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R.P.G~Ragnarok.Proxy.Genesis~  作者: 銀狐@にゃ〜さん
第1章3節 冒険者ギルド
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紹介状と推薦状



 東口の門を抜けると、衛兵駐屯所の入り口に口髭を蓄えた男が立っていた。

 その男がヘンリーを見ると心配そうに話しかけてきた。


「おぉヘンリー!!無事か!?ルイスはどうしたんだ?」


「ゴードン隊長、ご心配お掛けしました。見ての通り無事です。ルイスは気絶しているだけで怪我などはありません」


「そうか…狼煙が上げられてすぐに他の連中を向かわせたんだが、入れ違いになったようだな。何はともあれ、お前達が無事でよかったぞ」


 隊長と呼ばれた男が駐屯所の中に向けて声を掛けると、数人の衛兵が出てきてルイスを中に連れて行く。

 中にあるであろう休憩所かそれに準じたところで介抱されるのだろう。


「ではゴードン隊長、先ほどの狼煙の件について報告をさせていただきたいのですが…」


 チラリと街壁にもたれ掛けているミネルバに視線を向けると、それに気づいたミネルバがどうぞといったジェスチャーで答える。

 ゴードンもミネルバに視線を向けるが、ヘンリーから報告を受けるために会話に戻る。


 しばらくすると、報告が終わったようで、ミネルバの(もと)へ二人が近付き声を掛けた。


「この子がお前達を助けてくれたお嬢さんか」


「はいそうです。ミネルバ、こちらはこの東口駐屯所の隊長、ゴードン・キャスター隊長だ」


 ヘンリーが二人の間に入り互いの紹介をする。

 ミネルバはゴードンに会釈し、改めて自己紹介することにした。


「ミネルバ・リッジコーストです。初めまして」


「ゴードン・キャスターだ。今回はウチの隊員が世話になったようだな。改めて礼を言わせてもらおう。ありがとう」


 ゴードンに握手を求めてきたのでミネルバもそれに習い握手を交わす。

 すると、東口出口から数名の衛兵達が入ってきて、ヘンリーを視界に収めると一気に騒がしくなる。


「ヘンリー!?生きていたのか!!」


「あれ?ルイスは?…まさか…!?」


「あれだけのゴブリンに囲まれて無事だったとは…」


「心配したんだぞ!!」


 戻ってきた衛兵達は、ヘンリーの無事を確認すると嬉しそうにヘンリーに近付き、ある者は肩を組み、ある者は背中をバシバシ叩き、ある者は腹を軽く殴るようにドスドス殴り、手荒い歓迎でヘンリーの無事を喜ぶ。


「おいおいお前達、ヘンリーの無事を祝う前にすることがあるだろう?」


「はっ!?申し訳ありません隊長!!」


 見兼ねたゴードンが衛兵たちに呆れながら話し掛けると、衛兵達はゴードンに調査結果を伝える。


「ふむ…ヘンリーからの報告と一致するな。ゴブリンの死体の処理は問題無いか?」


「はっ!!全て焼却して片付けておきました!!」


「うむ、よろしい。皆ご苦労だったな。戻っていいぞ」


 報告を終えた衛兵達がゴードンの指示に従い、それぞれの持ち場に戻っていく。

 ヘンリーは皆に慕われているようで、すれ違い様に声を掛けられていた。

 衛兵達が持ち場に戻る際にミネルバをチラチラ見ていたが、当のミネルバは気にした様子も無く、セントマルクスの街並を眺めていた。


 そうこうしている内に、ゴードンとヘンリーがミネルバに話しかけてきた。


「待たせてしまって申し訳ないね」


「いえいえ、お気になさらずに」


 ゴードンが待たせたことに謝罪するが、ミネルバ自身急いでいるわけでもなかったため、全く気にしていなかった。


「ヘンリーからの報告だとセントマルクスは初めてだそうだね?」


「そうですね。あぁそうだ。着いたらこれを見せろって言われてたんだった」


 ミネルバが腰に下げていたポーチ―簡易のインベントリ―から二通の手紙を取り出す。

 それはグラン達から渡された紹介状と推薦状だった。

 グラン達に言われた通り、二通をゴードンに手渡して見せる。


「うん?それは何かね?」


 受け取ったゴードンは、二通に押印されている章印と宛名、差出人の名前を見ると、これでもかというほど目を見開き驚きを(あらわ)にする。


「こ、これは…『自由意志(フリーダムウィル)』の…!?」


「隊長?どうかされましたか?」


 ゴードンのあまりの驚き振りにヘンリーが気になり問い掛けるも、ゴードンはヘンリーをそっちのけでミネルバに詰め寄った。


「これをどこで手に入れたのかね!?」


 目を血走らせながら詰め寄るゴードンに少し引きながらミネルバは答える。


「大平原の途中でグランとフィリスさんに会うことがありまして、そこで渡されたんですけど…ど、どうかしたんですか?」


「ちょ、ちょっと隊長、落ち着いてください!!」


 ヘンリーがゴードンを羽交い絞めにしてミネルバとの距離を取る。


「これが落ち着いていられるか!?これはクラン『自由意志』の団員二名による紹介状と推薦状なんだぞ!?」


「え、えぇぇぇぇぇぇ!?」


 ゴードンが見てみろと言ってヘンリーに二通を手渡す。

 ヘンリーが試しに開けてみようと試みるが、結界のようなもので弾かれて開けることが出来ない。


「どうやら本物のようだな…差出人が守護術式を掛けたんだろう。開けられるのは宛名に書かれている人物だけということだな」


「す、すごい…本物の『自由意志』の紹介状と推薦状…初めて見ましたよ…」


 とんでもないものを見ているような二人であったが、異世界の人間であるミネルバはただの紹介状と推薦状だと思っていたものである。

 そのために、なぜこれだけ自分とヘンリー達にこれだけの温度の差があるのかが分からなかった。


 そしてミネルバは言ってはならないことを口に出してしまう。

 後に大きな後悔を生むとは微塵も知らずに…


「あの…そんなのただの手紙ですよね?そんなに慌てるような物でもないと思うんですけど…」


「「!?」」


 二人の目が信じられないといった感じでミネルバを見る。


「いいかね!?このクラン『自由意志』というのは、世界的に有名なクランであり、所属するというだけでも非常に大変なクランなのだよ!!」


「その中でも差出人の二人は特に有名な二人で、『討滅師(ルインアサルター)』グラン・アルフリード、『(クロノ)魔女(ウィッチ)』フィリス・アイオーン、その他にも『自由意志』には有名な団員がいる。いや、有名じゃない団員はいないと言った方が正しいかな…とにかく凄いクランなんだよ」


 ゴードンとヘンリーによる口撃が繰り広げられる。


(うぅ…グランの奴…何がそれなりに名の通ったクランだよ…滅茶苦茶有名なんじゃないか!!)


 グランを恨めしく思うミネルバだったが、二人の『自由意志』の功績や、あまたある武勇伝が全く途切れない。

 ミネルバが解放されたのは二人の話をたっぷり小一時間ほど聞かされた後…

 その時のミネルバはすでに半泣きで、

「ご、ごめんなさい…」と懇願するように謝るほどに疲弊していたのだった…

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