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一話投稿です。よろしくお願いします!
「イズル、種を取ってこれるかい?ミカンの種だ」
「わかったよ父さん!」
父さんに言われて茅葺きの家に種を取りに戻る。
父さんの耕す畑から家までは300m程で、そう遠くはない距離だ。
それでもあぜ道を、まだ八才の俺が一人で往復するのは一仕事だった。
案山子の帽子を直し、蟻の群れを跨ぎ越すと、やっとの思いで家についた。
雪が解けてからというもの、父さんは毎日のように畑を耕している。
俺も少しは手伝わないとな。
種を取って畑に戻ると、父さんはもう耕し終わったようだった。
「イズル、ありがとな」
「うん!」
父さんは俺の頭をくしゃくしゃと頭を撫でると、種を撒き始めた。
「お前が一人前になる頃には、ここは立派なミカン畑になるはずだ。
イズル、二人で頑張っていこうな」
「そうだね」
そう、二人で頑張って行かなくちゃならない。
母さんは元々体が弱かったらしく、物心つく前には亡くなっていた。
悲しいと思う間もなかったが、父さんからすればそれが可哀想で仕方ないらしい。
父さんは人一倍熱心に開墾と農作業に徹していた。
なにも父さんが悪いわけではないだろうに。
彼女が家に来たのは、そんなある日だった。
昼間突然家を出た父さんは、夕方帰った時には女の子を連れていた。
桜のような淡いピンクの髪も、透き通るような白い肌も、今まで見た誰とも大きく違っている。
服装からして、見るからに上等な白い布でできていた。
まるで人じゃないみたいな女の子だ。
「父さん、その子は?」
「初めまして。私はルーナといいます。よろしくお願いします」
「よろしくな、ルーナ。
イズル、この子はお前のお姉さんだと思ってくれ」
「お姉さん?どういこうと?」
「イズル、詳しいことは……」
「いえ、マルスさんお話しましょう。
きっとわかってくれます」
「そうか。そうだな。
イズル、ルーナはお前のいとこなんだ。
俺の妹の子だ。
だがルーナの両親は亡くなったんだ」
「ルーナにはお父さんもお母さんもいないってこと!?」
そんなの、これからどうやって生きればいいんだ?
「そうなの。
私にはもうお父さんもお母さんもいない」
そう言うとルーナの碧い瞳が潤んでいく。
大きな眼いっぱいに溜まった涙は、白い肌を伝って二筋流れていった。
「大丈夫、これから俺たちが家族だ」
俺は思わずルーナの頭を撫でた。
ルーナは少し驚いた顔をすると、にっこりと微笑んだ。
「よろしくお願いします!」
その日はすぐに夕食になった。
ルーナが来たのは、いつもならすでに夕食を食べ終えている時間だったから、もう腹ぺこだ。
「ルーナ、その野菜を切って」
「えっと、野菜ってどうやって切れば?」
「いままで野菜切ったことないの!?」
どうやって今まで生きてきたんだ?
「いままでは家の者がしていたので……」
「最初は誰でもできないよ。
イズル、今日は二人でやろう。
ルーナにも覚えてもらうからね」
「はい。すいません」
「いただきます!」
夕食にありつけたのは、いつもより一時間もあとのことだった。
「ルーナは将来なにになりたいの?」
「将来ですか。
考えたこともなかったですね」
ルーナは顎に手をやって考えている。
「イズルさんは、何か夢があるのですか?」
「ああ!俺は冒険者になりたい!」
「冒険者ですか」
この国には冒険者と言われる人たちがいる。
平時はモンスターの討伐を行い、戦争の時には軍を率いて最前線を戦う人々だ。
いわばこの国で最も強い人たちなのだ!
俺も強くなりたい!
「イズルは昔から、冒険者になりたいとうるさくてね。
普段は聞き分けがいいんだが、これだけは全く聞き分けてくれないんだ」
「夢があるのはいいことだと思います。
ただ冒険者というのは、危険も多いですし」
「なることも難しいな」
そう、冒険者には魔力が要求される。
そして魔力は基本的には血筋によって強さが決まるのだ。
この国の貴族とはただ政治を牛耳っているのではなく、魔力におけるサラブレッドでもある。
傍系は市民との子もいるが、ほぼ全ての貴族の正系は、魔力に優れた貴族同士の子が継いでいる。
だからこそ冒険者は、貴族の内実家を継がない三男、四男か、冒険者の子孫がなる職業なのだ。
決して農民の子が簡単になれる職業じゃない。
じゃないけど……
「それでも、俺は冒険者になりたい!」
ルーナはそれを聞くと、やや渋い顔で口を開いた。
「なんでイズルは、そうまでして冒険者になりたいのですか?」
「俺は弱い人たちを守りたい!
そのために強くなりたいんだ!
ルーナのことも、守ってあげるよ!」
ルーナはハッとした表情でそれを聞くと、パッと顔を明るくした。
「ありがとね!」
「うん!」
こうして俺たち三人は、家族になった。
最後までお読み頂きありがとうございました。明日も同じ時間に投稿致します。
またお読み頂ければ幸いです。




