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R.P.G~Ragnarok.Proxy.Genesis~  作者: 銀狐@にゃ〜さん
第1章3節 冒険者ギルド
24/39

世界の危機



 アルテミスとエナが話をしていた同時刻

 所変わって冒険者ギルド登録課(レジストリ)


「んっ…んん~!!終わったぁ!!」


 ミネルバの受付担当をしていたレイア・ララネルは業務日報を記入していた。

 その仕事も本日の分は終わりを迎え、後は着替えて行きつけの店に行くだけといったところに、彼女の先輩と同期の受付嬢が声をかける。


「はい、お疲れ様」


「待つにゃレイア!私ももうすぐ終わるから!」


「ミリィ先輩ありがとうございます。クーニャ、早く終わらせないと置いてっちゃうからね~」


「待ってにゃあ!!」


 レイアのデスクに淹れたばかりの紅茶の入ったカップを置く受付嬢はレイアの先輩であるミリィ・レグニッツ。

 エメラルドの長い髪を大きく三つ編みにまとめており、右肩からその三つ編みを前に流しているのが特徴的な温和な性格の先輩受付嬢である。


 一方、自分のノルマが終わらず大急ぎで書類と格闘しているのは、レイアと同期の受付嬢、クーニャ・タチバナ。

 彼女は人族ではなく獣人族、その中でも猫人族と呼ばれる獣人で、その名の通り猫の獣人である。

 ちなみにクーニャ本人の外見は幼いが、ちゃんと成人している。

 獣人族には様々な特徴があるのだが、猫人族の特徴は頭部の大きな猫耳と尻尾である。

 ネコ科である虎やライオンなどの獣人の見た目も似てはいるが、身体能力が段違いなため、こちらは冒険者や傭兵などをしている者がほとんどだ。

 ともあれ、そんな彼女は一言で言えば黒猫の猫人族で、黒猫と言った通り、ショートボブの黒髪に、長くしなやかな尻尾を持っている。

 焦っているためか、クーニャの耳はせわしなくピコピコ動き、それに合わせて尻尾もブンブン振っている。


「そういえば…最後に受付に来てた女の子だけど、帰しちゃって良かったの?」


 レイアとミネルバのやり取りを途中から見ていたミリィが問いかける。


「え?あぁ…なんか紹介状と推薦状を出されたんですけど、ホラ、最近有名処のクランを語った偽物が出回ってるじゃないですか」


「そうねぇ…特に多いのは『自由意志(フリーダムウィル)』の偽物ね」


「あの子が持ってきたのはまさにそれだったんですよ。『自由意志』の章印の押された物だったんですよ」


 その時のことを思い出しながら、レイアはやれやれといった様子で理由を述べた。


「私があの子を帰さなかったら、今頃捕まってたのはあの子ですよ?逆に感謝してほしいぐらいですね」


 レイアはドヤ顔で自分の行いは間違っていないと主張するが、隣で作業を終えたクーニャからまさかの反撃を受ける。


「ふぅ…やっと終わったにゃ…でもレイア。帰した理由ってホントにそれだけかにゃ?確かあの子を連れてきたのって衛兵さんのヘンリーだったにゃ」


 クーニャがにゃふふと下世話な笑みを浮かべてレイアに迫る。


「ヘ、ヘンリーが連れてきたと言っても、それとこれとは関係ないじゃない!!」


「ヘンリーって…あぁ、レイアの幼馴染の…」


「にゅふふ…レイアは素直じゃなにゃいからにゃあ」


「ち、違うって言ってるじゃない!!」


 実際の所、クーニャの言う通り、ミネルバを帰した理由の中にレイアの個人的な主観があったのは確かである。

 ギルドとしての対応が4割、ヘンリーへの怒りが3割、ミネルバへの嫉妬と嫌がらせが2割と子供が背伸びをしているという思いが1割。

 そういった割合でミネルバは対応されたのだ。

 ヘンリーとレイアは幼馴染であり、レイアにとっては子供の頃から密かに思いを寄せている相手がヘンリーなのだが、そのヘンリーが鼻の下を伸ばしてデレデレしていた相手がミネルバであった。

 当然ミネルバはそう言った事情を知らなかったのだから完全なるとばっちりである。


(ヘンリーの奴…今度会ったらシバキ倒してやるんだから!!)


 レイアはそう心の中で決意する。

 その時、ヘンリーが悪寒を感じたのは言うまでもない…


「それでレイア、その紹介状と推薦状はちゃんと鑑定したの?」


「え?」


「「え?」」


 ミリィからの問いかけにレイアは意味が分からないといった様子で答えると、ミリィとクーニャは、お前何言ってんの?といった様子で聞き返す。


「レイア…まさかとは思うけど、対応マニュアル読んでないの?」


「えっ…え?」


「ミリィさん…この様子だと間違いなく読んでないのにゃ…」


 ミリィとクーニャが呆れた様子でレイアを見つめる。


「な、何よそれ…私そんなの知らないわよ?」


「ん~…おかしいわね…この間皆の机の上に置かれてたと思ったけれど…まぁとにかく、マニュアルの内容は…念のため、クーニャはちゃんと読んでいるわよね?」


「もちろんですにゃ!!え~っと、紹介状や推薦状を提出された際には、真偽は問わず、必ず鑑定を行うこと。本物であれば、決められた手続きを行い、偽物の場合は、犯人の手掛かりがあるかも知れにゃいため、中身を改めて然るべき対応を取る…だったかにゃ」


「その通りよ。よく覚えていたわね」


 ミリィがクーニャの頭を撫でながら褒めると、気持ちよさそうに目を細めミリィに寄りかかるクーニャ。

 しかし、対応方法を聞いたレイアの表情はどんどん青くなっていく。


「そういうことになっているのだけれど、レイア、その2通はどこにやったの?」


「えっと…そのぉ~…」


 レイアはこの時、自分がどういった対応をしたのかを思い出し、さらに顔色を悪くする…


1 私情を挟んでのぞんざいな対応

2 渡された2通を偽物と決めつけゴミ箱へ華麗にボッシュート

3 世間知らずと罵っての追い返し


 レイアの目は完全に泳いでおり、その様子は不審者のそれとなっていた。


「あっ…そういえば…」


 クーニャが何かを思い出したかのように受付脇にあるゴミ箱に向かい、おもむろに手を突っ込み中を漁り始める。


「どうしたのクーニャ?何か探し物?」


「ちょっ、ちょっとクーニャ!?」


 クーニャの行動を見て、ミリィとレイアが各々の反応を示す。

 ミリィは首を傾げ、レイアは焦る。

 二人の反応を余所に、当のクーニャはゴミ箱を漁り続ける。


「ん~…確かこのゴミ箱に…ふぎゃっ!?」


 ゴミ箱を漁っていたクーニャがそれらしき物を見つけたらしく、その物を握ろうとした瞬間だった。

 バチンというショートしたような強烈な破裂音が鳴り響いたと同時に、クーニャが悲鳴をあげて床に倒れる。


「「クーニャ!?」」


 あまりにも突然過ぎた出来事に様子を伺っていた二人が驚くのも無理はない。


「ちょっと、大丈夫クーニャ!?」


「一体何が…え…?これは…手紙?」


 突然倒れたクーニャを抱きかかえ心配するレイア。

 一方ミリィは、衝撃に耐えきれずに倒れたゴミ箱の中身を見定めていると、その中に2通の手紙が混ざっているのを見つけた。

 いや、正確に言い表すのであれば見つけたのではない。

 結界に守られている2通が目立ち過ぎていたために一番最初に目に付いたのだ。


「レイア…あなた何てことを…こんな強力な守護結界…鑑定するまでもなく本物じゃない…」


「うぐっ…」


 ゴミ箱へ投げ捨てた事実がバレてしまい、がっくりと肩を落とすレイア。

 しかし、レイアの不幸はまだまだ続く…


「後でたっぷりお説教するとして、まずは宛先が誰か調べないと…」


 ミリィが手紙に目をやると、結界の効果も落ち着き触れるようになっており、2通を拾い上げたところでふいに後ろから声をかけられる。


「どうしたんです?騒がしいですよ」


 声のした方にレイア、ミリィが振り返ると、そこにいたのはギルド長秘書であり受付嬢達の総括も務める、冒険者ギルドの中でもギルド長の次に権力を持っているとされるエナ・マクガルフィーであった。


「「そ…総括…!?」」


 レイア、ミリィは事がバレたと思い身を強張らせるが、よく見ると、いつも澄ました表情でクールに仕事をこなしているエナの表情が、何故か微笑みを携えて綻ばせており、妙に機嫌が良さそうなのだ。

 そのエナを見て、二人は別の意味でまた身を強張らせる。


「そこに倒れているのはクーニャみたいだけど…」


「こ、これは…そのっ…」


「まぁ、何でもいいけど、騒ぐのも程々にしないとダメですよ?」


「は、はい!!も、申し訳ありません!!」


 エナの指摘に狼狽したのはレイア、次いで謝罪したのはミリィである。

 普段は厳しくも温厚な先輩受付嬢であるミリィまでもが、ここまで委縮してしまうのを見る限り、エナの冒険者ギルドでの地位がどれだけ高いのかが窺える。


「あ、あの…総括…今日はどういった用件で登録課へ来られたのですか?」


 ミリィが冷や汗を浮かべながらエナに問いかけると、エナは一つ頷き、登録課所属の全員に聞こえるように説明を始める。


「皆さん聞いてください。先程、私のデバイスに、ギルドから指名依頼をしていた『自由意志』のグラン、及びフィリスから連絡が入りました。とある理由により、彼等は今、女神アテナ様、同じくアルテミス様と行動を共にしているとのことです」


『女神さまが降臨されているだって!?』

『なぜあの二人と行動されているんだ?』

『待て待て。総括の話はまだ終わってないぞ』


 ひとしきりどよめきが落ち着いたのを見計らいエナが説明を再開する。


「現在、グラン、フィリスの両名はクエストを進行しながら女神様二柱の護衛も兼ねてもらっています。ですが、本題はこの話ではありません」


 女神二柱の下界降臨というだけでもとんでもない話ではあるのだが、総括を務めるエナはそれすらも本題ではないと言い切る。

 再びざわつき始めるギルド職員達ではあったが、エナが周囲を見回すことでいったん静寂を取り戻す。


「これから話すのは、我々冒険者ギルドの存亡、いえ…セブンスガルドの存亡に関わる重大な任務になり兼ねませんのでくれぐれも間違った対応はしないようにお願いします」


 エナの念入りな言葉に、レイア達職員全員が息を呑んで次の言葉を待つ。


「とは言いましたが、普段の受付をしていれば全く問題の無いことなんですが…先程の連絡の際にアルテミス様と直接お話をして伝え聞いたことなのですが、現在、この冒険者ギルド本部に一人で向かっている少女がいるらしいのです。その少女の目的は冒険者登録のようなのですが、その少女はSクラス冒険者であるグラン、フィリスが認めるほどの実力者だそうです。今アルテミス様達は『リカントの森』にほど近いアクロ大平原の奥地にいらっしゃるとのことから、すぐには到着しないとは思いますが、受付の際は細心の注意でもって当たってください」


 登録課職員達にとてつもない重圧がのしかかる。

 それもそのはずで、自分達の対応一つで、下手をすれば自分達が住むこの王都どころかこの世界が滅んでしまう可能性があるのだ。

 なぜここまで職員達が過敏な反応をするのか?

 仮にその少女をぞんざいに扱ったとしよう。

 そのことがもしも神に知られてしまったとしたら、ほぼ間違いなく神罰が下る。

 このセブンスガルドでの神の存在は、神聖であると同時に脅威でもある。

 過去の神々の神罰についての内容は、子供ですらもおとぎ話や童話でその恐ろしさを知っている。

 女神アルテミスの名がエナの口から出てきた時点で事の重大さは職員全員が感じていた。


 そんなピリピリとした空気の中、受付嬢の一人が質問する。


「総括、一つお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」


「どうぞ、ミリィ」


 それはレイアの先輩であるミリィ・レグニッツであった。


「こちらに向かっている少女の名前や特徴などが分かれば私達も対応しやすいので教えていただけませんか?」


 ミリィの質問というよりは要望ではあったが、ミリィの言葉に職員達が一斉に頷く。

 エナも頷き返し説明を続ける。


「私も容姿は伝え聞いただけなのですけどね。まず少女の名前はミネルバ・リッジコースト。特徴は長い銀髪で非常に可憐な少女、見た目だけ見るとか弱い少女でしかないとアルテミス様は仰っていましたね」


 職員達が聞き漏らしの無いように各々メモを取る中で、少女の名前を聞いたレイアは固まる。


「それと、私も信じられなかったのですが『知能持ち』のリカントロードを単独で圧倒したようです」


 グランやアルテミスからの報告で聞いた内容を伝えるエナ。

 それを聞いた職員達は『とんでもないな』『知能持ちを単独でなんて聞いたことがないぞ』といった反応をしていたが、レイアはというと、みるみるうちに顔が青くなっていく。

 その様子に気付いたエナがレイアに声をかける。


「レイア?顔色が悪いようだけど…大丈夫?」


「え…?あ、あはは…だ、大丈夫れすよ?」


「…呂律が回っていませんが…」


「い、いやぁ!そんな希望に満ち溢れた女の子がいるんですねぇ!?本当にスゴイ!!」


 冷や汗ダラダラなレイアだったが、内心はこれまでに無いほどの緊急事態に頭がちゃんと回らなくなっていた。


(マズイマズイマズイ…どうしようどうしようどうしよう!!)


 そんなレイアに追い打ちをかけるかの如く、エナから決定的な判断材料が投げられた。


「あぁそうそう。ミネルバさんは私宛の紹介状と推薦状を持っているそうです。差出人はクラン『自由意志』の団員であるグラン、フィリスの連名で書かれています。これについては以前配布したマニュアル通りに…」


 エナの話は途中であったが、この一部分を聞いただけでレイアにとっては充分だった。

 レイアの顔色は青を通り越し、すでに蒼白となっている…


「以上です。皆さんよろしくお願いしますね?……レイア、あなた本当に大丈夫なの?」


「うっ…その…」


 エナが心配して声をかけるが、やらかしてしまったレイアは最早何も言えなくなってしまっていた。

 そんなレイアを見ていた彼女の同僚二人がレイアの肩に手を乗せてタメ息をつく。


「レイア…もう諦めなさい…」


「往生際が悪いと後々辛くなるだけにゃ…」


「うぅ…」


 説得しているのはミリィとクーニャだ。

 二人に促されたレイアは、立っている気力も尽きたのか、とうとうその場に崩れ落ちる。


「??? いったいどういうことなんです?」


「総括…これを…」


「これは…」


「今のお話に出てきた紹介状と推薦状です。真偽はクーニャが身をもって証明しています」


「とってもとっても痛かったですにゃ!!」


 ミリィがエナに二通を手渡し、クーニャは結界の強力さを報告する。


「この二通がここにあるということはつまり…」


「はい…大変申し上げにくいことですが…」


「担当したのは…?」


 ミリィとクーニャは無言で崩れ落ちたままのレイアに視線を落とす…



『『『『レイアァァァァァァァ!!!!』』』』



「ご……ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁい!!」



 冒険者ギルド全体を揺るがすほどの怒声であった。

 そして次に聞こえたのは、なんとも形容しがたい悲痛な謝罪の言葉だった。


 観念したレイアによる独白が続き、登録課の職員達は右往左往していた。

 レイアに対して怒声を浴びせる者、悲嘆にくれる者、中にはパニックを起こしている者もいる。

 レイアへの非難が轟く中、エナ、ミリィ、クーニャは溜息を漏らす。


「はぁ…やってくれたわね…」


「そ、総括!マニュアルが行き渡っていなかったというトラブルもありますので…」


「それでもゴミ箱にポイはやりすぎな気もするけどにゃあ…」


「うぅ…」


 怒り半分、呆れ半分といった感じでこめかみを抑えるエナ。

 そんな中、レイアのフォローをする心優しいミリィとは対照的に、率直な意見を述べるクーニャ。

 知らなかったとはいえ、とんでもないことをやらかしてしまったレイアは、その場に正座して縮こまる。


「こうしていても仕方ありません…皆さんお静かに!!レイア、貴女への処罰は追って伝えます。今はギルド、いえ、世界の存続に関わる緊急事態です!!私はこれからギルド長に許可をもらった後に緊急クエストを発行します!!皆さん疲れている中申し訳ないですが…どうか皆さんの力を貸して下さい!!」


 ほぼ最高の権力を有しているといっても過言ではないエナの懇願に、職員達は皆押し黙り落ち着きを取り戻す。



『『『『 了解!! 』』』』



 エナの立場上、本来このように(へりくだ)って頼み込む必要は無いのだが、この謙虚さがあるからこそ職員達は揃って頷き声を揃えてエナの要請に応える。


 その効果は抜群だった。


 職員達は疲れた身体を鼓舞するかのように各々声を出しやる気を見せている。

 その様子を見ると、エナはギルド長室に向かい事情を説明するとギルド長からは二つ返事で了承を得ることが出来たため、すぐさま申請課(リクエスト)に移動しクエストを発行する。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




                 最重要緊急クエスト



任務難易度:SSS

依頼主  :冒険者ギルド本部、ギルド長秘書エナ・マクガルフィー

依頼内容 :重要人物の捜索および保護、ギルド本部への護送

対象人物 :ミネルバ・リッジコースト(15)女性

      背中までかかる銀髪、可憐な容姿

報酬   :10億リラおよびクラス特進

備考

冒険者ギルド、ひいては世界の存亡がかかった緊急事態です。

このクエストは何をおいても最優先で対応してください。

対象人物は女神アテナ様、女神アルテミス様に所縁のある人物であるため、細心の注意をもって保護をお願いいたします。

尚、不正防止のための審査を行います。

不正が発覚した際は、冒険者資格の永久剥奪、場合によっては死刑の可能性もあるので、くれぐれも慎重な行動をお願いいたします。                                 


                                              


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 発行されたクエストの内容はとんでもない内容であった。

 難易度の目安として、竜の討伐や国同士の戦争の終結。

 戦争の状況や竜の種類等で違いはあるがこれらの難易度が“S”である。

 それが今回のクエストの場合、ただの人探しクエストが、そういった難易度を優に超える難易度の“SSS”

 これが意味するものはつまり、失敗した場合に待っているのはセブンスガルドの消滅すらもありえるということだ。

 文献や童話の中で語り継がれている4000年前のアテナによる国の一掃や、神々の怒りに触れた際の神罰による災害…

 たった一柱による神罰で容易く国が亡ぶのだ。

 ましてや備考に示してある通り、二柱の女神が関わっている。

 世界が亡ぶほどの神罰が起きてもおかしくはない…


「こ、これ…冗談ですよね…?」


 内容を確認した申請課の職員が半信半疑でエナに問いかけるが、当のエナからは全くそういった雰囲気は見受けられない。


「冗談でこのようなクエストを私が発行すると思っているのですか?事は一刻を争うのです…分かったなら今すぐ全世界に散らばる冒険者達に発信なさい」


「わ、分かりました!!」


 エナからの焦りすら感じられる真剣な返答に、申請課の通信士が息を呑みクエストを一斉送信する。

 間を置くことなく、セブンスガルドに存在する全ての冒険者達のデバイスが鳴り響く…


「アルテミス様達にも事態は知られてしまいますが仕方ありません…どうか…間に合って…」


 世界の存亡がかかった前代未聞の人探し。

 この出来事は後に『ミネルバ大捜査線』、『セブンスガルド事変』と呼ばれることになるほどの大事件となる。

 しかし、この時のミネルバはここまでの大事件になっているとは知る由もなかった…

今回で第1章3節は終了となります。

次回からは新たに4節目となりますのでお楽しみに!!

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