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R.P.G~Ragnarok.Proxy.Genesis~  作者: 銀狐@にゃ〜さん
第1章4節 北欧の女神
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連れてこられた意味



 ややあって、寝起きで様々な出来事に見舞われたボクだったが、ようやく落ち着きを取り戻し着替え終わると、フレイヤさんとヒルデさんに案内されて応接室のような場所に通された。

 尚、着替えはショートカット機能を使って行ったのだが、それを見た二人の反応は目を丸くしただけに留まり、特に驚いたりということはなかった。

 しかし、フレイヤさんだけが「生着替えじゃないのね…」と、どこぞの幼女神と同じことを言っていたのはあえて聞かなかったことにした。


 ともあれ、フレイヤさんに促され用意してある席に言われるまま着席すると、フレイヤさんが口火を切ってきた。


「さてさて…順番が変わっちゃったけど、よく眠れたかしら?」


「あなたがそれを言いますか…」


 恨みがましく言ったボクに、当のフレイヤさんはゴメンゴメンと悪びれた風もなく平謝りするのみ。

 ボクが一つため息をつくと、それを見てフレイヤさんは続ける。


「寝姿があまりにも可愛くてつい悪戯しちゃったのよねぇ」


「しちゃったのよねぇって…はぁ…」


 ボクが頭を抱えるのを見て楽しそうに笑っているフレイヤさんだったが、そこでボクの頭に一つの疑問が浮かんでくる。


「えっと…一つ聞いてもいいですか?」


「いくつでも聞いてくれていいわよぉ?」


「それじゃ遠慮なく…フレイヤさんって北欧の女神様で、アテナやアルさん…アルテミスさんと敵対してましたよね?3000年前のラグナロクの時に撤退したと聞いていたんですが、どうしてこの世界に残ってるのかと不思議に思ったんですが…」


「あぁ、それねぇ…」


 ボクの質問にどこから話せばいいか考えているフレイヤさん。

 やがて整理がついたのか説明を始めた。


「その北欧っていうのはよく分からないけど、私のいた世界『ユグドラシル』からこのセブンスガルドに攻め入った時、どさくさに紛れてこちらに残ったのよ」


「どさくさに紛れて…」


「まぁ…そのどさくさを引き起こした首謀者は私なんだけどね?」


 といって、可愛らしくぺろっと舌を出すフレイヤさん。

 言葉の意味とその軽く言い放ったギャップに、ボクは呆気に取られる。


「私がこちらに残った理由っていうのは、ユグドラシルにいた時、私が原因で引き起こされる争いが多かったんだけど…私もいい加減、それに辟易しちゃっててね…ラグナロクが起きた時に、ちょうどいいから向こうから出ようと思ったのよ」


 当時のことを思い出したのか、その表情が面倒そうな顔付きになりため息をこぼす。


「でも、私がこちらに残るには、ユグドラシル側を撤退させなければならなかった。ユグドラシル側が勝っちゃったら、こちらに移動してきても意味が無かったからねぇ…一時、ユグドラシル勢が優勢に立っちゃったんだけど―――」


「優勢だったのに撤退?」


「もう…慌てないの。優勢になった大きな理由は相手方の女神、アテナさんの無力化が一番大きかったわね。ユグドラシル側の主神であるオーディンのグングニルを受け切ったアテナさんが戦線から離れたのは戦況を傾けるのに十分過ぎるほどだったから…なにせアテナさん一柱だけで、ユグドラシル勢が集めていた英霊、エインヘリヤル達を壊滅させていたほどだったから」


 フレイヤさんは当時のアテナの無双っぷりを思い出し、ボクはその様子を想像して苦笑する。


「でも、それだけ戦況が傾いたのに、北欧…じゃなかった…ユグドラシル勢が退くほどの出来事って何だったんですか?」


 普通に考えれば、有利に働いている戦争で撤退なんてことは考えられない。

 だが事実として、ユグドラシル勢は撤退している。

 ボクが首を捻って考えていると、やがてフレイヤさんが答えを提示してきた。


「私が裏切ったの」


「………はい?」


「正確には、私だけではないんだけどねぇ」


 んん?

 北欧の女神フレイヤといえば、確かに有名過ぎるほどに有名な女神だ。

 彼女が言う通り、女神フレイヤを引金として起きた争いや逸話が多数あるのも、北欧神話に精通している人などに聞けば、そんなの当然と答えが返ってくるほどに知られている。

 しかし、今回の話は現実世界では語られたことのない新話であったために、その全貌は未知数だ。

 どうにも見当がついていないボクの様子を見たフレイヤさんはその答えを教えてくれた。


「私がやったのは単純なことよ?」


「単純?」


「えぇ。私がやったのは、ユグドラシル勢のそれぞれの主力に天敵を差し向けただけですもの」


「オーディンの天敵となると…あぁ、巨狼フェンリルですか」


「あら知ってたの?物知りなのねぇ」

 

 ボクが言い当てた事にフレイヤさんは一瞬目を丸くするが、すぐに笑顔に戻り続きを語る。


「その通りよミーちゃん。私がフェンリルの封印であるグレイプニルを解いて、オーディンに奇襲をかけたの」


「なるほど…たしか、フェンリルの牙は神々にとっては猛毒なんでしたっけ」


「…本当によく知ってるのね?まるで見たことがあるみたいに…」


「いや、さすがに見たことはないですよ。フレイヤさん達はボクのいた世界じゃ有名過ぎる神様達ですからね」


「ふぅん…その口振りからすると、ミーちゃんも異界から来たのね?」


「ん~…異界というかなんというか…説明するとちょっとややこしいんですけど…」


 事ここにおいて、自分がセブンスガルドに呼ばれた理由を誤魔化すこともないと思い、グラン達にしたような説明をすると、フレイヤさんは目を細めてボクの話に聞き入っていた。


「なるほど…アルテミスさんったらとんでもないものを造り上げてしまったのね…」


「とんでもない…ですか?」


 フレイヤさんが呟いた言葉の意味が分からず、オウム返しでボクが聞き返すと、フレイヤさんは重々しく頷き返してくる。


「えぇ…とんでもないわよ。そうね…例えば、私に野心めいたものがあったとして、そんな装置を手に入れたなら…私は迷わずそれを使って覇権を狙うわね」


「覇権…ですか?」


「隠しているみたいだけれど、ミーちゃん、今でも相当な強さを持ってるわよね?そんなミーちゃんみたいな実力者をポンポン呼び出して自分の軍勢に引き入れて行動を起こしたら…どうなるかしらねぇ?」


 ここまで言われれば、どんなに頭の回転が鈍い者でも簡単に想像することが出来るだろう。

 世界中を巻き込んだ戦争が起こる。

 それこそラグナロクと変わらない。

 現状、このセブンスガルドに呼び出されたのは、ボクと巻き込まれて呼び出されてしまった優夏だけだ。

 だからこそ失念していた。

 あの召喚装置が、もし他の神々の手に渡った際、どんな参事が引き起こされるかを…

 まぁ、必ずしもそれが起こるとは限らないわけだが、フレイヤさんに指摘されるまでそういった可能性があるということがボクの頭の中には全く無かったのだ。

 ボクがあれこれ考えているとフレイヤさんから確認される。


「ミーちゃんがさっき言っていた強さを求めているのは、ミーちゃんが自分の世界に帰るために必要な力なのよね?」


「え…?ん~…そう、ですね…それがボクの最終目標です」


「ん。よろしい。私から可能性を示しておいてなんだけれど、ひとまずその装置の悪用云々というのは置いておきましょう」


 フレイヤさんが両手をパンと合わせてボクに向き直る。


「私がミーちゃんを連れてきた理由、これが本題よ」


「あ…」


「つまり、ミーちゃんが知りたがっている魔力の扱い方、要するに魔力操作技術ね。私達、というかセブンスガルドにいるこの技術を持つ人達は総称して魔技と呼んでいるけれど、これからミーちゃんにこの魔技を教えるつもりでここに連れてきたのよ」


「っ!!」


 フレイヤさんのその言葉に、不覚にもボクの心は踊ってしまった。

 だってそうだろう?

 有名な女神様で魔法の第一人者であるフレイヤさんに師事してもらえるなんてそんなチャンスはまず有り得ないことだ。

 きっと今のボクの目はやる気に満ちているに違いない…


「いい顔するじゃないの」


 ほらね?


「私は魔法に関しては厳しいわよ?」


「望むところです…!!」


 品定めするように目を細めてボクを見つめるフレイヤさん。

 ボクはその瞳を真正面から見据えて答える。


「んふっ…やっぱりいいわね…ますます気に入っちゃった…」


「ふぇ?」


「何でもないわ。さて、それじゃあ早速始めましょうか」


「よ、よろしくお願いします!!」


 最後にフレイヤさんが何か呟いたようだったが、小声だったためにボクは聞き取ることが出来なかった。

 一瞬、背筋に悪寒が走ったのは気のせいだろうか…?

 首を傾げるボクを見て微笑むフレイヤさんだったが、すぐに席を立ち、ボクに付いてくるように伝えてくる。

 ボクはそれに逆らうこともなく後に続くと、ヒルデさんも一緒に付いてきた。

 そのことにボクは特に思うところは無かったため、気合を入れ直す。


(ボクはもっと強くなれる…やってやる!!)


 改めて決意を固めるボク。

 こうしている間にも、外では何やら大変な事態になっているようではあったようだが(そのことは後々知ることになる)、そんな外の騒ぎに気付けるわけもなく、ボクの魔力操作の修業は幕を開けるのだった。


今回も予告無くの投稿です…

皆様ごめんなさい…

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