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08*Ability

◇メチルフェニデート〔リタリン〕

C14H19NO2

本作の主人公。16歳。基本的に落ち着いた性格ではあるが、予想外の事には動転することもある。

◇フェンタニル

C22H28N2O

16歳。常に敬語で話すが、性格は割と荒々しい。

◇メサドン〔メサペイン〕

C21H27NO

16歳。特進科の学級委員を務める。

◇アルプラゾラム〔ソラナックス〕‬

C17H13ClN4

14歳。良くも悪くも素直で遠慮がない。‬

◇ジアセチルモルヒネ

C21H23NO5

17歳。その危険性から、寮の一室に封印されている。

◆松本先生

人間

29歳。特進科担任。


Ability――能力


▼C21H27NO

 リタリン――本名をメチルフェニデートというが――は精神刺激薬だ。化学式はC14H19NO2、デバイスの色は白。

 構造はピペリジン誘導体で、投与方法は経口、舌下、皮下、静脈、経鼻。

 リタリンの適応症はナルコレプシー、コンサータと呼ばれる時の適応症は注意欠陥・多動性障害。コンサータの適応は18歳未満だったのだが、2013年に18歳以上にも拡大されたとか。

 麻薬及び向精神薬取締法では、第一種向精神薬に指定されている。


 リタリンが来てから、何日か経った。

 僕はあの子のことをそれなりに高く評価しているつもりだ。けれど、あの子自身は自分の能力を理解しきれているのだろうか?


「どうしますか?メチルフェニデートを…引き込みましょうか?」

 表向きはコークさんのもとにいることになっているが、その班では内部分裂が起きている。コークさんの側にいるのがリゼさんとエクスタシーとメタンフェタミンさん。

 僕がいるのは姉さんの側で、そこにはソラとフェンタニルがいる。姉さん――ジアセチルモルヒネは、僕とフェンタニルを『代用品デザイナードラッグ』と称する薬だ。代用品と称されるのはあまりいい気はしないが、それでも姉さんごと利用できるなら今は構わない。

「いいんじゃない?姉さんが何を思ってるかはわからないけど」

「ジアセチルさんってそうっすよね。俺にもよく読めないっす。…で、何か理由でも?」

 理由、と言われればただ1つだ。

「うん…だって」


「――その方が、面白いじゃない?」


「全く、メサドンさんはほんっとに単純なんすから!」

 そうだ、僕は最も単純なオピオイドだ。そして、退屈が嫌いだ。

 快楽主義者というのは少し違うかもしれないが、基本『楽しそうなこと』には乗るスタンスでいる。どういう訳か編入した4月くらいから学級委員をやらされているが、その立場さえ利用するつもりでいる僕の前では、重荷にはならなかった。

「で、どんな人でしたっけ」

「確か、シナプス前ドーパミントランスポーターによる再取り込みを阻害する…んだっけ」

 この間の初陣を見ていた僕は、少しだけ思い出した。

「メチルフェニデートはシナプス終末からシナプス間隙かんげきへドーパミンの遊離を促進させる作用も持っていますが、ドーパミンによる神経伝達に特異的に作用するわけではなく、ほかのモノアミンにも緩やかに影響を与えます」

「いずれにしろ僕らダウナー系とは、根本的にタイプが違うよね」

 僕らはダウナー系、しかしリタリンはコークさんと同じアッパー系だ。でも、だからこそ、何かが起きてしまうような――そんな気がする。

 コークさんと姉さんの組み合わせを『スピードボール』と呼ぶが、それぞれ単体を摂取した場合よりも力が桁違いに跳ね上がるようだ。ソラとフェンタニルが複合作用した時もかなり強い力が出ていたが、オピオイド系とベンゾジアゼピン系の違いがあるとはいえ2人ともダウナー系には変わらない。

 リタリンと僕らの誰かが組み合わさるなら、誰との複合作用が一番強いのだろう――あの子の力を引き出せるのは誰なのだろうか。

 あの子の薬効は、知っている。けれど力価は、未知数だ。

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