。
平野を移動し続ける俺たちはあれ以降魔物と遭遇していなかった。
日はまだ照っているが、段々と影が長くなってきた。
「さっきのゴブリンがこのあたりの魔物を根こそぎ倒していたのかな?」
「それだね!」
同調するユウセイをベラが叩く。
「ユウセイ、ベラ。俺はルーナはサブタンクがいいと思う」
パーティーに役割がある。
基本的にはダメージディーラー、ヒーラー、タンクの3つの役割が存在する。
ナイト系統がタンク、クレリック系統がヒーラーを担い、あとはディーラーとして魔物を殲滅するのが基本だが例外もある。
三次職のモンク、エンチャンターとその派生四次職はタンクをこなすことが可能なのだ。
「俺もそれがいいと思う。ルーナちゃんには俺の視界に入っていてほしいしね」
ユウセイはウインクしながらそう言った。
「理由はともかく私も同意見よ。いいトレインだったわ」
呆れたように首を振りつつも、ベラも同意している。
魔物の群れを纏めることをトレインと言うことがある。
さっきの戦闘で麻痺を使って魔物を固めていたことを評価されているのだろう。
たしかに完璧に抑え込んでいた。
「でもルーナは魔物が苦手で!」
「それはわかっている。だからルーナ次第だ。どうかな?」
クライスはそう言ってルーナの方を見やる。
ルーナはやや思案して、口を開いた。
「私は魔物が怖い。でも魔物を怖れるままの私ではいたくない。
やります!サブタンク」
胸の前で腕に力を込めつつ、ルーナはそう言い切った。
「おお!」
「頑張ってね!」
「よろしく頼む」
三人は喜んでいる。
だが、無理させてるんじゃないか?
魔物が怖いのに前衛なんて、できるんだろうか?
一回の野営の後、昼を前にして俺たちは港町フルリオへと到着した。
フルリオは随分と賑やかだ。
王都の喧騒を知る俺ですらそう思うのだから、よほどだろう。
さすがは港町だ!
今日は半日ここで羽根を伸ばし、明日の朝ここを出る予定らしい。
「ねぇイズル!あっちの出店も面白そうよ!」
「ああ待てってルーナ!あまり動き回るとはぐれるぞ!」
港町に到着すると五人では行動しづらいだろうからと俺とルーナ、ユウセイら三人で別れて行動することになった。
しかしルーナのはしゃぎようは凄まじく、三分割になるのは時間の問題だ。
「じゃあ手繋いで!そしたらはぐれないでしょ!」
「しょうがないな」
手を握ると、ルーナは顔を真っ赤にして照れる。
自分で言ってきたくせに。
「そんなに照れるなら言うなよ。顔真っ赤だぞ」
「イ、イズルだって!」
「移ってるんだよ!」
たしかに顔が熱い。俺の顔も赤いのだろう。
照れからかルーナも少し落ち着いてくれたようで、二人でゆっくりと観光していく。
階段が多く道が狭いこともそうだが、潮風や日に焼けた人の多さは王都と大きく違っていた。
出店につくときらびやかなアクセサリーがある。
「ねぇこれ似合うかな?」
ルーナは青い宝石のついたネックレスをつける。
赤いチュニックに青い宝石が対照的で美しい。
「すごくよく似合ってる!」
「ほんとに!?」
「うん!」
ルーナは嬉しそうにして、値段を見る。
「え、こんな小さいのに、金貨二枚もするの!?」
「お客さん、それはサファイアのネックレスだ。
お小遣いじゃ買えないよ。親御さんは?」
ルーナがしゅんとして、ネックレスを戻す。
金貨二枚か。
痛い出費だな。
「これ下さい!」
俺は金貨を二枚差し出した。
「え、坊や。これ坊やのお金かい?」
「ああ。俺は冒険者なんだ。それで売ってくれ」
「もちろんです!」
商人はネックレスをルーナにかけて、褒めそやした。
「大変お似合いです!宝石も輝いて見えます!」
「ルーナ、ほんとによく似合ってるよ」
「ありがとう!ほんとにいいの?」
「いいんだ。また稼げるさ」
「一生大切にするね!」
夕方宿屋で合流すると、ユウセイ達はネックレスに驚いた。
「え!そのネックレスどうしたの!?」
「イズルに買ってもらったの!」
「くっそう!俺もなんか買ってやりたい!指輪とかどうかな?ルーナちゃん」
「ルーナ、こういう大人についていっちゃだめだからね!」
「そうだぞ。変質者が」
ベラとクライスはユウセイに対して冷めた視線を向けている。
「うん!わかった!」
ルーナはテンションが上がりっぱなしだ。
少し頬が上気していて色っぽい。
こんなルーナが見れるなら、出費も悪くないな。
俺たちは宿屋で一夜を明かし、フルリオを後にした。
お読み頂きありがとうございました。
明日もよろしくお願いします。




