ドロップアウト(人間社会から)
「何も授からなかったのが、罪……」
俺の持っているステータスカードには【ジョブ:無職、スキル:無能】とハッキリ書かれている。これのせいで、俺は産まれた村から追い出されたし……今日もまた、この街から追い出される。永久追放告知なんてものが出た以上、もう長居はできない。さっさと宿を引き払って街を出なきゃ、と……そう思いながら俺は泊っている宿へ辿り着く。
「あ、すみません。俺、今日でこの街を出る事に……」
「知ってるよ。さっさと出ていきな」
「え、あ、いや。部屋に置いといた荷物を……」
「捨てたに決まってるだろ。これ以上居座るようなら衛兵を呼ぶぞ」
ダメだ。元から不愛想な店主だったけど、話にならない感じだ。本気で衛兵を呼びかねない。しかもその場合、追い出されるのは【永久追放者】の俺の方だ。
「……お世話になりました」
「お前が【無職】だと知ってたら泊めたりなんかしなかったよ」
「……」
それから財布の中の小銭を頼りに旅に必要なものを揃えようとしたけど……散々だった。どの店に行っても、話すら聞いてくれない。もう告知書は街中に回ってると考えていいだろう。もう本当に街を出るしかない。
「ようやくアイツが……」
「今まで街に居たのがおかしいんだ」
そんな声が聞こえてきて、沈んでいた気持ちが更に沈んでいくのを感じる。
別に【無職】で【無能】なのは俺のせいじゃないのに、どうしてこんな扱いを受けなきゃならないんだ。
ああ、もう。この街を出て、それからどうしよう?
ツテなんかないし、たぶん他の街に行っても同じ事になるような気がする。
どうすれば。どうすればいいんだろう?
考える俺は、突然背後から蹴り倒されて地面に転がる。
「うわっ……!」
「おい、レイド。お前追放されたんじゃなかったのか? なんでこんな所に居るんだ?」
「お前……フォルテか」
A級冒険者フォルテ。この街で一番の冒険者で……人格者だと言われてる奴だ。そのせいか、凄くモテる男で……今も、周囲に2人の女性に囲まれている。
「皆がお前に迷惑してたんだ。さっさと街を出ていくのがスジってものだろう」
「そうですね。神に愛されぬ者を留めるのは神への翻意という意見もございます」
「ていうか、よく今までのうのうと居たわよね。人の迷惑ってもの考えないのかしら」
「俺は、何もしてない……!」
「居るだけで迷惑なんだよ」
告げられたその言葉を咎める者がいない事実が、街の総意だと俺に知らせてくる。
「お前も知ってるとは思うが、今後はこの街に近づくだけで罪になるからな」
「強制排除されないのは、せめてもの慈悲だと思うのがよろしいでしょう」
神官らしい女がそんな事を言ってくるが……慈悲? そんな馬鹿な。
「……そんな慈悲があってたまるかよ」
そう呟いて、俺は街の外へと歩いていく。
……これから、何処へ行こう。どうやって生きていこう?
衛兵に唾を吐かれながら、門を出て歩いていく俺は……気付かなかった。
街道の隅に座って、俺をじっと見ていた……一匹の、妙に立派な毛並みの白い狐の姿に。




