二話 悪魔
死体が骨と僅かばかりの肉になった時、ただの黒い影だったものが人間のような姿になっていた。”それ”は、口の周りについた血を舌で舐め取ると、静かに立ち去った。
その後に残った無残な死体の姿に、それを発見した人々は悲鳴をあげた。この事件は、すぐに国中に広がり、国民は得体の知れない犯人の影に恐れ、怯える生活を送ることを強いられた。
それから、似たような事件が相次いだ。”それ”は始めのときのように人の体から出てくるだけでは無く、どこからとも無く現れて、人を殺して食べたらまたどこかに姿を消した。彼らは、必ず食べ終わる頃には影のような姿から人間のような見た目に変化していた。
いつしか、彼らは”悪魔”と呼ばれるようになった。そんなある日、一体の”悪魔”が王都の研究者達に捕獲された。彼らは、これ以上の被害を抑えるために、”悪魔”の正体の解析を急いでいた。
『今日のニュースをお伝えします。現在我が国で猛威を振るっている”悪魔”ですが、本日また黒羽台都市の花山地区で新たな死者が一名・・・』
やることもなく、時間を潰すためにテレビをつけた黒瀬 聖海は、同じような報道を繰り返すニュースを見てため息をついた。かなり広い都市とはいえ、全国で黒羽台地区でしか被害の出ていないこの状況に、自身もこの地区の住人である聖海も少なからず不安を覚えていたが、いい加減神経の休まらない日々に嫌気がさしていた。
チャンネルを変えようとリモコンに手を伸ばした瞬間、速報が入った。アナウンサーや周りの人が何やら驚いているようだったので、聖海はその手を引っ込めた。
『速報が入りました。連日世間を騒がせている”悪魔”ですが、ついにその正体が分かったそうです。先月12日に捕獲された一体の解析が終わり、国立研究所の橘教授が今、記者会見を開くということで会場に繋げたいと思います。』
そこで、画面はアナウンサーから記者会見を行う会場に移った。
ちょうど橘が正面の机に向かうところだった。周りで慌てて記者の人々が準備をするのが画面越しに聞こえた。
「今日は、緊急であったにも関わらず、お集まりいただき誠にありがとうございます。それでは、これから連続殺人犯である”悪魔”についての記者会見を始めます。王立研究所の橘教授、宜しくお願いします。」
司会と思わしき人物が、挨拶をした。橘はそれに小さく頷くとマイクを手に取った。
「こんにちは、教授の橘です。本日は宜しくお願いします。」
悪魔の正体とは、一体何なのでしょう・・・? 続きは是非次話で! 更新は出来る限り早めにするつもりなので、お付き合いください!