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10話です。お願いします!
宿屋についてしばらくするとドアがノックされた。
ユウセイだろうか?
いまは誰とも話したくないが。
「イズル君開けてくれないか?セドリックだ」
「セドリックさん?
どうぞ、お入り下さい」
宿屋の中はベッドの他、二人で食事ができる程度の丸テーブルと4つの椅子がある。
セドリックと俺はテーブルを挟んで椅子に腰掛けた。
セドリックは顔の前で手を組んで両肘を付き、思慮深けな面持ちで切り出した。
「さっきのギルドでのやりとり、見させてもらったよ。
ユウセイには俺が言って代わりに来たんだ。話しづらいかもしれないが、何があったが話してくれないか?」
「実は……」
俺は話しだした。
二年前から従姉妹と父と3人で暮らしていること。
今朝家に帰った時にバフォメットの群れに襲われたこと。
為す術なくやられる瞬間、従姉妹がバフォメットの群れを掃討したこと。
従兄弟が三次職だったこと。
「そうか。僕も冒険者として努力を重ねて三次職に到達した身だ。君の気持ちはよくわかる」
「ほんとですか?」
「ああ。能力には嫉妬もするし、黙っていたことには失望もするだろう。ただ重要なのは」
セドリックが組んでいた手を置いて、背筋を伸ばす。
重要なのは?
「その子がどうして魔物に立ち向かったかだ!君を守りたかったという感情が魔物へのトラウマを超えたんだ。
君の従姉妹は勇敢だよ」
「でもトラウマなんて、そんな大層なもんじゃ」
「魔物に対してトラウマを持つ人は、たくさんいるもんだよ。イズル君はその従姉妹に謝らないとね?君もわかっているだろうけど」
わかっている。
命を助けてもらっておいて、罵声を浴びせて逃げてくることが間違っていることは。
でもどうしたって許せない。
能力に恵まれながら冒険者にならなかったことも、そのことを俺にずっと内緒にしていたことも。
「イズル君。なぜ彼女が魔物に立ち向かえたんだと思う?」
なぜか。そんなのは決まってる。
「俺を守るために」
「そうだ。君がもしルーナを守ったとして。その時もし冒険者としての努力を否定されたら、どんな気持ちになるかな?」
「俺だってずっと反対されていた!それにあいつのは努力じゃない!才能だ!」
「助ける能力は才能だったかもしれない。だけど意思はどうかな?
トラウマの対象に真っ向から立ち向かう意思を、評価すべきじゃないかな?」
意思か、たしかに。
俺を守りたい一心で、ルーナはトラウマを乗り越えた。
それはきっとすごいことなのだろう。
なら、俺は、
「謝らないとな」
「わかってくれてなによりだ」
そういうとセドリックは立ち上がり、俺の後ろへと回った。
「セドリックさん……?いっってぇえ!!」
セドリックはそのまま俺の背中を思いっ切り叩いた。
「わかったら謝ってきなさい!今すぐに!」
「はいっ!」
俺たちは宿屋を後にした。
そのまま俺は我が家へと直行した。
するとそこには二人の姿があった。
「お!イズルか。心配したぞ」
「イズル!ごめんなさい!ずっと黙ってて!」
二人は暖かく迎えてくれる。
俺もちゃんと謝らないと。
「俺の方こそごめん。ルーナの気持ちを考えてなかった」
ルーナが手を差し出し、俺はそれを握りしめた。
「じゃあ仲直り、してくれる?」
「ああ!もちろん」
ルーナは満面の笑みを浮かべ、そして真面目な顔になった。
「あのね、私。今日のバフォメット倒したときわかったの。イズルが言ってたこと。
私はこの力をイズルのために、みんなのために使わないといけないんだね」
「うん、そうだね」
「私はもう、魔物は怖くない。と言ったら嘘になっちゃうけど、イズルとなら戦える!
ねぇイズル、私もイズルのパーティーに入れてくれない?」
「わかった。ユウセイさん、パーティーリーダーにも聞いてみるよ」
「うん!よろしくね!」
「入れてもらえるってなったら明日には王都をでるこら!
そんなフリフリのドレスじゃなくて、動きやすい服を買っておいてよ!」
「え!?明日!?絶対間に合わない!」
「じゃあルーナはお留守番な!」
「ええなんでよ!?」
「ルーナ、服ならある。
今日家の修理を頼みに王都に行ったとき買ってきたんだ。
行っておいで」
「父さん」
「マルスさんありがとう!」
ルーナは父さんに抱きついた。
ルーナが離れると、父さんは少し寂しげに口を開いた。
「それじゃあ二人とも、しばらく王都を離れるのか。頑張れよ」
たしかに、次に父さんと会うのは二ヶ月後だ。
その時には夏本番だな。
「父さんも元気でね!」
「マルスさんもお達者で!」
「ああ。そうだ!最後にミカン畑を見ていかないか?まだ実はならないが」
「うん!」
3人でミカン畑に出ると、二年前は種だけだったミカンはもう苗木になっていた。
一ヶ月、冒険者になるまではそこら中に生い茂っていた雑草は刈られ、ミカンの苗木自体も少し減ったように思える。
「今日まで雑草刈りと間引きをしていたんだ。どうだ?立派なミカン畑だろ?」
「まだ全然木になってないよ」
とても立派とは言えないだろう。
だがミカンの苗木は風にそよぎながら直立し、夕日を浴びて輝いている。
「いえ、立派です。家事を頑張った甲斐がありました!」
家事をしていたのか。
ルーナも頑張ったんだな。
「見せられてよかったよ。二人とも明日は早いんだろう?もう寝るといい」
「ああ。ありがとう」
「うん!」
俺たちは畑を後にした。
次にここに来るのは二ヶ月後、きっとまた成長していることだろう。
ついにルーナとの和解を書くことができました!
もう10話ですか。思ったより話数を使ってしまいました。
明日は11話となり、新たなパーティーでの物語が始まります。
今後ともよろしくお願い致します。




