冥王
「さてさて…まずはお礼を言わなきゃならねぇか?世間知らずな『俺』に色々と教えてくれてありがとうよ、お三方」
「あ、あぁ?何だお前…ナナシじゃねぇのか?」
「オレはオレだ。あんな世間知らずの疑う事を知らねぇバカと一緒にすんじゃねぇよ…『EQUIP、ネメシス』」
もう一人の『俺』が失礼極まりない事を言ってのけると同時、『俺』の手元に武器が出現する。
その武器は見た限りだと馬鹿でかい『大鎌』のような武器だったが、それを見たジェイク達が狼狽している。
「『サイズ』だと!?」
「ね、ねぇ…あの装備ってたしかかなり特殊なんじゃなかったっけ…?」
「武器が特殊なんじゃないわ…あの武器を装備出来る『ジョブ』が特殊なのよ…」
ジェイク、冥、ミコトの順で何やら呟いているが、俺から距離が離れているために何を話しているのかはサッパリ聞き取れなかったが、3人の様子、特にミコトの様子があまりにもおかしかった。
何か酷く焦っているような様子なのだ。
「逃げるよ!アイツに狩られちまったら『牢獄』行きになっちまう!」
「『牢獄』って…おいおい冗談だろミコト?俺達ゃ今『グリーン』だぜ?」
「そうだよミコト。『グリーン』なんだからやられたって街に『死に戻る』だけでしょ?」
俺は見えていないようなのを良いことに、ジェイク達に近付いてみたものの、何だか色々と聞こえはしたが専門用語が多く内容がイマイチ理解出来ずに置いてけぼりの状態となっていた。
ジェイクと冥はミコトの言ったことに対して本気には取っていないらしくミコトが焦っているのに対して楽観したように温度差がある。
だが、次に発せられたミコトの言葉を聞くと、二人の表情は一変する。
「あの容姿に大鎌…間違いない…奴は…あのnatumiって奴は…『冥王』だ!」
「「は…!?」」
冥王って何だ?
気付かれていないことをいいことに、俺は3人の近くで会話を盗み聞きしていると、大鎌を肩に担いでこちらを見ている『俺』を見る。
すると冥王と聞いた二人が『俺』を知っているのか信じられないといった様子でそれぞれ答える。
「冗談だろ?冥王なんて奴がこんなところにいるわけがねぇ!」
「そ、そうだよ!たしか冥王の縄張りなんて最前線でしょ!?こんな初心者が来るような場所に下がって来たって何もメリット無いじゃない!」
「何であいつがこんなとこにいるのかは知らないが…奴に捕まったらホントにマズイ…とにかく逃げなきゃ…」
ミコトの焦り方が尋常ではないことに、ジェイクと冥は困惑する。
「なぁ?そろそろ動いてもいいか?」
「「「!?」」」
そんな中、『俺』は一言告げると、一瞬にして3人の退路を塞ぐ形で移動した。
何が起きたのか分からなかった3人は困惑するも、それぞれの武器を構えて『俺』に対抗しようとするが…
「『縛鎖・極』」
ジャラッという効果音と共に3人が地面から飛び出た鎖によって四肢を絡め取られあっけなく拘束される。
「くそっ!離せ!!」
「何よこの鎖!?デバフが…」
「…やっぱりアンタは『冥王』なのか?」
ジェイクと冥が狼狽する中、ミコトは観念したかのように『俺』に問いかける。
「まぁ…不本意だがそう呼ばれてもいるな」
『俺』は事もなげに答えると、担いでいた大鎌を構え、3人の首元を躊躇うことなく薙いだ。
「「「!?」」」
あまりの突然の出来事に3人の表情が絶望に染まるが、特に変化が見られる事もなく…いや、目に見えて分かる変化が起きた。
3人のネームの色が赤く変化したのだ。
「な…」
「嘘でしょ!?なんで『レッド』に!?」
「…」
今起きた変化に三者三様の反応を示す3人。
そこに『俺』からの説明が加わる。
「この大鎌は『断罪の大鎌』って大鎌でな。斬られた奴の潜在カルマを炙り出すっつー特殊効果があるんだが…いやはやお前ら…『業』が深いみてぇだな」
『俺』は呆れた様子で3人を見渡す。
「まぁ裁定はコイツに任せるか…『EQUIP、処刑大鎌』」
手持ちの大鎌が一瞬にして見た目がエグい大鎌に切り替わる。
刀身は赤黒くデザイン自体が禍々しい。持っているだけでも呪われそうな目を背けたくなる大鎌を装備した『俺』はスッと一振りだけして肩に担ぎ直す。
すると、3人のステータスにとんでもない種類のデバフ効果が現れた。
「何だよこのデバフは!?」
「ちょっと!?外しなさいよ!!」
「こ…これほどとはね…逃げられない訳だ…」
掛けられたデバフの量に焦るジェイクと冥だったが、ミコトだけが顔を痙攣らせながらも納得した様子で完全に諦めている様子だ。
彼らに掛けられたデバフはおよそ考えられる限り、全てが極悪と言っていいほどの効果を持つデバフのオンパレードであった。
精神異常、継続ダメージ、状態異常はもちろんのこと、特殊なデバフである『ターゲット』(狙われやすくなる)、『効果永続』等、これらの効果が『即死』以外全て付与されていた。
「コイツの効果は斬った相手に相応しい、考えられる限りで最も酷い効果を与えるんだが…ここまで酷いのはオレも久々に見たわ…
まぁせいぜい苦しんで堕ちろや」
『俺』が踵を返してその場から遠ざかると、いつの間にか周りに集まって警戒していた多種多様な魔物達が3人を取り囲んで行く。
やがて離れていた距離はどんどん近づいていき、やがて…
「「「ーーーーーーーー!!」」」
声にならない悲鳴が辺りにこだまするのだった…
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