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盆の中からアレやコレ(短編集)

東より来たる

作者: 八刀皿 日音


 私は、サムライという存在のルーツを探ることにした。

 彼ら神秘的な戦士に魅せられたのだ。

 私が出会い、そうして興味を覚える切っ掛けとなったサムライは、はるか東方の国より来たという。

 そこで私は、故郷を離れ、そのサムライの国へと旅立ったのだ。

 旅路は過酷を極めた。

 しかし私は、東へ向かう中で、新たなサムライと出会うことができた。

 感激に耽りながらも話を聞いてみると、彼もまた、さらに東方の国より来たという。

 確かに、今居るこの国も、彼らの故郷という雰囲気ではない。

 目指す場所はまだまだ先だったのだと落胆しながらも、しかし近付いているはずだと、私はさらに東へと旅立った。

 旅路は熾烈を極めた。

 そして私はまた、その最中に新たなサムライと出会う幸運に恵まれた。

 感涙にむせびながら話を聞いてみると、彼もまた、東方より来たという。

 なるほど、確かにこの国も、まだまだ彼らと文化を共にしているとは言い難い。

 目指す場所はまだまだ先だったのだ。しかし、そう簡単にくじけてはいられないと、私はさらに東目指して旅立った。

 ……そうして、私は東へ、東へと進み続けた。

 その道行きで、何度、何人のサムライと出会っただろう。

 彼らの言葉はいつも同じだ。

 彼らを語る人々の話はいつも変わらない。

 『東から来た』

 ――それだけだ。だから、私も愚直にそれを追い続けた。

 しかし、ものには限度がある。

 年老い、故郷が恋しくなってきた私は、だが今さら道のりを引き返すわけにもいかず、ただ進み続けていた。するとどうだろう。

 恋い焦がれていた故郷が、東へと、ただひたすらに東へと進み続けていた私の前に現れたのだ。私はいつしか、故郷へと戻ってきていたのだ。

 嬉しさとともに、結局追い続けてきたサムライの国へはたどり着けなかったのだ、という落胆も感じていた私は、故郷に、また一人のサムライがいるのを見つけた。

 問うとみると、彼も答えた。

「私は、はるか東方の国より来た」





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― 新着の感想 ―
[一言] どれほど旅しても目的地に到達できなかったとは、切ないですね~。 確かに、様々な創作物で、和風や中華風なものは「東」でくくられていることが多いですね。 創作世界を作る時に、無意識に自分の生き…
[一言] 暮伊豆さんの割烹から飛んできました! これまたボンクラさんらしいシニカルな作品ですねッ! そうですよねー。 東ってあくまで相対的なものですから、どこまで行っても東は東ですよね。
[良い点] こ、これは! 単なる笑い話ではありませんね!? 『犬が西向きゃ尾は東』のように大地が球体であること! すなわち、大地球体説に始まり地動説に至るまでの一連の流れを子供にでも分かるよう易しく、…
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