東より来たる
私は、サムライという存在のルーツを探ることにした。
彼ら神秘的な戦士に魅せられたのだ。
私が出会い、そうして興味を覚える切っ掛けとなったサムライは、はるか東方の国より来たという。
そこで私は、故郷を離れ、そのサムライの国へと旅立ったのだ。
旅路は過酷を極めた。
しかし私は、東へ向かう中で、新たなサムライと出会うことができた。
感激に耽りながらも話を聞いてみると、彼もまた、さらに東方の国より来たという。
確かに、今居るこの国も、彼らの故郷という雰囲気ではない。
目指す場所はまだまだ先だったのだと落胆しながらも、しかし近付いているはずだと、私はさらに東へと旅立った。
旅路は熾烈を極めた。
そして私はまた、その最中に新たなサムライと出会う幸運に恵まれた。
感涙にむせびながら話を聞いてみると、彼もまた、東方より来たという。
なるほど、確かにこの国も、まだまだ彼らと文化を共にしているとは言い難い。
目指す場所はまだまだ先だったのだ。しかし、そう簡単にくじけてはいられないと、私はさらに東目指して旅立った。
……そうして、私は東へ、東へと進み続けた。
その道行きで、何度、何人のサムライと出会っただろう。
彼らの言葉はいつも同じだ。
彼らを語る人々の話はいつも変わらない。
『東から来た』
――それだけだ。だから、私も愚直にそれを追い続けた。
しかし、ものには限度がある。
年老い、故郷が恋しくなってきた私は、だが今さら道のりを引き返すわけにもいかず、ただ進み続けていた。するとどうだろう。
恋い焦がれていた故郷が、東へと、ただひたすらに東へと進み続けていた私の前に現れたのだ。私はいつしか、故郷へと戻ってきていたのだ。
嬉しさとともに、結局追い続けてきたサムライの国へはたどり着けなかったのだ、という落胆も感じていた私は、故郷に、また一人のサムライがいるのを見つけた。
問うとみると、彼も答えた。
「私は、はるか東方の国より来た」